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俺の提案に、ウンディーネさんは少しだけ考える素振りを見せる。
そんな彼女の思考を邪魔する事はしたくない、ここは黙って彼女の言葉を待とう。
俺はそう考え、ウンディーネさんから発せられる言葉を待つ。
やがて、
「私とレヴィ以外の、戦闘にはあまり向いてはいない者達にはそれが良いとは思います。しかし、私達もその警備などに配属された方が良いとお思いですか?」
ウンディーネさんが俺にそう質問をしてくる。
彼女のその言葉に、俺は不機嫌にさせる事を言ってしまったかと少し疑問に感じながら、
「ま、まぁそれは…。レヴィさんもウンディーネさんも海上以外でも行動する事が出来るのは知っていますが、それでも本来の力を出すには水がある場所の方が良いとは思いますし…」
俺は言葉を選びながらウンディーネさんにそう伝える。
俺のそんな発言に、ウンディーネさんは溜め息交じりに、
「私は水の精霊ウンディーネ、水が無い場所でも自ら水を生成する事も可能です。無限大では無いですが…。それに、レヴィの力は海でのみ発揮されるモノでもありません。それに、レヴィの力は私の水を使う事で更に強力になります。私とレヴィを離す事もおすすめはしません」
説明をしてくれる。
その言葉を聞き、つまりレヴィさんとウンディーネさんは2人で一緒にいるとより強力な戦力になるという事だと分かる。
ならば、
「では、ウンディーネさんとレヴィさんは帝都に進軍をしてくれるという事で話を進めますが、よろしいですか?」
俺はウンディーネさんの様子を見ながらそう聞くと、彼女は黙って頷いてくれる。
その反応に心強く思いつつ、俺は少しだけウンディーネさんから視線を外して、やや上の方に視線を向ける。
そこには少しだけ不安そうにしているセイレーン達がおり、俺はそんな彼女達の様子に思考する。
今の会話を聞いていて、セイレーン達は心強い仲間が離れてしまう事に不安を感じているのだろう。
その不安は十分に理解出来る、故にこの問題を解決しなければセイレーン達はあまり俺の意見に耳を傾けてはくれないだろう。
少しでも信頼を得る為に、俺は出来る限り不満や不安を彼女達に感じさせてはいけないんだ。
俺はそう決心をすると、
「ではウンディーネさんとレヴィさんが大陸、帝都に行っている間の海の護衛などはセイレーンさん達などに任せたいのですが、ウンディーネさんやレヴィさんがいないと流石に心細いと思うので、何かしらの対策を考えないといけませんよね?意見を聞かせて貰っても良いですか?」
セイレーン達の後方、目線の高さは合わせつつ彼女達に警戒心を抱かせない様に彼女達の後ろの空間を見ながらそう質問をする。
俺に視線を向けられたセイレーン達は、少し嫌そうな顔をしながらも少しコソコソと相談し合うと、
「私達は、デレシアやレヴィがいなければまともな戦闘など出来ない。せいぜい、私達の声で敵を錯乱させる程度、圧倒的に戦う力は持っていない」
「そんな私達が、どうやって大陸とジーグの海路を護れる?」
2人のセイレーンが俺にそう質問をしてくる。
彼女達の問いに、
「やはり、戦力不足は否めませんね。ジーグの戦力を割り振るとセイレーンさん達も安心ではあるとは思うんですけどね…。どんなに安全だと説明しても、人族と共にいるのはやはり嫌ですよね?」
俺が説明しつつ質問を返す。
そんな俺の問いに、
「信用出来ないもの…」
「人族と一緒なんて…」
セイレーン達が俺に対してそう言ってくる。
彼女達の言葉に、俺はそういう反応をされるのは仕方が無いよなと考え、少しの間思考する。
やはり人族と一緒に護衛は無理か、そうなると残る手段は俺の家族を残すか、ジーグにいる人達を残すかになるんだが…。
あまり帝都に向かわせる戦力を減らしたくはない、しかし海路の安全も重要なものではある。
どうすれば、皆が納得する結果になる?
強く無くても良い、セイレーン達が安心?精神的に不快感無く集中して見張りや見回りが出来る様になれば良いのだ。
俺がそう考えていると、
「………1つよろしいですか?」
ウンディーネさんが俺に声を掛けてくる。
俺は頭の片隅で考え事をしながら、
「何ですか?」
ウンディーネさんの言葉に反応し、次の言葉を促す。
俺の言葉を聞き、
「…ハァ…。何故貴方は皆の意見を取り入れようとしているのですか?それではいつまで経っても話し合いは進みません。正直、セイレーン達の意見は我儘とも言えます。貴方はその様な全ての者の意見を全て聞き入れるのですか?」
ウンディーネさんは俺にそんな質問をしてくる。
彼女のそんな問いに俺は、
「出来る限り、協力をしてくれる人達の意見は聞き入れるつもりですよ。流石に厳しい時は、しっかりと事情を説明して、互いに納得が出来る折り合いを探していくつもりで俺は話をする気でいます。ウンディーネさんの言う通り、聞き入れなかった場合は話し合いは早く済むかもしれませんが、それでも遺恨を残す事になり、結果求めていた物が失われてしまう可能性が十分に考えられます。だから、俺は感謝の意味も込めて、どんなに我儘でも相手の意見を聞き入れるつもりですよ」
素直な気持ちで彼女の質問にそう答える。
俺の問いを聞いたウンディーネさんは、少し呆れた様子で俺の事を見てくる。
彼女が言いたい事も理解出来る、だけどそれでも俺は亜人族の考えなどを聞き、それを優先したいと思っている。
俺がそう思っていると、
「…分かりました。では、貴方は今、セイレーン達の意見を聞きつつ、貴方自身が考えている事を説明していただけますか?」
ウンディーネさんが俺にそう聞いてくる。
彼女の言葉を聞き、俺はセイレーン達の意見を聞いて今考えている作戦とそれに関する問題点を説明する。
そして全ての説明を終えた俺にウンディーネさんは、
「1つ心当たりがあります。海の警護に向いており、亜人族である者達を」
ヒントを与えてくれる。
それに食いついた俺は、
「ど、どういった人達なんですか?」
食い気味にそう彼女に質問をすると、ウンディーネさんは少しだけ目を細めて、
「私達よりも海に精通し、より深い場所で生活している者達です」
俺の問いに対して答えてくれた。
しかし、何故かその声色は俺の事を試しているのかと思わせるくらい、俺には苦笑交じりと言うか挑発的な声色に聞こえた。
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