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海岸で建物から聞こえてくる巨人族の男性、レヴィさん、ウンディーネさんの声。

盗み聞ぎは良くないと思い、波の音に意識を集中させつつ海を眺め続ける。

結構長い間、海を眺め続けているな。

日差しも強いからか、そこそこ濡れていた服も乾いてきている。

あれから巨人族の男性の声と、ウンディーネさんの声が時々聞こえていたのだが、今は結構静かになっている。

たまに、諭す様にウンディーネさんの声が聞こえたりするが、何を言っているのかはあまり気にしない様にしている。

それにしても、建物には扉が無いのだが夜は寒くないのだろうか?

それとも、寝る時は別の場所に移動したりしているのだろうか?

俺はそんな疑問を感じながら海を眺め続けていると、


「ヴァルダ」


後ろから声を掛けられて、俺は振り返って声の主を確認する。


「レヴィさん、お話は…終わった訳では無さそうですね…」

「うん」


彼女が呼びに来てくれたのかと思ったのだが、巨人族の男性とウンディーネさんの声がまだ聞こえる事から、彼女が俺の事を呼びに来てくれた訳では無い事を悟る。

レヴィさんが俺の隣に腰を下ろすと、


「さっきはありがとうございました。そしてすみません、俺の所為で責められてしまって…」


俺はまずはお礼を言い、続けて俺がここへ来た所為で連れて来たレヴィさんが酷い事を言われてしまった事に謝罪をする。

俺の謝罪を聞いたレヴィさんは、


「問題無い。頭に血が上った時に、突発的に言ってしまうのは心の底で考えていた事だと思うから。いずれは言われたかもしれないし、言われなくても不信感を持たせたままでは意味が無い」


責められた事を気にしていない様子で、淡々と俺にそう説明をしてくれる。

彼女の言いたい事は分かる、だがそれでも俺が来なければあの様な言い方にはならなかったかもしれない。

もっと冷静に、腹を割った話が出来たのではないか?

俺がそう思っていると、俺の眺めていた海の海面が僅かに浮き上がり、そのまま空中を流れる水流となって建物の方に向かって行く…。

そして、


「いい加減、その頑固な頭を冷やしなさいッッ!!」


今まで冷静に話をしていたウンディーネさんの、お怒りの声と同時に一気に加速した水流が建物の中へと吸い込まれ、


「ブォラッッ!?!?」


巨人族の男性の苦しそうな声が聞こえてきた…。

なんか、俺が来た時よりも悪化していないだろうか?

俺がそう思っている間にも、海の水がどんどん建物の中へと吸い込まれていき、巨人族の男性の渋い悲鳴の声が聞こえてくる。


「あの、凄く苦しそうなんですが大丈夫なんですか?」


俺は心配になって、未だに頭上を通って建物に入って行く水を見つつ建物を指差しながら質問をすると、


「問題無い、たまにある。頭を冷やすには、丁度良い」


レヴィさんが特に気にしていない様子で、海を眺め続けている。

こ、この光景がこの島での日常の出来事なのかな?

俺が心配な気持ちで、後ろ髪を引かれつつもレヴィさんと同じ様に海を眺める事を再開し、


「普段ここで、皆さんは何をしているんですか?」


他愛も無い、世間話の話題を振ってみる。

俺の質問を聞いたレヴィさんは、


「特別な事はしていない。ただ皆で集まってご飯を食べたり、一緒に寝たり。後は、話し合いが多い」


淡々と問いに答えてくれる。

彼女の言葉を聞いた俺は、その様子を想像しながら後ろの様子を見て、


「レヴィさんとウンディーネさんは、ここにずっといる訳では無い感じですよね?普段は海中にいる感じですか?」


そう質問をする。


「うん。やっぱり本来の姿の方が楽だから。それに、私が長い間いるのも、セイレーンの皆に申し訳なく感じる。特に怒っている訳でも無いけど、そこにいるだけで威圧感を出しているらしくて、少しだけ怖がられてしまうから」


俺の質問に、レヴィさんは少しだけ寂しそうな表情でそう答える。

彼女の言葉に、どこかしょうがない事なんだと自分に言い聞かせている様な諦めている様な雰囲気を感じさせる。

そんな彼女の様子に、俺はどうにか今の彼女の現状を改善する事は出来ないだろうかと考える。

しかし、自身よりも強い相手に無意識に恐怖心を抱いてしまうのは、生物としては仕方が無い事でもあるんだよな…。

こんな時は、どうしたら良いのだろうか?

これであまり親しい間柄では無いのなら、親しくなる事で危険は無いという事を示していけるのだろうが、元から既に親しい間柄であるのが問題だな。

むしろ、親しい間柄であっても無意識に相手を威圧してしまうレヴィアタンとしての強さがよりハッキリと分かる。

俺はそう思いながらレヴィさんの寂しそうな横顔を見て、


「大丈夫…なんて軽い事は言えませんが、レヴィさんがここにいる人達ともっと心を通わせる事が出来る関係になれる様に、俺もお手伝い出来る事があれば何でもしてあげたいです。ですので、やはり今は俺がせめて無害である事を証明しなければいけないですね」


俺はそうレヴィさんに伝えると、砂浜から立ち上がってどうしたら良いのかをもう考えるのを止める。

今回に限ってでは無い、亜人族に協力を求める事がどれだけ彼らに対して大変な事か、真に理解していなかった俺に原因がある。

もっと、明確な安全策と協力する事で得られる確実な利益を伝えなければいけないんだ。

そしてそれと同時に、僅かにでも起こり得るデメリットを教えておく事が重要だろう。

もう考える事は無い、ただ俺が置かれている状況と現状の進捗状況を説明し、それに協力する事での彼らに対する利益、どんなに自信があっても僅かにでもあり得るデメリットを、全て説明すればいいのだ。

それでも駄目だった場合は、無理を強いる事になってしまうから協力をお願いする事は諦めよう。

ただ少しでも、ここに住んでいる人達に信用して貰う為に真正面からぶつかっていくしかない。

俺は改めてそう決心をすると、


「レヴィさん、俺もう一度巨人族の男性とセイレーン達、そしてウンディーネさんにも信用して貰える様に、詳しい話をしてきます」


俺が立ち上がった様子を不思議そうな顔でこちらを見ていたレヴィさんにそう伝えると、


「…分かった、待ってる」


彼女は一度だけ頷いて、送り出してくれる。

彼女のその言葉に、俺は大きく頷いて建物へと向かって歩き出した。


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