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463頁

レナーテさんの事を待って数分後、校門にレナーテさんがやって来た。

急いで来てくれたのか、息が上がっている。

俺の事を探している様子で、辺りをキョロキョロと見ている。

そんな彼女に、


「こっちですよ」


俺は物陰から出て彼女に声を掛けると、急いで俺の元へと駆け寄ってくれる。


「どうでしたか、アーデさん達は大丈夫そうでしたか?」


レナーテさんにそう聞くと、


「はい、先生の教え子だという事を説明し、先生の意思と同じモノを持っていると説明させていただきました。最初は少し緊張している様子でしたが、話は聞いて貰えました。体調なども、皆さん大丈夫という事でした」


彼女は俺の問いに対してそう報告をしてくる。

それを聞いた俺は、


「では、彼女達が出来る限り早く安心出来る様に、頑張りましょうか。まずは、とりあえずいつも通りカルラに頼んでリーゼロッテ先生がいるであろうシュタール公国に行きます、場所は分からないので案内をお願いしますね」


レナーテさんにそう言って歩き出すと、


「はいッ!」


彼女はやる気が満ちた声色でそう返事をして俺の後を追いかけてくる。

町の中であれば、やはりあまり生徒達もいないしいたとしてもこちらを気にしている様子は見せないな。

俺はそう思いながら歩き続け、レベルデン王国をレナーテさんと共に出発して近くの丘までやって来ると、


召喚(サモン)、カルラ」


俺はカルラを呼び出す。

しかし、


「………あれ?何か立て込んでいるのか?」


黒い靄からカルラはなかなか出て来ず、今は忙しいのかと考える。

すると、


「ヴァルダ様~、カルラなら今は乗せたくないって~」


靄から出て来たのは、呼び出したカルラでは無く風の精霊、シルだった。

そして、


「せ、先生ッッ!?」

「あ、あぁ~…」


靄から出てきたシルの言葉を耳にした瞬間、俺は今までに感じた事が無い心のダメージに膝から崩れ落ちて地面の倒れる。

………もう、何もしたく無い。

草の匂いがするぅ…。

俺が地面に倒れながら現実逃避をしていると、


「あ、あの…。貴女は…」

「私はシルって言うの~。風の精霊シルフだよ~」

「シルフッ!?上位精霊のッ!?」

「そうそう~。それで、貴女はどちら様なの~?」

「あ、申し遅れました。私はレナーテ・ミュルディルと申します。私は先生…ヴァルダ先生の元で生徒をしていまして、今も先生には色々と協力して貰っています」


シルとレナーテさんが自己紹介をし合っている。

カルラに嫌われてしまった、彼女に対しては何かと頼りにしていた所がある。

お願いする事も多々あった、それが嫌になってしまったのかもしれない…。

塔に戻る前に、カルラに謝罪の品を見繕って、心からの反省とこれから改善する点をまとめておかないと…。

まずは肉だ、全財産を使ってでも良い肉を買って、それからカルラの好きな爪を砥ぐ事が出来る材料、それと他には………。


「お~い、ヴァルダ様ぁ~?」

「何だいシル?今俺はカルラにどの様に謝罪をしたら良いのか考えているんだ…」

「いやぁ~、別にヴァルダ様が謝る必要は無いですよ~。カルラは単純に拗ねてるだけなんですよ~」


色々と考え込んでいる俺の言葉に、シルがそんな事を言ってくる。

彼女の言葉の意味が分からない俺は、顔を地面から上げて空中に浮かんでいるシルの事を見ると、


「下からヴァルダ様に見上げられているのは慣れてるけど、流石にそれは恥ずかしいな~」


あまりにも下から覗き込み過ぎていた様子で、彼女の下着が見えてしまいそうになった。

シルの照れが混ざった苦笑の笑みに、新鮮なシルの様子が見れて良かったと思う反面、先程まで反省していた頭がもう別の事を考えている事に更なる罪悪感に苛まれる。

そうして慌ててもう一度地面に顔を衝突させると、


「先生…」

「大丈夫ですよヴァルダ様~」


レナーテさんの少し引いている声と、気にしていない様子ではある声色のシルの声が聞こえてくる。

流石に今度は顔を上げて下から覗き込む様な事をしない様に、俺は視線を地面に固定しながら体を動かして起き上がる。

精神的なダメージでフラフラとする脚に力を入れながら、俺は体を安定させると、


「すまないなシル、決してわざとでは無いんだ。信じてくれ」


シルに対して謝罪をする。

俺の謝罪を聞いたシルは、


「あ、あぁ~…。こんなヴァルダ様初めて見た~、これは相当ダメージを受けてるなぁ~」


笑いながらそう言う。

当たり前だ、カルラに、塔の皆に嫌われたらもう生きていける自信がない。

俺がそう思っていると、


「怒ってないですよヴァルダ様~。カルラには後で私から言っておきますから、今はカルラを呼び出した理由があるんですよね~?代わりに私が頑張るので、指示をお願いしますよ~」


シルが俺にそう言ってくる。

………カルラの事は気になるが、それでも今はリーゼロッテ先生の元へと急がなくてはいけないよな。

俺はそう思うと、


「シル、俺とレナーテさんと共に空を飛ぶ事は出来るか?」


シルに対してそう質問をする。

それを聞いたシルは、少し考える様な素振りを見せると、


「飛ぶ事自体は出来ますよ~。でも、カルラの様に安定している訳では無いので、少し危ないかもしれないですけどね~」


俺の問いにそう答えてくれる。

彼女の言葉を聞き、


「レナーテさん、それでも大丈夫ですか?」


俺よりもまずはレナーテさんがそれでも大丈夫なのかを聞く。


「は、はい。私は大丈夫…だと思います」


俺の問いに対して、少しだけ自身は無さそうにそう答えるレナーテさん。

普段ならば、もっと安全策などを考えたりするのだが、今は彼女の言葉を信じて急ぐしかないだろう。

わざわざカルラの代わりに、シルが出て来てくれた事に報いる為にも。

俺はそう思うと、


「ではシル、お願いしても良いか?」


シルにそう言う。

その言葉に、


「お任せを~」


シルは笑顔で返事をすると、先にシルがいつもの様にフワッと宙に浮かび上がって少しだけ高い位置まで上がっていく。

すると、


「きゃっ!」

「おぉ…」


レナーテさんは突然の足が地面から離れた事に可愛らしい悲鳴を出して、俺は慣れない感覚に変な声を出す。

どんどん上空へと、浮遊していく感覚にレナーテさんは怖がっている表情をしている。

しかしそんなレナーテさんの事は気にしていない様子のシルが、


「では行きますよ~」


そう言った瞬間、俺とレナーテさんは生身で空中を飛ぶ事になった…。


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