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459頁

物置を確認した俺は、次の目的地を目指して敷地内を歩き始める。

物置が一番人に気づかれないというか、レナーテさん達に見つからない場所だと思って目星をつけていたんだがな…。

俺はそう思いながら今度は校舎の建物の隙間、体を横にしたまま移動しないと通れない隙間の奥には、校舎の建造上で出来てしまった少し広い空き地が出来ている。

しかし、そこにも亜人族の人達はいない。


「…どこに連れて行かれたんだ…」


俺は頭を過ぎる最悪の事態を意識しない様に、頭を振りつつその場を後にして次の目的地へと移動を開始する。

次は……ある意味で一番亜人族がいて欲しくない場所。

おそらく、そこに亜人族がいたら俺は戦争が起きる前に、この魔法学院の職員と生徒を再起不能にしてしまう自身がある。

俺はそう思いながら、次の目的地…G組の元教室があった旧校舎へと向かった。

旧校舎へと向かう道中に、土魔法で作られた土の杭が何本も地面から生えて道を塞いでいる姿を見て、どうやら過程は色々とあったが、結局取り壊しは決定した様だ。

しかし、よくよく考えてみると結構雑に作ってあるなこの柵みたいなの。

俺はそう思いながら、普通に通れる杭の間を通り抜けて奥へと進む。

こう思うと、少し前までは普通にここを通っていたんだよな。

その時はまだ、こんなに忙しくなるとは思っていなかったからな…。

今や、あっちにもこっちにも向かわなければいけないし、そこでどれだけ自分が亜人族の皆に力を貸す事が出来るか試行錯誤しなければいけない程、忙しくなっている。

…戦争が終わり、亜人族の皆が人権を得る事が出来れば、俺の役目はそこで終わりだろう。

幸せな生活を、安心して寝る事が出来る生活を亜人族の皆に。

俺はそう思いながら、旧校舎へと向かった。

旧校舎が見えてくるとそこには、


「…やっぱりか」


レナーテさん達がいなくなった後、どういう扱いで保存されていたのかは分からないが、明らかに痛んできているな。

今までレナーテさん達やリーゼロッテ先生が補強や修理をしていたから何とかなっていたが、それが無くなった所為でボロボロになってきているのが目に見えて分かる。

そして、そんな壁の穴から何かが建物内で動いている姿も確認できた。

俺はアンジェの指輪を首から外し、地面を軽く蹴って走り出し、


「だっ!………大丈夫ですか?」


勢いよく旧校舎へと入った俺が声を掛けようとすると、俺の勢いに怯えた表情を向けてきた亜人族の皆さんを見て、一度言葉を飲み込んで落ち着かせると、小さな声で改めて質問をする。

しかし突然現れた俺に、そう簡単に信用する事は出来ないのは分かり切っている。

俺の事を見る怯えた表情を見てそう思っていると、


「…あっ」


俺の事を見ていた亜人族の中から1人の女性が、俺の事を見て微かな声を出す。

それと同時に、隣にいる狐の獣人の女性に確認する様に何度も俺に指を差してくる。

彼女の動きに最初は不思議そうな視線を俺に送って来ていた狐の獣人が、口を開けて俺のハッとした表情を俺に向けてくると、嬉しそうな表情にどんどん変化をしてくる。


「お久しぶりです、アーデさん、ラーラさん」


俺がそう声を掛けると、


「お、お久しぶりです」

「っ!っ!」


アーデさんは困惑気味に、ラーラさんは何度も頷いて返事をしてくれる。

そんな彼女達の様子を見て、とりあえず酷い事はされていない事を察し、


「良かった。…皆さんも、何か酷い事はされていませんか?体調が悪い人などがいたら、手を上げて下さい」


俺は出来る限り優しく声を掛けながら彼女達から少し離れた所で膝を折ってしゃがみ、アイテム袋から回復薬などを取り出そうとする。

すると、


「あ、えっと…ヴァ…ヴァ…。………すみません」


アーデさんが俺の事を呼ぼうとして、名前を思い出さなくて謝ってくる。

そんな彼女に俺は笑いかけ、


「挨拶をしたのも結構前ですし、仕方ないですよ。謝る必要なんてありません。皆さんも、出来れば覚えて欲しいです。ヴァルダ・ビステルと申します。皆さんを助けたいと思ってここに来たんですが…」


改めて自己紹介をしつつ、何故ここに来たのかを説明する。

それを聞いた女性達は、僅かにだが安心した様子を見せる。

おそらく、アーデさんとラーラさんが俺に対して友好的な反応をしてくれているのが大きいのだろう。


「アーデさん達は、もし自由になれるのだとしたらどうしたいですか?」


俺は更に質問を続けると、アーデさんは少し不安そうな表情をした後、周りの女性達に視線を送る。


「俺は皆さんの意見を尊重したい。とりあえずアーデさん、皆さんが話をする事が出来る様にするにはどうすれば良いのか教えて貰う事は出来ますか?」


俺の考えを伝えた後、俺はアーデさんに更にそう質問を続ける。

俺の問いを聞いたアーデさんは、


「…学院長が、私達のご主人様として命令をしています。しかし今学院長は、何かと忙しいらしく学院にはいらっしゃいません…。どこにいるのかも、私達には教える必要が無いとの事で…」


質問に対する答えを、申し訳無さそうに伝えてくる。

彼女の答えを聞き、今学院長を探している時間はあまり無い事を察し、どうしたものかと考える。

…学院長の近い立場や、教師達には教えている可能性がある。

俺は今、部外者の立場だから教えて貰えないだろう。

リーゼロッテ先生の立場が今どうなっているかは分からないが、彼女にもそういう事を教えている可能性は低い様な気がする。

となると、どう動けば今最善になるんだ?

レナーテさん達を待たせている状態もあまり長い間待たせる訳にはいかない、しかし彼女達をここまでボロボロになった旧校舎に放置するのも気が引ける。

それに、俺が目を離した隙に彼女達に何かあったら後悔してもしきれない。

俺はそう考えに考え、


「ブルクハルトさんに、奴隷契約の強制解除に関する実験を協力して検証しておくべきだったな…」


後悔を口にしつつ、アーデさん達の事を見ると、


「すみません。少しの間だけ、待っていて下さい。すぐに信頼できる人を連れて来ますから」


俺はある決断をし、一度ここから離れる事を彼女達に伝えた。


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