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セイレーン達の話し合いは終了し、とりあえず自由にしても良いと許可を貰う事が出来た。

しかし流石に1人で色々と動き回られるのは困るという事で、抑止力にもなるレヴィさんの付き添いでの行動が許された。

個人的には文句は無いし、それで良いとは思ったのだが…。


「この感じ、歓迎されている訳では無いとは思っていましたがまさかここまで警戒されているとは思いませんでした」

「仕方が無い、これでも皆が許してくれた方だと割り切るしかない」


完全に遠くから監視されている状態になってしまった。

監視されるのは仕方が無い事ではあるのだが、せめて数人にして欲しかった…。

おそらく、この建物にいる全員が俺の事を監視している。

全方向からの視線に、俺は少しだけ気を重くしながら建物の奥へとレヴィさんと共に進む。

建物の奥に進むのと同時に、俺は頬を吹き付ける風に違和感を覚えて風が吹いてきた方向に視線を向ける。

そこには、普通の家などであれば窓があるのであろう空間が存在し、しかしそこには普通であるならあって当然の窓が存在しなかった。

そうか、単純に巨人族の家自体が大きいのだ、木材だとしても相当の量を使用しているはずだ。

ならば、窓などの加工しなければいけない素材はもっと手に入りにくい。

俺は改めて、建物の内装に目を凝らす。

所々壁には俺の身長くらいの大きさの穴があり、巨人族からしたら隙間風かもしれないが十分に風が吹き抜けている…。

ただでさえ、ここは周りに何もない孤島である。

海風も結構吹いて来ている。

環境が悪いと言うのは失礼かもしれないが、それでもこれは平穏に過ごせているとは言えないと思う。

むしろ、逃亡生活の様に不自由しか感じないのではないだろうか?

俺がそう思っていると、


「…どうしたの?」


レヴィさんが俺の様子を見てそう質問をしてきた。

彼女の問いを聞いた俺は、


「いや、立地の問題はあるとは思いますけど建物の壁に穴が開いていて、巨人族だからと言っても寒いのではないかと思いまして」


開いている壁の穴を指差しつつ彼女の質問に答える。

俺の言葉を聞いたレヴィさんは、


「寒い?」


俺の言いたかった部分では無い所に反応したレヴィさん…。

どうやら、寒いという感覚があまり無い様だ。

海中で過ごす事が多いから、そういう感覚があまり無いのかもしれないな。

だが氷水であれば、彼女にも寒いという感覚が分かるのかもしれない。

俺はそう思いつつ、


「まぁその話は今度、じっくりと議論しましょう」


一旦話を区切って、俺は改めて真剣な話をしようと俺達を監視しているセイレーン達のいる建物の上の方に視線を移す。

俺と視線が合うと、セイレーン達はプイッと視線を横にずらしてしまう。

どうやら監視は続けたい様子だが、人族である俺と視線を合わせたくは無い様だ。

さて、まずはこの状況から少しでも話が出来る状況へと変化させたいのだが、どうしたら良いだろうか?

俺がそう思っていると、


「…皆が気になるの?」


レヴィさんが首を傾げてそう聞いてくる。

彼女の言葉を聞き、


「ジーグでの話し合いについて、少し話をしたいと思っているんですが、流石に今の俺は信用なんて無いですからね…。どうやって信頼を得ようか考えていました」


俺がこれからの対応についてどうしようかと考えている事を伝えると、


「降りて来て」


レヴィさんが上の方にいるセイレーン達に向かって手を招く動作をしながら呟く。

しかしいくら身内であるレヴィさんの言葉でも、セイレーン達は動こうとはしない。

真ぁそれが当然ではあるのだが、その様子に不満を感じたのか、レヴィさんが少しだけ表情を歪める。

そして、


「…ヴァルダの話しを聞いて。とても重要な事、デレシアの話にも必要な事だと考えている」


レヴィさんは真剣な表情でそう言う。

そのレヴィさんの真剣な様子に、セイレーン達も少しだけ迷っている様子を見せる。

すると、今まで黙って俺達の様子を窺っていた巨人族の男性が、


「ウンディーネの話す事は、どれも理想論ばかりだ。あまりにも具体性が無い」


少し厳しい口調でレヴィさんにそんな事を言う。

巨人族の男性の言葉を聞いたレヴィさんは、


「理想論だとしても、それが皆の事を考えての言葉。難しいかもしれないけど、他者との交流でもっと現実味を帯びさせる事も出来るはず」


男性の言葉に反論する。


「フンッ、所詮は小さき者共の集まり。相手は人族という馬鹿げている数。ただでさえ心折られた者が多い亜人族が、簡単に叶うと思っているのか?我らは、ここで静かに過ごしていた方が幸せであろう」


巨人族の男性の嘲笑っている様子が混ざった言葉に、レヴィさんは苛立ちを感じたのか表情が歪む。

俺も巨人族の男性の言葉を聞いて、少しだけ異を唱えたいとは思うがここでその人族である俺が何かを言っても意味は無いだろうと思い、今は黙っておく。

俺は思考しながら巨人族の男性とレヴィさんの言葉を聞いていると、


「どうしよう?」

「レヴィやデレシアが言う事も分かるし、賛同したいんだけどね…」

「ダーヅウィットの意見も、私は正しいと思うな。何もしなければ、安全にここで暮らしていけるんだし…」


周りにいたセイレーン達も、互いに意見を出し合って議論を始める。

…巨人族の男性の言葉には、俺はあまり賛同する事は出来ないな。

確かに、ここに住んでいる彼らは安全と言えば安全だろう。

しかし、巨人族の体の大きさからしたらこの孤島は狭いと感じる。

そんな環境が、いくら安全だとしても良いモノとは思えない。

この際、人族に虐げられている亜人族の事は置いておこう。

彼らも、自分達の身を護る為に必死なのだから。


「貴様の様な強者には分からないだろうな、レヴィアタンッ!その力は人族を恐れさせ、奴らもお前に手を出そうという者は多くない。お前は我らとは違うのだ、ウンディーネもそうだ!我らは自分達の身を護る為に必死だ。力がある貴様等には理解出来ない、いつ自分が、家族が人族の手で殺されるかという恐怖がな!」


巨人族の男性の言葉を聞いて、俺は一瞬で感情が怒りに支配された。

そして、


「レヴィさんも、ウンディーネさんも仲間である貴方達を護る、より良い環境で共に過ごせる様に努力しているから、今ジーグでの話し合いをしているんでしょうがッ!それを否定する言葉だけは、絶対に貴方達が言って良い言葉ではありませんッ!」


俺は後先も考えずに、巨人族の男性に怒鳴ってしまった…。


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