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「入りなさい。入るのが無理な者は、話だけでも聞いていなさい」


レナーテさんのお父さんが静かにそう言うと、失礼しますの言葉と共にメイドさん達が次々と客間に入ってくる。

結構奥にもいたのだろう、部屋に入ってくるメイドさん達を見ながらそう思っている間に、客間に結構な人数が入り、流石にこれ以上はキツくなって部屋の前に声が聞こえる様にメイドさん達が集まっている。

それらを確認したレナーテさんのお父さんは、メイドさん達にも聞こえる様に先程までしていた帝都の、皇帝陛下の話をメイドさん達に聞こえる様に、先程と同じ説明をハッキリと聞こえる様に説明をする。

そうして全ての事情を説明したレナーテさんのお父さんが一度言葉を切ると、


「旦那様、レナリア様、レナーテお嬢様、今までお世話になりました」


先程、この屋敷にいるメイドさん達を集める為に呼び出されたメイドさんがお礼の言葉を口にして頭を垂れた。

そんなメイドさんに続いて、周りに集まっていたメイドさん達も彼女と同じ様に頭を下げ始める。

その際にさっきのメイドさんとは違い、誰も何も言わないで頭を次々と下げていく光景は、統率力の高さと諦め、決断力の速さに驚いてしまう。

周りのメイドさん達の様子に、レナーテさんのお父さんの表情は顰めていた顔を更に悔しそうに歪めて、自分達に下げ続けているメイドさんを見たくないのか、顔を伏せて視線を下げてしまっている。

そんな自身の旦那の様子に、レナリアさんも彼がどの様な決断を下したのか察した様子で、酷く悲しそうな、しかしそんな表情を皆に悟られない様に一瞬で微笑みを浮かべる。

そして、


「私は、かぞ「お待ちくださいお父様」………どうしたんだ、レナーテ?」


レナーテさんのお父さんが決断を口にしようとした瞬間、その言葉を思いっきり遮るレナーテさん。

そんな彼女の様子に、レナーテさんのお父さんもやや歪めていた表情を戻しつつ、何故言葉を遮ったのかを聞く。

お父さんの言葉にレナーテさんは、


「何故、諦める様な事を言うのですか?私達の亜人族の皆さんに対する想いは、皇帝陛下が、国の命令でも揺るぐ事は無いと自負していました。それなのに、お父様もお母様も、皆ももうどうする事も出来ないと、諦めてしまってどうするのですかッ!」


最初の方は冷静に話をしていたレナーテさんだったが、皆の気の落ち様に憤慨したのか声を荒げる。


「今まで私達は帝都に目を瞑って貰っていたから、慈善事業とでも思って亜人族の皆を雇ったり保護を協力してくれる方達を探したりしていたのでは無いでしょう?お父様はそう思っているとしても、私は亜人族など関係無く親しくなれる、仲を育む事が出来る対等な存在として、困っている者達を助けたいと思って今まで生きてきました。その考えは、私の中で変わる事などありません。例え皇帝陛下が、帝都が、人族が敵となり私が貴族の位を失墜させられるとしても、酷い目に合う事になる可能性が出てきても変わる事は無いと断言します。………お父様、もう一度お願いします。お父様は私の覚悟を聞き、どの様な決断をするのでしょうか?」


更に続けて言葉にしたレナーテさんの亜人族に対する気持ちと覚悟、そして最後に優しく発した問い。

それを聞いたレナーテさんのお父さんは、


「……………」


唇を噛み締めて、視線を彷徨わせている。

相当、迷っている様だ。

おそらく、レナーテさんのお父さんは貴族の失墜を恐れているのでは無い、大切な家族であるレナリアさんとレナーテさんが、自分が折れなかった所為で危うい立場に追い詰めてしまう事を恐れているのだろう。


「ぐッ…ぬ゛ン゛ッ…」


口を開こうとするも、微かに開かれた唇の端から力が込められた息が漏れている。


「お父様、私の事を信じて下さいませんか?私が、お父様もお母様も、メイドの皆の事も、協力してくれた人達も、私達と同じ様に亜人族の人権を尊重する人達を護る。今ここで、私はそれを誓わせて下さい」


そんなお父さんの苦悩に、それを解消させてあげたいレナーテさんが最後の後押しをする。

大きな事を言っている、そんな簡単に貴族であっても、未だに学生であるレナーテさんにそれを任せられる信頼は無いだろう。

しかし、彼女の事を見ればそれが大言である様には感じさせない気迫を見せている。

自身が溢れている様に、父を真っ直ぐに見つめて口元には少しだけ余裕の笑みで口角が上がっている。

そんな彼女の事を見たレナーテさんのお父さんは、


「…分かった、すまないがレナリア、レナーテさん。これから危険な事、怖い思いをさせてしまう事になるだろう。それでも私の元にいてくれると有り難い」


隣に座って彼の肩に支える様に添えていたレナリアさんの手を優しく掴み、そして周りにいるメイドさん達の事を見る。

その表情は、不安気であるのだが憑き物が落ちた様に少しだけだが晴れやかでもある複雑な表情をしている。

そんな彼の表情に、メイドさん達は反対に不安そうな表情を強めた。

彼の言葉を聞いたレナーテさんは満足そうに頷くと、


「では先生、ご協力をお願いしますね?」


満足そうな笑みを俺に向けてそう言ってきた。


「…ん?」

「…ん?ではありませんよ先生。先生は亜人族の事を保護する活動をしていますよね?だから、力を貸してください。お願いします」


俺にそう言って頭を下げてくるレナーテさん。

彼女のその言葉を聞いて、レナーテさんのお父さんとレナリアさん、そして周りで頭を下げていたメイドさん達が頭を上げて俺の事を見てくる。

俺はそんな周りの事は気にしないで、今はレナーテさんの言葉を聞いて思った事を、


「レナーテさんがあそこまで自信満々にお父さんに言い切った理由が分かりましたよ…。まぁ、亜人族の皆さんの保護に関しては俺の方でも色々と情報収集を行いつつ行動する予定でしたので、協力する事は構いませんよ」


伝えると、


「ありがとうございます先生っ!」


レナーテさんは安心した様子で感謝の言葉を言ってくる。

そんな彼女に俺は、


「ですので、俺にも協力して下さい。レナーテ・ミュルディルさん」


自分でも分かるくらい、悪い笑みを彼女に向けているのを。

俺の笑みを見たレナーテさんが、頬を引き攣らせている姿が証拠である。


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