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民家を後にした俺は、エルヴァンと竜人族が待っている集会場へと戻る。

するとその道中、


「………ヴァルダ様、申し訳ありません。空からの監視をしていたのですが、怪しい人物を見つける事が出来ませんでした…」


蝙蝠の姿のアンリが、空から降りて来て俺にそう謝罪をしてくる。

その声は凄く落ち込んでいる様子で、いつものアンリの明るさなどは見受けられない。

俺はそんなアンリに、


「アンリ、あまり気を落とすな。今回の騎士達の死は、俺も想定する事が出来なかった不測の事態だった。それをアンリが気負う事は無いし、責任がある訳でも無い」


そんなにも落ち込む事が無いと励ましの言葉を掛けるのだが…。

俺の言葉を聞いたアンリの様子は変化する事は無く、蝙蝠の姿だとしても分かる程自身を責めているのだろうと感じさせる程、表情に明るさは無く暗くなっている。

俺の言葉に少し間を置いてから小さな声で、はいと一応の返事をしてくれているのだが、あまり伝わってはいない様だ。

俺はそんなアンリに、


「…アンリ、お前が俺の指示に対してそれ以上の成果を残しているのを俺はしっかりと評価をしているつもりだ。アンリが今回の事を失態と感じているのなら、この程度の失態でアンリの今までの功績を帳消しになるとは思っていない。それにアンリ、お前は俺の家族であると共に配下の者でもある。配下の責任は、上の立場である俺の責任でもある。故に、お前1人で全てを背負おうとするんじゃない。もしもアンリが今回の件を、俺の言葉でどうする事も出来ない程の失態と感じているのなら、その失態は俺にも責任がある。だから、その責任を挽回する為にも俺と共に考えてはくれないか?」


そう声を掛ける。

すると、蝙蝠の姿をしているアンリは一度人型の姿へと変化させると、


「…ありがとうございます、ヴァルダ様。僕の為に、これからどうすれば良いのか、一緒に考えてはくれないでしょうか?」


アンリは地に膝を付けて、頭を垂れて俺にそうお願いをしてくる。

その言葉に俺は、


「あぁ。今回の責任は俺達にある。一緒に挽回しようじゃないか」


少しでもアンリの心の重荷が晴れてくれれば良いなと思いながらそう答える。

それからアンリは、もう一度空へと戻る事を俺に伝えた後、蝙蝠の姿へ変化させて空の監視へと戻って行った。

流石に、監視はもう必要無いのではないかと思ったのだが、1人で冷静に考えたり悩んだりする時間が必要だろうと考え、俺は空に飛び立つアンリを引き留めずに見送る事にした。

そうしてアンリとは一度分かれて再度集会場へと歩いていると、


「………相変わらず、よく人が少ない所で会うな」


薄々思っていた事ではあったのだが、彼はあえて人が少ない場所を選んで接触してきているのだろうか?

俺はそう思いながら、俺の事を見ている青年アラトを眺める。

ラフな格好をしており、俺の事を見てくる表情は少しだけ俺を馬鹿にした様な表情である。

嘲笑っているその表情に、俺は騎士の事で何か言いたい事があるのだろうと思っていると、


「…大見得切った割には、大した事無かったな」


アラトが俺にそう言ってくる。

その言葉に俺は、


「そうだな、まさか殺されるとは思っていなかった。この失態は俺の責任だ」


そう返答を返す。

ここにアンリがいたら、彼の言葉にもっと傷ついていたかもしれない。

そう考えると、アンリの事を引き留めないで良かったと安堵する。

俺がそう思っていると、


「これで、センジンも目が覚めると良いんだがな」


アラトはそう言ってクスクスと、普段の不機嫌そうな表情とは全然違う笑みを浮かべながらそう言ってくる。

その笑みが、俺を馬鹿にしている事は言うまでもないだろう。

どうやら、そこまで俺の事が嫌いな様だ。

俺はそう思い、


「センジンさんが今回の件でどの様な判断をするのかは分かりませんが、おそらく貴方の考えている様には簡単にはいかないと思いますけどね」


少しだけ挑発をする様な事を言う。

その言葉に気分を害したのか、アラトは馬鹿にしている様な笑みから一気に怒りの表情へと変化させる。


「…お前に、何が分かるんだ…?」


彼の言葉を聞いた俺は少し考える素振りをして、


「貴方に比べれば、俺は彼と会ってから間もないです。それでも、彼は俺の仲間のお孫さん。センジンさんだけで無く、センジンさんが尊敬している彼のお爺さんの事も俺は信用しているんですよ。あの人なら、そしてあの人の家族なら、大丈夫だと」


心の中にある、センジンさんと戦鬼さんに対する信頼を彼に話す。

その言葉を聞いてアラトは、


「…テメェ」


更に怒りが増した、腹の底から出しているのかと思わせる低い声を出して帯刀している、腰に下がっている剣に手を伸ばした瞬間、


「ハァ、ハァ…。アァ゛?何やってるんだお前ら?」


背後から激しい呼吸音が聞こえてきて、後ろに振り向く。

そこには夜から、正確には大した睡眠も出来ていない中一晩中走り回ったりしていた、今俺とアラトが話をしていた男本人であるセンジンさんが、上半身裸で膝に手を置いて疲れている様子を見せながら呼吸を整えていた。

どうやら、センジンさんはずっと走り回っていたりしていた様だな。

センジンさんの様子を見てそう思っていると、


「…なぁセンジン、今回の件でこいつ等が大した連中じゃない事は分かっただろう?こんな使えない奴らと協力する必要なんか無いんじゃないか?」


アラトがセンジンさんにそう言う。

その言葉を、息を整えながら聞いているセンジンさん。

やはり、アラトは俺とセンジンさんを協力させる事に否定的なんだな。

俺がそう思っていると、


「…ヴァルダ達が、自分達に関係が無いジーグの為に動いてくれてるんだ。ヴァルダ達から手を引くと言われるなら、それは仕方が無いと思っているが、俺達から協力関係を切る事はありえない」


センジンさんは息を整えて、アラトの意見を正面から否定する。

それを聞いたアラトは、やはり怒りを宿した瞳で俺とセンジンさんの事を見た後、


「………勝手にしろ」


怒りが態度に出ているのか、体を大きく動かして振り返って森の奥へと消えていった。


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