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俺の言葉を聞いたアンリは、何度も下げ続けていた頭の動きを止めて、
「あ、改めて説明させていただきます。騎士達に送らせていた情報はジーグの異常は無い行動。反乱などはでまかせではあるが、注意する事でジーグが動き出す前に行動が出来る事を考えて、今の所は現状維持を報告させていたのですが、それも剣聖がどこまでジーグ内の情報を把握しているか不明なので、正直に言いますと不安要素しかありません。続いて狭間の町の住民の皆さんの事ですが、これは今のところ問題は無いのですが、これからも長期的に我慢させる事は不満になってしまいます。それの解決は出来る限り済ませたいと思っているのですが、それについてはどうするのが最適だと思いますか?」
状況の説明と、それに基づく現状の打開策の相談をしてくる。
アンリの問いに、
「剣聖の動きが俺達に理解出来なかった故に、今回の騒動が起きてしまった。帝都の動きについては俺が帝都に足を運んで確かめてみよう。しかし俺もただの一般人として行動しているから、あまり大きな情報を集める事は出来ないと思うがな。狭間の町の住民達の件については、ジーグのまとめ役であるセンジンさんの意見を聞いておきたい。狭間の町の住民との共生は可能だろうか?彼女達も人々の精気を吸収しなければいけない身。それに存在していく為には彼女達の存在をより強固にする噂が必要なんです」
俺が自身が出来る事を伝えて、センジンさんにも出来る事をお願いする。
すると、
「その事については、シェルガさんからお礼?のお言葉を預かっています。以前に比べて、存在を維持する事が出来ている者が多い、アンリやヴァルダの精気を分けて貰った事も大きいが、それよりも私達の存在を確実とする為の噂が効いている様だ。話を広めてくれた事に、感謝する。………と、シェルガさんが言っていました」
アンリがシェルガさんの言葉を代理で伝えてくれる。
精気を分けたのは、一応大した事は無かったからお礼を言われる程の事でも無い。
しかし噂は俺が流している訳では無い。
俺はそう思い、センジンさんの事を見ると、
「同じ空間じゃなくとも、同じ場所に共に過ごしている奴らの為に、少しでも出来る事をしてるだけだ。今までは悪い事をした子供達を諫めたりする為の存在として伝えてきたが、それはそいつ等の…そして俺達の為にならない事が分かったからな。これからはもう少し穏やかな、そして分かり合える存在として話をしていくつもりだ」
彼は少し照れくさそうに笑いながらそう説明をして、頬を強めに掻いている。
その様子を見て、そして彼の言葉を聞いた俺は、
「センジンさんのお陰で、狭間の町の人達がジーグの人達と友好的な関係を、一方的な関係では無く互いに協力し合う関係を築いていこうと考えてくれたら、この国はもっと良くなるでしょうね。…そしてその橋渡しであるアンリ、俺は多少しか手伝ってはいないからあまり俺から大きな事は言えないが、アンリの力がこれからのジーグと狭間の町の明暗を分けると言っても過言では無い。これからは、剣聖達の事は放っておいて、そちらに力を入れる様にしなさい」
センジンさんとアンリにそう伝える。
俺の言葉を聞いた2人は、互いに視線を交わすと、
「頼むぜアンリ」
「頑張らせていただきます!」
互いにそう言い合う。
それを確認した俺は、
「さて、全員の意見を聞いて皆が何をするかが分かった。そしてそれに対して意見を言い言われ、より具体的に何をするべきか考えていると思う。俺達はこれから、中々集まって話が出来ない程忙しくなるだろう。故に、今日のこの時間はとても有意義なものだった。これから俺達は、また同じ目標の為にそれぞれが別々の行動をする。しかし、互いに仲間の事を考え、自身の事を考えてより良い結果になると考えて行動すると俺は信じている」
今回の話し合いを終える為に、まとめに入らせて貰う。
俺の言葉に、真剣な表情で俺の事を見ているアンリとバルドゥ。
そして、やる気に満ちて今にも飛び出しそうにしているセンジンさん。
ここに集まった皆の事を見回し、
「これで、話し合いは終わりにしましょう。各々の健闘を祈っている」
俺がそう言うと、
「オッシッッ!行くぞオラァッッ!!」
センジンさんはそう声を張り上げて集会場から出て行ってしまった…。
突然のセンジンさんの大声と勢いのある行動に、竜人族の皆さんも何事かと驚いている様子でセンジンさんが出て行った集会場の扉を眺めている。
そんなセンジンさんの後に続いて、アンリが狭間の町へと行くと言ってから俺に頭を下げてから集会場を後にした。
アンリを見送ると、俺はバルドゥにエルヴァンやルミルフル、レオノーラにも今回の話し合いの内容を簡単に説明してくれとお願いをして、バルドゥは分かりましたと返事をして塔に戻って貰う。
そうして全員が集会場からいなくなり、俺は少し困惑している様子の竜人族の皆さんに、
「外に行きますか?」
そう質問をすると、少し迷った様子を見せる竜人族の方々。
すると、
「軽く、外の空気が吸いたい」
男性が俺にそう言ってくる。
その言葉に、同意する様に周りの人達が頷く姿を見て、俺はでは行きましょうかと言ってから先に外に出る。
それと同時に、念のために気配察知スキルを発動しておく。
俺の後に続いて、集会場から出てくる竜人族の皆さん。
長時間室内にいた故か、体を伸ばしたり深呼吸をしている皆の様子を見て、折角ジーグに来たのに窮屈な思いをさせてしまって申し訳ないと感じていると、
「御婆様の様子、良くなったと聞きましたがどの様な状態なのですか?」
1人の女性が俺にそう質問をしてくる。
よく見ると、ハイシェーラさんの看病をしていた女性陣の1人であるのが分かる。
心配そうな様子に、俺は優しく安心させられる様に、
「1人で立って、壁に手を添えながらですが歩いていましたよ。このまま順調でしたら、すぐに1人で動けるまで回復すると思います」
そう答えると、俺の言葉を聞いた女性は安心した様子で良かった…と囁いた。
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