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いったいどうやってあの騎士団長から鱗をゲットしたのだろうか?
俺はそう思いながら、赤く輝いて見える騎士団長の鱗を手に取ると、まるで手馴れているかのように自然と装備の裏に忍ばせた…。
これって泥棒になるのかな?
俺はそう思いながらも、特にあとは用事がある物は無い事を確認して外に出る為に再度クラスチェンジを発動して召喚士になると、
「召喚、クラリス」
本の中の世界を開いて、フェアリーであるクラリスを召喚する。
妖精族であるクラリスは身長が小さく、17センチしかない。
それに、彼女が飛ぶ際に羽からキラキラと光る粉が出てくるのだが、これはフェアリーダストと呼ばれるアイテムなのだが、これが「UFO」では幻覚…ネットでは激しく酔っている状態に見えるらしい。
彼女がいれば、最悪の場合相手を幻覚状態にする事が出来る。
俺がそう思っていると、
「あれヴァルダ様?ここはいったいどこですか?」
クラリスが俺の周りをグルグルと回りながらそう聞いてくる。
「ここは闇オークション会場だ。少し厄介事に巻き込まれてな。クラリス、すまないがいざという時はそのフェアリーダストで相手を状態異常にしてくれ」
俺がそう頼むと、
「良いですよ~!それにしてもここ、埃っぽくて汚いですね~」
クラリスはそう言って飛び回る。
俺はそれを横目に、本の中の世界から装備アイテム、王女アンジェの指輪を取り出す。
このアイテムって何のイベントで手に入れたアイテムだっけ?
確か素材を集めて作った装備だったから、課金アイテムでは無い様な気がする…。
しかも、素材数も1個とか2個のお手軽で、何個も作った記憶がある。
俺はそんな今考えなくても良い様な事を気にしつつ、それを首に付ける装飾として装備をする。
確かこれで、姿が消せるんじゃなかったっけ?
俺がそう思っていると、
「あれ~?ヴァルダ様?どこですか~?」
クラリスがキョロキョロと辺りを見回して俺の事を探している。
分類的にはパーティーの分類になると思っていたが、それでも見えないものか。
俺はそう思いつつ、身動きをしないで頭だけを動かして俺を探しているクラリスに触れると、
「あれ?いつの間に私の近くにいたんですかヴァルダ様?」
クラリスがぱぁっと嬉しそうな表情になって俺の肩に来てくれる。
何これ凄く癒される、妖精ぃ最高ッ!
…そんな欲望に捕らわれている場合じゃなかった。
さぁ、ここから逃げますかね。
俺はそう思い、門番の人と一緒に下って来た階段を上り始める。
階段に人の気配はしないし、結構簡単に逃げ出す事が出来るかもな。
俺がそう思って階段を上りきって箱が並んでいる部屋に戻ってくると、扉の向こう側が何やら騒がしい。
…逃げ出した事がバレた訳では無いだろうし、オークション側に何かあったという事か?
俺がそう思って扉に耳を当てると、何やら大きな声で騒いでいる人とそれに対応している人の声が聞こえる。
…ふむ、今俺は透明になっているはずだから、このまま逃げ出してしまおう。
俺はそう思い、静かに自分の身が通れるだけ扉を開けると、
「ヒッ…」
偶然近くを歩いていた使用人が、短い悲鳴を上げてしまった。
まさかバレたか?
俺がそう思って焦っていると、使用人の女性は少し怯えた様子で扉に近づいてくる。
俺の姿は見えてはいないようだし、ここから少しズレたら誤魔化せるな。
そう思って扉とスッと通って廊下に移動する。
使用人の女性が怯えた感じで恐る恐る扉に近づいて、ゆっくりと扉を閉める。
さて、完全に見えてはいないから安心して良いな。
俺はそう思い足音を立てずにゆっくりと歩く。
もう少しでこの建物の玄関に辿り着くと思ったその時、
「良いから魔王の娘を出せぇ!」
怒っている様な言葉使いだが、そこまで迫力が無い声が聞こえてくる。
俺がそう思って玄関の広い空間に辿り着くと、そこには何人かの礼服を着ている男性達と、いかにも貴族の様なキラキラした装飾品を付けている男性が言い争いの様な事をしている。
貴族の男の後ろには武装をした護衛もいる。
俺がその光景を見ていると、
「ですからジルヴェスター公爵様。今回の目玉商品はいくら公爵様でもお売りする訳にはいかないのですよ。オークションに参加して下さい。」
礼服を着た男性の1人が、遜った態度で貴族の男にそう言う。
俺はその男性の言葉を聞いて、ブルクハルトさんとアードラー伯爵が警戒していた人がこの成金みたいな男だと察する。
それにしても、随分とヤバいなこの人。
俺はそう思いながら、ジルヴェスター公爵を見る。
良い物を食べ過ぎているのか、でっぶりとしたお腹に豪華な服がパツパツになっているし、髪も油を塗っているのかと言いたくなる程テカテカしている。
大きく手を振って怒りを表している指にも、趣味が悪い指輪が全部の指に付けられている…。
人は見た目じゃないと思うが、これはいくら何でもアウトだろう。
俺がそう思いながらも、下手にここで止まっているのも危険だと判断する。
俺は、ここにいる皆の意識がジルヴェスター公爵とその相手をしている礼服の男性に向いている間に逃げ出そうとすると、
「ならここで買ったあの奴隷をもう一度売ってやる!それと交換だ!おい!あれを持ってこい!」
俺が出ようとした扉に、護衛の人が近づいて扉を開けようとする。
俺は慌てて横に移動して護衛の人とぶつからない様にすると、護衛の人が扉を開けて飛び出す。
俺もその護衛の人の後に扉を通ってオークション会場を抜け出すと、これまた目立ちそうな馬車が建物の前に止まっており、そこに護衛の人が走って向かっていく。
俺もその後を歩いていると、護衛の人が何かを引きずり出すように無理やり力づく馬車から降ろした。
それを見た瞬間、アードラー伯爵とブルクハルトさんとの会話を思い出した。
『魔族や亜人をただの物としか思っていない人だ。彼の元に送られた魔族や亜人はまともな姿で世界には出てこられない。両手足を斬り落として抵抗出来ない状態にした後に婦館に売り飛ばしたり、拷問道具の実験に消耗品のように殺していくと聞いた事はある』
その言葉通り、馬車から無理やり降ろされた女の子は、着ている布切れから出ている露出した肌には火傷の痕が、左目は包帯が巻かれ、右腕も手首から先が失われていた。
「…召喚、イーフル」
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