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帝都の検問所の列に加わると、前にいる商人の馬車の中身が少しだけ見える。

木箱に敷き詰められている剣や防具などが見え、その木箱の数は結構な量に感じる。

ただの武器商人ではない様だ、明らかに粗悪品の様な錆びている装備も少なからずあるのが確認する事が出来た。

もしこれが俺達の反乱に備える為にかき集めている装備なのだとしたら、あまりにも装備からレベルが違うのがハッキリと分かる。

俺がそう思っていると、少しだけ列が前へと進んでしまい、前で停止していた馬車の荷台部分が見えなくなってしまう。

…内情がどうなっているのかは分からないが、あれが一般人、帝都で言うところの平民の人達に支給される装備なのだとしたら、本当に数で押し切るつもりなのかもしれないな。

まだまだではあるが、それでも数では押し切れない程の強さにはなってきているのを知らない帝都側に、亜人族の力を見せつけなければいけないな。

そう考えている内に、検問所の列は少しずつではあるが前へと進んでいき、やがて俺の前に止まっていた馬車の主人が、商人の証である書類関係を見せ馬車の荷台を指差しをしながら説明でもしているのだろう。

すると検問所の騎士が俺の目の前を通り過ぎて、馬車の荷台に入り込んで荷物を検査し始める。

木箱を数箱だけ開いて中身を確認すると、商人に書類を返して入国を許可する事を伝える。

そうして俺の番となり、


「身分…?久しぶりに見た気がするなあんた。今までどこ行ってたんだ?」


俺に手を差し出しながら身分を証明する物を提示しろと言ってこようとした騎士が、俺にそんな事を言ってくる。

ちょいちょい冒険者ギルドの依頼を受けて帝都の外に出た後、帰ってくる時に冒険者カードを見せていた騎士の様だ。

顔は冑の所為で分からないが、冑の所為でくもぐった声に聞き覚えがある。

騎士の言葉にそう察しながら、


「…お金に余裕が出来たので、休暇として少しだけ羽を伸ばしに他の国に行っていたんですよ」


俺は冒険者カードを提示してそんな嘘を騎士に伝える。

俺から受け取った冒険者カードを眺めながら、


「それで金が無くなったから、帰って来てこれから働くつもりなのか。俺達と違って冒険者っていうのは、自由で羨ましいねぇ。ま、その分報酬がバラバラで安定はしていないけどな」


騎士は俺にそう言って、冒険者カードの確認…と言っても形式上での確認も済んだ事で、彼は俺に冒険者カードを返してくれると、


「入って良いぞ」


入国の許可をしてくれた。


「ありがとうございます」


俺も一応、形式上の感謝の言葉を伝えてから、冒険者カードを懐に戻して帝都へと入国する。

検問所を通り過ぎると、相変わらずの喧騒に俺は鬱屈とした気分になる。

こう思うと、ジーグの賑わい方と全然違うな。

ジーグの人達の声は、挨拶とか仲間達に対する気遣いの言葉が多くあったが、帝都の賑わいは罵声なども含まれている。

帝都の街は、その場にいるだけで疲れそうだ。

俺はそう思いながら、いい加減街の出入り口にいるのは迷惑だろうし移動するかと思い、まずは情報収集の為に冒険者ギルドを目指して歩き始める。

冒険者ギルドに辿り着くと、そこには冒険者達が忙しなく動いており、依頼の目的地に行くのか完全武装をした者達や、何やら荷物運びをしている者達が大勢いる。

…元々騒がしかったが、久しぶりに来るとここまで慌ただしく感じるものなのか?

それとも、ジーグでの反乱の情報で冒険者達にも何かしらの依頼があるのだろうか?

…考えていても仕方が無い、とりあえず中に入って色々と調べてみるか。

俺はそう思い、冒険者ギルドの扉を開けて中に入る。

冒険者ギルドの中も受付嬢などが慌ただしく動いており、普段静かな受付嬢達が大きな声を出して指示を出し合ったりしている光景は珍しく感じる。

俺はそんな様子を横目に依頼が書いてある紙が張り出されている掲示板の元へと行き、依頼の様子を探ってみようとすると、掲示板には依頼書が一枚も張り出されていない。

ならばもう受付嬢に直接話しを聞くしかないな。

俺はそう思いカウンターまで歩き、何枚の書類も確認している受付嬢の元へと行くと、


「すみません、今時間よろしいですか?」


そう声を掛ける。

俺が声を掛けると、


「はいはい、何ですか?今は冒険者にも国からの直接の依頼で皆さんが出払っているので、依頼をしても意味は無いですよ」


受付嬢が書類から目を離さずに俺にそう伝えてくる。

その言葉を聞いて、やはり国から何かしらの動きはある様だと確信し、


「それはどんな依頼なんです?」


更に質問をしてみると、


「詳しい説明は無かったのですけど、より強力なモンスターの討伐依頼がありますね。素材を帝都の城前に持ち込めば、鑑定して貰えてその場で金銭を払って貰える様で、皆さんそれに群がっていますね。それと、奴隷の囮の禁止が出ましたよ」


受付嬢が俺の問いに、未だに書類から視線を上げずにそう答えてくれる。

その言葉を聞き、俺は更に困惑をしてしまう。

何故帝都が、奴隷を囮にする禁止を出す必要があるんだ?

今まで奴隷に対して、見向きをしていなかったはずだ。

それなのに、どうして…。


「………ありがとうございました」


俺は考え事をしながら、受付嬢にお礼を伝えて歩き出す。

一応、帝都の方で何かしらの動きはある、おそらく剣聖が帝都に戻っている可能性は十分にある。

強力なモンスターの討伐は、おそらくではあるがモンスターの素材を集めて装備などを製作したりするのだろう。

しかし奴隷の囮を禁止にする、つまり奴隷を虐げない様にする命令を何故冒険者に…。

もしかして、街の全ての住民にしているのか?

俺は色々と思考を巡らせる。


「…せい?」


帝都が今まで虐げていた、どんな扱いを受けていても放置をしていた奴隷に対して、何故今更囮に使うのを禁止にした?

おそらく反乱に関係があるはずだ、しかし何故奴隷が関係しているのかが分からない。


「…せいッ!?」


同じ亜人族という共通点はあるが、それでは奴隷を守る様な命令の理由にはならない。


「…聞こえ……ッ!?せん……ッ!」


もう少し、詳しい内情を知る必要があるな…。

アンジェの指輪を装備して、城に潜入するか?

いやしかし、相手がどの様な罠を仕掛けているか分からない以上、危険な事はあまりしたくは無い。


「先生ッ!ヴァルダ先生ッ!聞こえていますかッ!」

「ッッ!」


色々と思考を巡らせながら帝都の街を歩いていると、突然服を引っ張られてそんな言葉が言い放たれた。

声の主の方に改めて、誰が自分に声を掛けてきたのかと確認をするとそこには、


「……………お久しぶりですね、レナーテさん」

「先生、今私の事分かっていませんでしたよね?」

「いやいや、そんなまさか!短い期間でしたが、大事な教え子を忘れたりなんかしませんよ」


レベルデン王国で先生と生徒として交流していた、レナーテ・ミュルディルさんがジトーッとした目で俺の事を見てきた。


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