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翌日の朝、俺は起床をした後センジンさんと竜人族の皆さんと共に朝食を食べる。
そして朝食を食べ終えると、センジンさんは少し落ち込んでいる様子を見せつつも、
「行ってくるぜ」
俺達にそう言って集会場を後にした。
集会場から出て行くセンジンさんの背中から漂う哀愁に、俺は苦笑をしながら心の中で応援をしておく。
センジンさんを見送った後、俺もレヴィさんとの約束の為に集会場を出ようと思い、
「召喚、エルヴァン、バルドゥ」
まずは時間に制限などが無い、お馴染みの2人を呼び出す。
「おはようございます、ヴァルダ様」
「おはようございますヴァルダ様、今日もよろしくお願いします」
俺の呼び出しに応じて、黒い靄からエルヴァンとバルドゥが出てくると、2人は俺の前で跪いてそう挨拶をしてきた。
「おはよう2人共、そこまで畏まる必要は無い。頭を上げてくれ、エルヴァンもバルドゥもゆっくりと休めたか?」
俺は姿勢を正す様に伝えると、2人は俺の指示に従って立ち上がってくれる。
立ち上がると同時に、
「はい、ヴァルダ様の配慮のお陰で十分な休息を取る事が出来ました」
「私はエルヴァン様程疲労する事をしておりませんでしたので、全然大丈夫です」
2人は俺の問いにそう答えてくれる。
2人の答えを聞いた俺は、
「無理をする事は無いからな、互いに体力面などをカバーし合って欲しい。俺はこれから大事な用事がある。センジンさんは海の亜人族、ウンディーネさんとの話し合いがある故に今日は遅れて鍛練に来ると思うが、彼の方は忙しそうだから少しだけ気遣ってあげてくれ。後の事は任せても構わないか?」
そう質問をすると、エルヴァンもバルドゥも任せて下さいと頼もしい言葉を言ってくれる。
そんな言葉を聞いた俺は、竜人族の皆さんに後の事はエルヴァンもバルドゥに任せる事を伝え、何かあった時は2人を頼って欲しいとお願いをして、俺は港に向かって集会場を後にした。
港に向かっている道中、俺はふと時間を指定していなかったけど大丈夫だろうかと心配している間に、俺は港に到着してしまった。
しかし、
「おはよ」
結構朝早くの時間だというのに、レヴィさんは既に俺の事を待ってくれていた。
「すみません、遅れました。…おはようございます」
待たせてしまった事の謝罪をし、その後に挨拶をする。
俺の言葉を聞いたレヴィさんは、
「良い。それよりも、行こう」
俺にそう言うと手を引っ張って海の方へと歩みを進める。
俺も抵抗する事は無く彼女の後に付いて行くと、どんどん海へと近づいていく。
「ちょ、ちょっと待って下さいレヴィさん!俺は貴女の様に泳げるわけでは無いので、少し準備をさせて欲しいんですが!」
俺がそう言っている内に、足元に波がやって来て濡れる。
冷たいなぁ…。
俺がそう思っていると、
「付いてきて。こんな浅瀬じゃ変化を解いても泳げない」
レヴィさんが俺にそう言ってくる。
その瞬間、俺は海の冷たさなんて一瞬で忘れ、
「どこまでも付いて行きますよッ!」
俺はそう言い切っていた。
レヴィさんの、レヴィアタンの背中に乗って海水浴だと言われたら、これはもう何があっても海に入るしかないだろう。
俺の言葉に突然どうしたのだろうかと疑問の表情を俺に向けてくるレヴィさんに、俺はワクワクしながらどんどん海の中へと入って行くと、俺は泳ぐ事が出来ずに海上を浮いている状態になってしまう。
その状態で、レヴィさんに引っ張られている状態は明らかにおかしいし情けない…。
思っていた以上に、恥ずかしい状態になってしまった事に俺は、
「結構厳しいですね…」
そう呟いてしまう。
それにしても、浮いている状態だからあまり俺自身には実感が無いのだが、すでに結構な距離を移動して港も遠ざかっているな。
なのに、移動速度に変化が無いのはどういう事なのだろうか?
レヴィさんはまだ人の姿を保っているし、まだ本来の姿に戻る程深い場所という事では無いと思うのだが…。
俺がそう思って頭を動かしてレヴィさんの足元を確認すると、
「オォ~ッッ!!」
「っ!…どうしたの?」
レヴィさんの足が、僅かに変化して人形の様な姿になっていた。
綺麗な脚だった部分が、綺麗でありながらその内側に膨大な力を備えている尾ひれに変化している姿に、俺は感嘆の声を出してしまった。
そんな俺の声に、レヴィさんは驚いた様子で疑問を口にしてくる。
彼女の言葉を聞いた俺は、
「元々綺麗だった姿ですが、俺は本来の姿のレヴィさんの姿の方が好ましいので、見れて良かったです」
そう返事をする。
俺の言葉を聞いたレヴィさんは俺の視線の先の自身の脚、尾ひれの部分を見ると、
「…別に特別な事でも無い。私よりも、美しい色合いをしている者の方が多い」
俺にそう言ってくる。
彼女の言葉を聞いた俺は、
「美しい色合いも気になりますが、俺はレヴィさんのこの力を秘めているのが伝わってくる姿も好きですね」
彼女にそう伝えると、
「…変なの」
レヴィさんはそう呟き、
「これから戻る。少しだけ、苦しいかもしれないけど我慢して」
「え?」
俺に不穏な忠告をしてくると、彼女の体が僅かに淡く光り始める。
やがて徐々に彼女の体が変化し、きめ細かな美しい肌が近づくモノを寄せ付けない様なゴツゴツとした甲殻に覆われ、俺を掴んでいた手もいつの間にか消えている。
儚くも綺麗で可愛らしい顔も、気品を漂わせる美しさ、他を圧倒する力強さに特化したレヴィアタンとしての顔立ちに変化し、どの様な防具でも防げないのではないかと思わせる牙の隙間から炎が漏れている。
やはり、大きいな。
俺はそう思いながらレヴィさんの事を見ていると、彼女の大きさに海の様子が変わり波が大きくなって俺の体が流される!
その際に、波が大きい故に俺に降りかかり、レヴィさんの言った苦しいかもしれないと言う言葉に、こういう事かと納得してしまう。
そうしてレヴィさんが本来のレヴィアタンとしての姿に戻ると、彼女はすぐに溺れ掛けていた俺を背中に乗せる様に動いてくれて、俺は海の上にいると言うよりもレヴィさんの上に立っている状態になる。
助けてくれたレヴィさんにお礼を言うと、彼女は彼女達が住む場所へと進み始めた。
その間俺は、久々のレヴィさんの甲殻や鱗を触りながらも彼女と他愛も無い雑談を続けた。
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