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俺の怒りの言葉が建物内に響き渡り、辺りが一瞬で静寂する。

先程まで、セイレーン達や巨人族の男性、レヴィさんの意見の出し合っていた声で騒がしかった辺りが、静寂で支配されている。

周りのセイレーン達が、目の前にいる巨人族の男性が、隣に立っているレヴィさんが。

この場にいる皆が俺に注目しているのが分かる。


「人族である俺の事を邪魔者扱いするのは当然だ、理解も出来るしそれは俺も文句を言うつもりはありません。しかし、貴方達の事を考えて行動しているレヴィさんやウンディーネさんの事を、まるで自分達の事しか考えていない様に言うのは違う、彼女達は一緒に生活をしている皆さんの事をしっかりと考え、より皆さんが安全に快適に暮らせる様にと改善させようと頑張っているんです!そんな2人に、その様な発言は俺は許せない!」


しかし、俺は怒りのまま感じた事を巨人族の男性に伝える。

俺が言い続けていた叱咤の言葉を黙って聞いている巨人族の男性だったが、俺が言葉言い終えると表情を歪めて、


「貴様に何故そんな事を言われなければいけない。元はと言えば、貴様達人族の所為で我ら亜人族は身を隠す様に生活をしているというのに…。貴様達人族が絶滅してしまえば、我らはこの様な暮らしをする事も無くなるだろう…」


俺と同じ様に、怒りの感情を宿して俺にそう言ってくる。

巨人族の男性の意見、それは人族である俺に対して言いたい事であるのは分かる。

しかし、今俺が言いたいのはレヴィさんやウンディーネさんに対して言った言葉の訂正だ。

俺は怒りつつも、冷静に今は巨人族の男性がレヴィさんに謝罪の一言を言わせようと考えて、


「俺の発言に気分を害したのなら、謝罪はいくらでもします。しかしその前に、貴方もレヴィさんに謝罪をしてくれないと俺の気が済みません。謝罪の言葉を俺に聞かれたくないのなら、一度外に出るので謝罪をしてください。レヴィさんは、皆さんの事を考えて安心して暮らせる状況にする為に頑張っているんです。そんな大切に想っている仲間に、あの様な事を言われた彼女の気持ちを考えて下さい」


俺は巨人族の男性にそう伝えると、踵を返して建物の外に一度出る。

俺が建物を出てから少しして、背後から話し声が聞こえてくる。

巨人族の男性は純粋に普通の声量で話しているのだろうが、その体躯の所為で普通の声量でも結構聞こえてしまう。

どうやら、巨人族の男性的には未だに納得出来ない事がある様で、それをレヴィさんに言っている様だ。

…もう少し遠く行かないと、盗み聞ぎになってしまうな。

人族である俺に話を聞かれたくないだろうと気を遣って外に出たというのに、意味が無い状況になってしまっているな。

もう少し遠くに行きたいのだが、結構海岸のギリギリに建物がある所為がこれ以上遠くに行くとなると反対側に回り込むか海に出るしか無くなる…。

建物の反対側に行くのは、信用されていない俺が勝ってにフラフラと出歩くのは駄目だろうと思い、俺は目の前の海を眺める。

氷魔法で足場を作って少し遠ざかる方が良いかもな。

俺はそう思ってクラスチェンジスキルを発動しようとすると、水平線からまた水の動きが見える。

本当につい最近、同じ様な光景を見た気がするのだが…。

俺はそんな事を考えて、今はクラスチェンジよりも盾を装備しての防御に専念した方が良いのかなと思い、即座に盾の準備を開始する。

先程まで気になってしまっていた建物から聞こえてくる声も、今でも聞こえては来るがそれどころでは無い状態だ。

そうして盾を構えて待っていると、徐々に水平線から水しぶきを上げながら移動しているモノが見えてきた。

それと同時に、前回とは違って勢いはあるものの衝突する事は無さそうだと感じて俺は少しだけ気を緩める。

しかし俺が構えていた盾を少しだけ動かして防御を緩めた瞬間、今まで緩やかにこちらに向かって来ていた水が一気に再加速をして俺に向かってきた!


「えぇ~ッッ!?」


俺が驚きの声を出すと同時に、加速された水が一気に押し寄せて来て俺の体はビショビショに濡らされてしまう…。

濡れた服が張り付いて少しだけ気持ち悪く感じていると、


「何故貴方がここにいるのですか…ッ!?」


海からやって来たウンディーネさんが、警戒した様子で俺に質問をしてくる。

その表情と声色から、彼女が警戒や怒りなどの感情を持っている事が分かる。

今レヴィさんは巨人族の男性との話しで俺がここへ来た説明をしてくれる状況では無い。

とりあえず、今は俺が何とか出来る限りの説明をするしかない様だ。

俺は目の前で水をうねらせていつでも攻撃が出来る様にしているウンディーネさんに、


「…レヴィさんに連れて来てもらいました。今は少し彼女が巨人族の男性と話をしている状況で、説明をして貰う事が出来ないのですが…。ただ、レヴィさんの事を責めないで下さい。俺の不躾な発言に、優しい彼女が応えてくれてしまったんです。そこで俺がお断りをしていれば良かったのですが、自分の欲望を押さえる事が出来ずにここへ案内して貰いました。…申し訳ありません」


俺は事情を説明し、レヴィさんの事を責めないで欲しい事をお願いする。

元はと言えば、俺が何も考えずに発言をしてしまった事がいけないのだ。

俺が余計な事を言わなかったら、レヴィさんが巨人族の男性に酷い事を言われずに済んだのに…。

俺がそう思っていると、ウンディーネさんは俺に向けていた訝しむ視線を少しだけずらして、俺の背後の建物の方を見る。

俺よりもまず、建物の方が気になる様だ。

と言っても…。


「貴様は何故あの人族をここへ連れて来たッ!あまりにも危険な事をしているのが分からないのかッ!」

「………大丈夫……信用…出来る…」


建物から巨人族の男性の声は良く聞こえるし、レヴィさんの声も僅かにだが聞こえる。

ここにいる皆の安全は、保障されているとは思うのだが…。

俺がそう思っていると、


「…貴方については、センジンさんからも話を聞いています。しかし、それでも私はまだ信用する事は出来ない。レヴィはその強さ故に警戒心が無い。あまり唆す様な発言は控えて下さい」


ウンディーネさんが注意の言葉を言ってくる。

彼女のその言葉に、俺はもう一度謝罪をしつつ了承の返事をした。

俺の言葉を聞いて、一応攻撃的な警戒は解いてくれた様で彼女の周りを激流していた水は海へと激しい音を立てて戻してくれた。

その様子にホッとしていると、彼女は小走りで俺の横を通り過ぎると建物の中へと入って行く。

………呼ばれるまで待つか。

俺はそう思いながら、濡れた服を乾かす為に身近にある陽の当たりが良い場所へと座った。


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