438頁
息を深く吸い込み、俺はこの場にいる全ての者に聞こえる様に、
「配慮に欠けた発言、まずは謝罪をさせて下さい!人族である俺が貴方達に言ってはいけない発言をしました。申し訳ありません、皆さんの今までの絶望や苦労を考えれば、先程の様な発言は皆さんからしたら不快にしか感じないでしょう」
まずは謝罪の言葉を口にする。
そして、
「しかし、先程の発言は俺が心の底から望んでいる事でもあります。撤回をするつもりはありません、しかしそれを強制するつもりもありません!今はどうか、1人の協力者として話しを聞いてくれませんでしょうか?その話し合いの結果、俺の事を信用して貰えれば幸いとは思いますが、信用出来ないのも皆さんの事を考えれば当然だと理解は出来ます。その場合は、ウンディーネさんが進めている亜人族の方との話し合いに参加して頂けると良いのですが…」
俺は続けて皆に聞こえる様に説明をする。
俺の言葉を聞いた巨人族の男性も、セイレーン達も黙って互いに視線を交わらせてどう判断するのか無言で相談をしている様子だ。
俺がそう思って巨人族の男性などが俺に声を掛けてくるのを待っていると、
「ヴァルダは、何故亜人族などにそこまで興味を抱くの?」
レヴィさんが俺に質問をしてくる。
巨人族の男性や、セイレーン達の判断を聞く為に待ってはいるが、それでもやはりすぐには判断が出来ない様で未だに無言のやり取りをしている皆を見て、待っている間にレヴィさんと話しくらいしていても大丈夫だろうと判断し、
「結構難しい質問ですね。………簡単に説明をすると、恰好良いとか可愛いとかそういった感情を抱きやすいから、俺は亜人族の方達が好きなんだと思います。レヴィさんの様に、何も通す事が無い甲殻やしなやかでありながら単純に柔らかい訳でも無いその体、どの様な硬い物でも噛み砕くであろう牙に顎、鋭い眼光に見た者をその魅力で磔にする瞳、その全てがレヴィさんの魅力でなんだと考えると、綺麗でありながらも力強く、美しい存在なんだなと感じて、こう感情が爆発すると言いますか、興奮してしまうんですよね」
レヴィさんの質問に苦笑いをしながら答える。
更に続けて、
「でも決して外見だけで、亜人族に興味を抱いている訳では無いんですよ。話をする事が出来て、その人の考えや生き様、護りたいモノなどを聞いていく内に俺はその人の力になりたいと思うんです。だから、全てが全て亜人族だからと言って気に入っている訳ではありませんよ?自分と考えがどうあっても理解し合えない…出来ない人に、俺はそこまで興味を抱く事も少しでも力になりたいと考える事すらありませんからね」
俺は自分の考えをレヴィさんに伝える。
「…私や皆には、どうして助けたいって感情が湧いたの?」
俺の言葉を聞いたレヴィさんは、疑問に感じた事を俺に質問してくる。
その言葉を聞いた俺は苦笑し、
「まぁ今回の話は、2つの理由がありますがね。1つは、ジーグの皆さんのこれから起こそうとしている事に関して、レヴィさん達海の亜人族の協力を得たいと思っているからです。それともう1つは、俺の個人的な興味がある人達だったからという事ですかね。レヴィさんに対しても、巨人族に対しても、出会った事が無い人達との邂逅に俺は胸が躍っていました。それで実際に話をして俺はレヴィさんやウンディーネさんと、そして俺の仲間であった戦鬼さんの孫であるセンジンさんの助けになりたいという気持ちで、俺はここら一帯の海を管理していると言っても過言では無いレヴィ達の住まうこの場にいるんです」
思っている事を素直に白状する。
すると、
「………ほぅ、つまり貴様は、我々がこれから何をしようとしているのか知ってもなお、亜人族側に就くと言っているのか?
巨人族の男性が俺とレヴィさんの会話を聞いて、そんな質問をしてきた。
男性の質問を聞いた俺は、
「結構細かい事まで、俺は話し合いに参加している状態ではあります。作戦とまではいきませんが、それでも色々と意見を交換して試行錯誤をしている状態です。ジーグでの事は、おそらく今回ウンディーネさんが話しを持ってくるとは思いますけど、その話には俺も参加する事が決定しています。信用が出来ない今の状態でそんな事を言われるのは不安だとは思いますけど、どうかこの件に関して協力する事を許して下さい」
頭を下げてお願いをする。
俺が頭を下げて少しの間、辺りを沈黙が支配する。
やがて、
「…亜人族に頭を下げるその姿勢、少しは警戒を解いても良いかと我は思うが、お前達はどうだ?」
男性の渋い声で、そんな言葉が聞こえてくる。
どうやら、少しだけ警戒を解いてくれようとしている様だ。
俺がそう思って少しだけ安心していると、
「どうする?」
「レヴィがいるなら、大丈夫なんじゃない?」
「でも、まだデレシアの意見は聞いてないでしょ?」
上からそんな話し合いの声が聞こえてくる。
ウンディーネさんの意見を聞かれたら、俺的にはあまり良い方に話が向かわない様な気がする。
あの人も、俺の事を結構警戒している様子だったしな。
今この場にいる事がバレた時点で、マズい様な気もするのだが…。
俺がそう思いながら、上での話し合いに耳を傾けつつ頬を引き攣らせる。
少しだけ長くセイレーン達による話し合いが続いていると、
「…えぇい耳元で五月蠅い、いい加減にしないか。レヴィがいるのだ、いざという時は噛み殺してくれるだろう」
巨人族の男性が、あまりにも耳元で繰り広げられていた話し合いに我慢出来なくなったのか、少し苛立った様子でそう言う。
それを聞いたレヴィさんは、
「…え、それは嫌だ…」
小さい声でそう呟いた。
しかし、上で話し合っているセイレーン達はそうだそうだと賛成しているし、このままでも構わないのではないだろうかと考える。
何か怪しい行動をするつもりも無いし、もし彼らの気に障ってレヴィさんに噛みつかれても、それはそれで俺としては満足ですッ。
「レヴィさん、今は皆さんの意見に合わせて下さい」
俺がレヴィさんにそうお願いをすると、少しだけ不満そうにしながらも何も言う事はしないでセイレーン達の納得した様子を眺めているだけでいてくれた。
読んでくださった皆様、ありがとうございます!
ブックマークしてくださった方、ありがとうございます!
評価や感想、ブックマークをしてくださると嬉しいです。
誤字脱字がありましたら、感想などで報告してくださると嬉しいです。
よろしくお願いします。




