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ウンディーネさんと共に港に辿り着くと、


「では私はここで…。失礼します」


彼女は俺に淡々とそう言って歩き出してしまった。

まぁ、少しだけでも話をする事が出来るまで心を開いてくれた事に感謝して、これ以上はしつこいと思われそうだから諦めるか。

さて、ウンディーネさんはセンジンさんと話し合いをする為にここへ来たという事は、センジンさんの元へ行っても意味は無いだろう。

センジンさんとウンディーネさんの話し合いを邪魔する訳にもいかないし、俺は竜人族の皆さんの所にでも向かうとするか。

俺はそう思ってバルドゥに任せている竜人族の皆がいる集会場へと向かうと、


「なるほど、それでは皆様は基本的に外の世界を出た事は無かったのですか…」

「あぁ、俺達亜人族は基本的に外では差別をされている。婆様はそれを考えて、人族のいる場所に下りる事を禁止しているのだ。俺達の事を心配し想っての事だ、不満はないさ」


集会場の出入りをする扉の前で、バルドゥと竜人族の男性が話をしている光景が目に入る。


「人族が全て差別をしている訳では無さそうではありますが、ヴァルダ様の元にいる人達は皆不用意に近づく必要は無いと言っていましたね。私の様に普通ならば討伐される対象は、油断させて攻撃を仕掛けてくる可能性があると言われていますからね」

「婆様の言う事だ、本当の事ではあるのだろうと思ってはいたんだが…。俺達は何も悪い事をしていないのに、何故その様な行いをされなくてはいけないんだ?」


バルドゥと男性の会話を聞いた俺は、ここで俺がバルドゥに見つかれば彼は俺の事に集中してしまうだろうと考えて、気づかれる前に草むらに隠れて2人の会話を盗み聞く。

どうやら、初めて外の世界を見た男性に多少の情報をバルドゥが教えているのだろう。

バルドゥもあまり塔の外の世界の事は知らないが、彼は塔に来た人達との友好的な関係を結んでいる。

色々と教える事もあれば、教わる事も多いのだろう。

俺のいない塔でも、バルドゥ達は生き様々な人達と交流しているのだな。

俺はそう思って感慨に浸っていると、


「私にもあまり詳しい事は知らないのですが…。昔、人族と魔族の戦争があった様で………」


バルドゥが皆から聞いたであろう話を説明していく。

それを聞いて、今は俺が行っては邪魔をしてしまうだろうと考えて、静かにその場を後にした。

港に舞い戻ってきた俺は、流石に完全にやる事が無くなった事を感じて悩んでしまう。

エルヴァンの事を考えて、今はゆっくりと休んで欲しい。

しかし、今は俺も色々と忙しい身ではある。

どうするべきなのだろうか…。

俺は1人でそう悩みながら、港で1人で立ち尽くしていると、


「………お前は…」


いきなり間近で声を掛けられ、俺は少し驚いて声のした方を向くと、


「…レヴィアタンさん?」


そこには、人の姿に変身しているレヴィアタンの姿があった。

近くにいても感じる威圧感、それを感じ取るのを忘れるくらい深く考えていたのか…。

まぁ、ジーグでは人に襲われる心配が無いから良い様な気もするが、気が抜けていたのは確かだな。

少し反省しなければいけないな。

俺はそう思いながら、


「…あれ?ウンディーネさんはセンジンさんと話しをする為に移動しましたけど…んん?レヴィアタンさんはウンディーネさんと一緒に行動してなかったんですか?」


少し混乱しながらそう質問をした。

ウンディーネさんと共に行動しているのなら理解出来るし、今この場にいるのも一応分かる。

しかし、俺が海岸沿いで出会ったウンディーネさんは、特にレヴィアタンさんを気にしている様子は見せなかった。

俺が先程の状況を思い出していると、


「…デシレアの後を追いかけてきた。一緒に行きたいと言ったのに、置いて行かれた」


レヴィアタンさんが少し不満そうな表情でそう言う。

デレシア…ウンディーネさんの名前だろうか?

自己紹介もせずに、彼女の名前を知ってしまったが…。

多分、俺に名前で呼ばれたくは無かったのだろう。

彼女が名乗ってくれるまで、ウンディーネさんと呼んでいこう。

いきなり嫌悪している相手から、名前を呼ばれたら嫌だろうしな。

俺はそう考えつつ、


「えっと、それで今はウンディーネさんを探している状態なんですか?」


レヴィアタンさんにそう質問をすると、彼女は俺の質問の言葉を聞いて一度目を閉じて長考し、瞳を開けると首を左右に振った。

一緒に来たかったのに、ジーグに到着したら探していない。

単純にウンディーネさん達が話す真剣な話し合いが好きではないか、それとももっと単純にジーグに遊びに来たかったから、話し合いでこちらに来たウンディーネさんと目的地まで一緒に行きたかっただけなんだろうか?

俺はそう色々と考えつつ、


「…レヴィアタンさんは…「レヴィ」……へ?」


彼女に更に問いかけようとすると、言葉を遮られてしまって変な声が出てしまった。

声を掛けてきた当の本人は、特に気にした様子も見せずに黙って俺の様子を見ている。


「えっと。今の言葉は?」

「名前。皆からはレヴィって呼ばれてる。レヴィアタン、長い」


俺が質問をすると、レヴィアタンさんは俺の問いにそう答えてくれる。

つまり、皆がそう呼んでいるから俺にもそう呼べという事だろうか?

…良いのかな、まだ完全に信頼関係を築いてもいない俺がレヴィアタンさんの事を愛称で呼ぶなんて。

俺がそう思っていると、


「ヴァルダ、行こう」


レヴィアタンさんが何故か町の方を指差してそう言ってくる。

彼女の言葉に困惑しつつ、レヴィアタンと一緒に行動する事が出来るという貴重かつ素晴らしい状況に、


「喜んで!」


俺は即座に反応して先へ行く彼女に追い付ける様に少しだけ早歩きをして、彼女の斜め後ろの位置をキープしながら歩く。

先を歩く彼女の姿を見ると、レヴィアタンさんは少しだけ歩き辛そうな様子だ。

おそらく、人の姿で歩くという行為にあまり慣れてはいないのだろう。

俺はそう思い、


「レヴィアタンさん、大丈夫ですか?」


彼女に質問をすると、


「レヴィ」


少しだけ先程よりも強くハッキリとそう言われて、俺は心の中でこれはウンディーネさんに知られたら更に関係が悪くなったりしないだろうかと心配しながら、


「レヴィさん、歩き辛くないですか?」


そう再度、愛称を呼んでそう質問をした。


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