442頁
後ろからレヴィさんの視線を背中で感じながら建物の中へと入って行くと、
「いい加減にしなさいッ!その大きな体は見せ掛けなのですかッ!うじうじうじうじとッ!確かに身の安全を主張し、それを尊重する事は大事ですよ!しかし、それ以上に私達は自分達の主張をハッキリとさせないと、人族にいつまでも虐げられていく事になるんですよ!このまま、いつまでも人族に怯えてこの様な狭い場所で生きていくというのですかッ!私やレヴィ、セイレーン達は海での生活がありますが、貴方達はその大きさでは大陸の方が良いでしょう?もう少し、勇気を出すつもりは無いのですか?」
「………」
ウンディーネさんが、最初は怒った様子で説教をしている感じだったのだが、途中からは諭す様な淡々と冷静な意見を言っている。
そんなウンディーネさんの言葉に、巨人族の男性は何も言わずに顔を顰めている。
…今ここへ来たのは流石に空気が読めていないだろうか?
いや、でも今決意をしたばかりだ。
今は少しでも、俺の言葉を伝えたい。
俺はそう考え、
「今よろしいですか?」
大きな声では無かったが、ハッキリと声を出す。
その甲斐あってか、ウンディーネさんは振り返って俺の事を見て、巨人族の男性は顰めて強く瞑っていた片目を開けて俺の事を見てくる。
セイレーン達は高い場所から俺の事が見えていた様で、あまり大きな反応は見せなかった。
コソコソと話をしているのは、見えはするのだが。
「………何ですか?」
俺がセイレーン達の様子を窺っていると、ウンディーネさんが静かに質問をしてくる。
そんな彼女に俺は、
「ウンディーネさんは、センジンさんとの話し合いで今回の件にどれだけ関わっているかは分かりませんが、俺の事は聞いていますか?」
そう質問をする。
現状、ウンディーネさん達が反乱に参加するという話はセンジンさんからは聞いていない。
おそらく、反乱とは関係はしているが大きな役割を担っている訳でも無いと考える。
つまり、反乱に参加しない故に思いっきり協力をしている俺の話はあまり話題にはならないのだろう。
故にウンディーネさんは、あまり俺の事を詳しくは知らないし人族である俺を知りたいとも思わないのだろう。
俺がそう考えていると、
「センジン様から、今回の反乱に参加する事の話は伺っています。それに、ジーグでの行いも。仲間達がお世話になりっぱなしだと、彼は言っていましたが」
ウンディーネさんが俺の問いに対して答えてくれる。
彼女の答えを聞いた俺は、思ってた以上にはセンジンさんから話を聞いているのだなと考えると、
「それでも、やはり俺の事は信用出来ませんか?」
再度、俺はそう質問をする。
それに反応したのは、
「………当たり前だろう」
巨人族の男性だ。
開いた片目で俺を見下ろしつつ、ハッキリと信用出来ないと言う。
巨人族の男性の言葉を聞き、
「ですよね、俺も自身が置かれている状況が同じであれば、簡単に信用出来るものではありません。貴方は間違っている訳では無いんですよ。ウンディーネさんは勇気を出すつもりは無いかと聞いていましたけど、やはりすぐに決断出来る程簡単な問題では無いと思うんです。しかし、俺にもあまり時間がある訳では無いんです。だから、今は信用していなくても構いません。ただ俺のしていく事を厳しい目で、審査して欲しいと思っているんです。許可をして頂けませんか?」
俺は巨人族の男性に対してそうお願いをし、深々と頭を下げる。
頭を深々と下げると、辺りが静かになるのが分かる。
おそらくセイレーン達は巨人族の男性の言葉を待っているのだろう。
ウンディーネさんは、俺と巨人族の男性との会話を邪魔しない様にと配慮してくれているのだろう。
俺はそう考えながら、ただ次の言葉を待つ。
やがて、
「………勝手にするが良い。しかし、怪しい行動をした時の覚悟はしておくんだな」
淡々としつつも、どこか警戒心を宿した言葉が掛けられる。
しかし、心の中では未だに納得はしていなさそうだけど、許可を貰う事は出来た。
俺は頭を上げてお礼の言葉を口にすると、巨人族の男性は不満そうに一回ため息を吐いて奥の方へと進んで行ってしまった。
許しの言葉が出た時に頭を上げた俺ではあったが、許してくれた事の感謝を伝える為に俺はもう一度頭を下げて感謝の言葉を伝える。
少しして、俺は姿勢を正すと近くで様子を窺っていたウンディーネさんの事を見て、
「…まずは、どういった経緯であれ勝手にここまで来てしまった事を謝罪させて頂きます。本来であれば、俺をここへは連れて来たくは無かったと思うので…。すみません」
謝罪の言葉を口にし、頭を軽く下げる。
「………」
俺の謝罪に、特に反応が帰って来る事は無い。
「ウンディーネさんも、先程の巨人族の男性と同じで俺の行動が怪しかったり、何か変に感じた時は追い出してくれても構いません。今だけは、どうか俺がここにいる事を許してくれないでしょうか?」
続けて俺がそう聞くと、ハァと短い溜め息が聞こえて、
「…分かりました、許可します。………どうせ、レヴィが貴方の話に乗っかってここへ連れて来たのでしょうからね…」
そんな言葉を掛けられる。
流石はウンディーネさん、レヴィさんの事をよく分かっているな。
俺はそう思いながら、
「ありがとうございます。それで早速で申し訳ないのですが、これからの事について話し合いを行いたいのですが、お時間はありますか?出来れば、セイレーンさん達も遠くからでも良いので話を聞いて、意見などを聞かせてくれると嬉しいんですけど…」
上の方にいるセイレーン達にも声を掛ける。
それに対して、
「人族の話しなんて、聞く必要あるの?」
「優しい言葉で私達を騙して、生け捕りにするつもりなのかも…」
「怪しいよね」
コソコソとそんな会話をして俺の事を見てくる。
その訝しんでいる視線を受けつつ、気が向いてくれればそれだけでも良いかと考え、
「では、まずは俺の方から情報を開示させて頂きます。それに対して、質問があればおっしゃってくださいね」
ウンディーネさんに視線を戻して、俺は話を切り出した。
読んでくださった皆様、ありがとうございます!
ブックマークしてくださった方、ありがとうございます!
評価や感想、ブックマークをしてくださると嬉しいです。
誤字脱字がありましたら、感想などで報告してくださると嬉しいです。
よろしくお願いします。




