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…しかし、もし俺が考えている事が当たっているとしたら、周辺諸国から集められる奴隷達はどこに集められるのだろうか?

どれ程の人数が集まるのかは分からないが、かなりの奴隷が集められるのは察する事が出来る。

それを考えると、あまり狭い場所などに留める事は出来ないだろう。

帝都は人が多く、店などの建物も集まっている場所が多い。

大人数が集める事が出来る場所など、限られているはずだ。

…レオノーラに後で聞くのもアリだな、彼女ならそういう広い場所の情報も知っているだろう。

俺がそう思っていると、


「先生、遅くなってしまって…。…屋敷の前で座り込む程待たせてしまった事は謝罪しますが、それでも出来れば座って欲しくは無かったのですが…」


後ろから声を掛けられて、俺は思考の海から意識を浮き上がらせて声の主であるレナーテさんがいる背後に視線を向けると、そこには申し訳無い気持ちと同時に家の前で座り込んでいる俺に対して、もう少しどうにか我慢は出来なかったのかと言いたそうにしている、何とも言い表せない表情をしている彼女の姿を見る。

そんな彼女に、


「あぁ、すみません。どうしても立っていたら考えられないと思って、深く考える為に座り込んでしまいました」


俺は謝罪を口にしながら立ち上がる。

汚れを払う様に服をパンパンと叩きながら、


「それで、どういう事になっている状況ですか?」


レナーテさんにそう質問をすると、彼女は少し険しい難しい表情をして、


「先生は、私も含めて学院で最底辺として扱われていた理由を覚えていますか?」


俺に屋敷の敷地内に入る様に手招きをしながらそんな質問をしてきた。

レナーテさんの質問を聞いた俺は、当時の事を思い出して、


「覚えていますよ、皆さんは亜人族を虐げない稀有な人族ですからね。それも貴族であるというのに…。それ故に、俺は貴女達に協力をしたんですから。まぁ、金銭的な事情もありましたけど…」


苦笑いを浮かべながらそう答える。

俺のそんな答えを聞いたレナーテさんは、


「その件に関係していると言いますか、詳しくは私もまだお父様から話を聞いていないのですが、ヴァルダ先生の耳にも入れておいた方が良いと思いまして」


俺の様子を窺う様な視線を向けてくる。

そんな様子に、


「…まぁ俺も亜人族に関する情報は喉から手が出る程欲しいので、ありがたい話ではありますしね。それに、貴族の方の話しという事は、一般人の平民には流れない話であると思いますし、信憑性も高いです」


俺はむしろ話を聞かせてくれと言う様に、俺の様子を窺う必要など無いと伝える様に言葉を発する。

俺の言葉に、レナーテさんがどこまで察してくれたのかは分からないが、それでも安心した様に少しだけホッとした表情になった。

そんな彼女の様子を眺めながら、彼女に連れられて屋敷の中へと入るとそこは………。


「お嬢様、そちらの男性は…」


ケモ耳。


「お嬢様が、男性の方と連れ添っています…」


尻尾。


「旦那様以外の男性に触れているお嬢様など、初めてかもしれません」


牙。


「…貴女達、お客様の前ですよ。もう少し静かにしなさい」


メイド服。


「あの御姿、純粋な人族なのでしょうか?」


角。

そこは、亜人族の天国であった。


「あら、レナーテが紹介したいという方は、魔族の方なの?」


…そうだった、レナーテさんが人族なんだから、決して亜人族だけがいる空間では無かったんだった。

俺が一瞬で天国から現実に引き戻されると、


「お母様、ヴァルダ先生は見た目は魔族に似ていますが自称人族です」


レナーテさんが、何気に失礼な紹介をしているのだが…。

自称とか付けないで欲しい、それだけでなんか俺の恥ずかしい過去が……。

俺がレナーテさんの言葉に、忘れたい過去を思い出していると、


「………」


滲み出る敵意、妻と娘の前で必死に冷静な表情を保ちつつも、無意識なのかは不明だが腰に差してある剣に腕が伸びそうなのを反対の手で押さえている男性がいらっしゃる…。

レナーテさんは母親似ではあるが、やや好戦的というかそう言った内面は父親譲りなのかもしれないな。

いや、単純に愛娘が突然異性を家に連れて来たらこうなってしまうのが父というモノかもしれない。

俺は少しだけ現実逃避の様な、今の状況には相応しくない事を考え、


「初めまして、私はヴァルダと申します。レナーテお嬢様の通われている魔法学院の臨時の教師として、僅かではありますが彼女の教師として教鞭を振るわせて頂いていました」


今はしっかりと挨拶をしなければいけないと考え直し、俺は出来るだけ畏まった言葉を選んで自己紹介と挨拶をする。

その際に、僅かに頭を垂れて礼をするのを忘れない。

すると、


「これはご丁寧に。私はレナーテの母で、レナリア・ミュルディルと申します。うちの娘がお世話になっております」

「いえ、今は教師をしていないのでお世話になっている事も無いですし、レナーテさんは自立をしていてしっかりとしているので、私に迷惑を掛けたりする事などもありませんでしたから」


レナーテさんの母が俺に挨拶を返してくれ、その言葉に俺は事実を伝えて安堵の笑みを浮かべる。

お母さんの方は、意外に俺を受け入れてくれている様だ。

しかし問題は…。

俺はそう思いながらレナーテさんの父親の事を見ると、


「ほらあなた。レナーテがお世話になっている先生よ!しっかりとしないと!」

「…レナーテの父だ」


まさかの自己紹介に俺は一瞬返答に困ってしまうが、名乗りたくは無いのだろうと察すると、


「よろしくお願いします」


俺は特に追及する事はせずに挨拶だけはしておく。

一応俺は彼にも聞こえる様に名乗った、あえて記憶から消し去ろうとしない限り、忘れられる事は無いだろう。

むしろ、レナーテさんが連れて来た男だという事で悪い意味で印象には残っているはずだ。

俺に名乗る事もしなかったお父さんに、レナーテさんとレナリアさんがため息を吐いて俺に謝罪をしてこようとするが、俺はそんな2人が声を発する前に、


「それで、俺がお邪魔をする事になった話というのを教えて貰っても構いませんか?それを聞かないと、俺もここから出る事も出来ないと思うので」


レナーテさん達家族にそう伝える。

レナーテさんは俺に話を聞いて貰いたい。

お父さんは、多分すぐに俺を屋敷から追い出したい。

お母さんの内心はどう思っているかは分からないが、2人の要望を叶えるために俺は話を進めようとする。

そんな俺の言葉を聞き、レナーテさんがレナリアさんとお父さんの様子を見て、屋敷の奥へと案内を開始してくれた。


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