表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
452/501

451頁

突然の再会に、今まで考えていた事を一旦止めて目の前にいる、俺の事を疑っている様な眼差しを送って来るレナーテさんに対して俺は、


「本当に久しぶりですね。…どうして帝都に?」


懐かしむ様に、そんな問いを彼女にする。

俺の質問を聞いた彼女は、


「…両親から屋敷へと帰って来いとの連絡を貰い、つい先程到着したばかりなのです。詳しい事は私にも分かりませんが、何か良からぬ事が起きようとしているのでないかと私は考えています。両親がわざわざ手紙を送って来る程の事態なので…」


俺の問いにしっかりと答えつつも、その表情は少しだけ不安そうではある。

…ここは一応元教師的な立場だった者としては、放置する訳にはいかないだろう。

俺はそう考えると、


「レナーテさんのご家庭の都合に口出しする事は出来ませんが、何かしらの問題があった場合は言って下さい。出来る限り協力をするつもりですので」


不安そうにしているレナーテさんの肩をポンポンと優しく叩く。

俺のそんな言葉に、


「ありがとうございます先生…。では、私に付いて来て下さい」


レナーテさんは俺にそう言うと、歩き始めてしまう…。

おおぅ、いきなりお願いをされるとは思っていなかったのだが…。

まぁ、彼女を安全に家に送り届けるのも大事だろう。

ここは治安があまり良くない、貴族の娘がそんな所を1人で歩かせるのは、流石に俺も気が引ける。

俺はそう思うと、先を歩くレナーテさんに追いつく為にやや早歩きで追いかける。

喧騒が激しい商店街などの通りから更に奥、一軒一軒の建物が大きくなり敷地の面積が広くなっていく光景で、俺は今自分がいる場所が貴族達の住んでいる貴族街だという事を察する。

こっちにはあまり来た事が無かったな。

俺はそう思いながら物珍しさにキョロキョロと辺りを見回していくと、


「先生、あまり不審な行動は避けて下さい。騎士に怪しまれてしまうと、私でも流石に止める事が出来ないと思いますので。…ただでさえ、私はあまり位が高い貴族という訳でも無いので…」


レナーテさんが俺にそう注意の言葉を掛けてくる。

俺は彼女の言葉を聞き、


「すまないな、珍しくてつい辺りを見回してしまっていた。気をつける」


俺は素直に謝罪をし、彼女の言う事を聞いてあまり辺りを見回さない様に努力をする。

やがて一軒の屋敷の前で立ち止まるレナーテさん。

どうやら、ここが彼女の実感なのだろう。

俺がそう思って彼女の家を眺めると、


「先生は少しお待ちください。流石に久しぶりの家族の再会に、異性の先生を連れて来たという事になってしまったら………両親が狂喜乱舞してしまいそうなので…」


レナーテさんが俺にそう言って、敷地内に入る為に扉を開けて庭へと入る。

鉄格子の様な扉故に、俺の事を見てくるレナーテさんの表情が良く見える。

気まずそうな、どこか諦めている様な苦笑いを浮かべている彼女の表情に、そんな表情をしながら言った言葉で彼女の両親があまり厳格な人達では無いのだろうかと考える。

しかし、俺はレナーテさんを家まで送りたいと思ったからここまで来たんだ。

わざわざお邪魔をするつもりは無い。

俺はそう思い、


「流石にお邪魔する事はしませんよ。緊急事態かもしれませんが、それでも家族水入らずに部外者である俺が入り込む事なんて出来ませんから。今日はレナーテさんに会えて良かったです。失礼します」


レナーテさんにそう言って踵を返そうとすると、


「緊急事態だった時の為に、私は先生にはここに留まって欲しいんですッ!エア・ロープ!」


レナーテさんが少し怒った声でそう言い、背後から突然魔法を放ってくる…。

聞いた事が無い魔法名に、俺は抵抗する事も無く捕まってしまう。

攻撃性は無く、ただ単純に風に巻き付かれる様な感覚で体を動かす事が出来なくなるくらいのモノだ。

…無理矢理動けば簡単に外す事は出来ると思うが、流石にそこまでして彼女から逃げるみたいな行動をするのはマズいだろうな…。

というか、俺は別に便利屋という訳では無いのだが…。

俺がそう思っていると、


「先生が私程度の魔法、簡単に破る事が出来るとは思います。大人しく、このまま待機してもらえませんか?でなければ、私はお父様に()()()をしなくてはいけません!」


レナーテさんが俺にそんな、やんわりとした脅迫をしてきた…。

生徒が教師を脅すとは…。

俺はそう思いながら、待機している間に考え事も出来るかと考え、


「分かりましたよ、待っていますから魔法は解いて下さい」


俺はレナーテさんに従って、待っている事を約束する。

俺のそんな言葉を聞いても、レナーテさんは少しだけ疑っている様な視線を送ってきた後、


「約束ですからね。出来る限りすぐに迎えに来ますから」


そう言って魔法を解いてくれる。

…そこまで信頼出来ないかね…。

レナーテさんの言葉にそう思っていると、彼女は急ぎ足で屋敷の中へと入っていく。

屋敷に入る直前、まるで本当に逃げないかと心配?した様子のレナーテさんが俺の姿をチラリと確認した姿を見て、俺はそこまで逃げ出しそうかなと思いつつ先程まで考えていた、帝都の奴隷を守る様な命令の利点などを考え始める。

奴隷を守る必要性があるのは、先程考えていた時はジーグの反乱に関係しているという事。

それだけでは、どう考えても憶測でしかない。

もしも俺が考えている事を帝都が考えているのであれば、帝都は俺の、そしてジーグの亜人族全ての怒りを買う事になるだろう。

しかし、その作戦は俺達の動きを抑えるとするのなら、とても効果があるとは思う。

まだ確証は出来ない、しかし騎士や冒険者達に支給するには明らかに粗悪でしかない武具。

今まで虐げていた奴隷達を、この状況で減らさない様に守る様な命令。

後必要なのは、奴隷の姿を確認する事か。

もし俺が考えている通りの作戦をするのなら、おそらく近い内に帝都に多くの奴隷がかき集められるだろう。

今日明日の滞在かと思っていたが、もう少し時間が必要かもしれない。

俺はそう考えながら帝都の思惑を上回る作戦を考える為に、レナーテさんの屋敷の前に座り込んで思考を巡らせる。


読んでくださった皆様、ありがとうございます!

ブックマークしてくださった方、ありがとうございます!

評価や感想、ブックマークをしてくださると嬉しいです。

誤字脱字がありましたら、感想などで報告してくださると嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ