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423頁

深夜でのセンジンさんとの会話の後、俺達は集会場へと戻って竜人族の皆と共に眠りについた。

眠りについてから少しすると、


「ヴァルダ様っ!起きて下さい!」


集会場の外から、まだ寝始めてからあまり時間が経っていないと思われる時間にアンリの切迫した声が聞こえて俺は意識を強制的に眠りから覚ますと、俺は起き上がって慌てて集会場の外へと飛び出す。

そこには、申し訳無さそうな表情と共に焦っている様な様子のアンリがいた。


「どうしたアンリ、何かあったのか?」


アンリの慌てた様に俺は、彼の身に何かあったのかと思ってそう質問をすると、アンリは俺に勢いよく頭を下げると、


「支配下に置いていた騎士の人達が、何者かに殺されていましたッ!全員ですッ!」


アンリはそう言ってくる。

彼のその報告を聞いた俺は、即座に騎士達を殺したのが剣聖である事を察し、もしもアンリの影響で情報を操作しているのが剣聖に知られたとするのなら、剣聖は情報を訂正する為に帝都に戻るつもりである事を理解する。

そして、支配下に置いている騎士達が死んだ事をアンリが今知ったとなると、剣聖は船を使ってか、それとも何か他の方法でジーグを出国すると考え、


「アンリ!アンリはスキルを使って分裂し、空の様子を探れ!俺は港の方に向かう!」


俺が即座にアンリにそう指示を出すと、


「は、はいッ!!」


アンリはスキルを使って分裂と同時に姿を変化させて蝙蝠の姿になり、空へと飛んで行く。

俺もすぐに港に向かおうと走り出そうとすると、


「俺も皆を集めて辺りを調べる」


後ろからセンジンさんの真剣な声が聞こえてきて、どうやら俺とアンリの会話が聞こえていた様だ。

俺はセンジンさんの言葉を聞き、


「お願いします。…ここはエルヴァンに任せますので、センジンさんは先へ行ってください」


俺がそう言うと、センジンさんは返事ではなく頷いて駆け出した。

センジンさんが駆け出すと共に、俺は本の中の世界(ワールドブック)を開いて、


召喚(サモン)、エルヴァン」


エルヴァンを呼び出すと、エルヴァンが黒い靄から出てくる。


「どうかなさいましたか、ヴァルダ様?」


エルヴァンの問いを聞き、


「アンリが支配下に置いていた騎士達が殺された。俺とアンリ、それとセンジンさんが辺りの確認をしてくる間、集会場の護衛を任せる。怪しい人物が近づいてきた場合、殺す事も許可する」


俺は簡潔にエルヴァンに状況の説明をして指示を出す。

その言葉に、


「承知しました」


エルヴァンは緊急事態である事を察してくれたのだろう、すぐに俺の事を送り出してくれる。

俺は頼んだぞとエルヴァンに伝えてから、集会場を後にして港へ急ぐ。

エルヴァンであれば、もし俺の予想に反して帝都にすぐに戻る事をせずに、より正確に多くの情報を得ようとした剣聖が集会場へ訪れても、竜人族の安全は保障される。

いくら帝都の最強の剣聖だとしても、塔で最強と言っても過言では無いエルヴァンには勝てないだろう。

俺はそう思いつつ、皆とまでの道を走り続ける。

辺りは暗く、正直に言えばあまり周囲の確認が出来てはいない。

人影も近づかなければ分からないだろうし、今は出来る限り怪しい人物を片っ端から潰していくしかないな。

俺はそう思い、気配察知スキルを発動しておく。

そうしてジーグの町の建物内にある気配の反応は無視しつつ港まで辿り着くと、俺は辺りの様子を窺う。

まるで奈落の様に、真っ黒な海と水平線。

どんなに視線を彷徨わせても、異物を見つける事は出来ずに気配察知スキルも海上の方には反応が無い。

俺に気がついて、近くの民家に隠れた訳では無さそうだな。

俺は辺りから感じ取れる気配を確認しつつそう考え、しかし下手に移動する事も出来ずにどうしようかと考える。

やがて、センジンさんが声を掛けた人達が辺りの民家から仲間を連れてどんどん索敵範囲を広めていく。

しかし多くの人数を要しても、剣聖らしき怪しい人物を見つける事は出来ずにどんどん時間だけが経過していく。

やがて、陽が昇って暗闇が僅かに明るんでくると、


「………ヴァルダ、殺された奴らの様子を見てきた」


色々と駆け回ってくれていたセンジンさんが、港で待機していた俺の元までやって来て声を掛けてきた。

彼の言葉を聞いて、


「…どうでしたか、何か犯人に繋がるモノはありましたか?」


俺はそう質問をすると、センジンさんは瞳を閉じて首を左右に振るう。

流石に、剣聖もそこまで雑ではなかったか。

俺がそう思っていると、


「ここは俺が見張っておく。………と言っても、もう時間が経過し過ぎちまってる。無駄だとは思うけどな」


センジンさんは悔しそうな表情をしつつ、苦笑いを俺に向けてそう言ってくる。

俺は彼の言葉に、


「力になれず、申し訳無い。剣聖の正体を明かすチャンスだったというのに…」


そう謝罪をすると、俺の言葉を聞いた彼は、


「謝る必要なんてねぇさ。剣聖の方が、俺達よりも一枚上手だったって言う事だろう」


気にする事では無いと、励ましの言葉を掛けてくれる。

彼の言葉にお礼を言い、俺はセンジンさんから聞いた場所へと向かう。

まず向かった先は、港に端の方にある民家。

中へ入ると、そこには血塗られた床や壁が視界に入る。

そしてその民家の主である、漁師の格好で変装をしていたであろう男性が無残な姿で息絶えている。

見ると、手に剣を握っている事が分かる。

抵抗したのだろうか?

…これについては、アンリに後で彼らにそういう指示を出したのか聞いてみないといけないな。

俺はそう思いながら、苦悶の表情で倒れている遺体を観察する。

浅い、剣での切り傷。

まるで、遊ばれていたかの様に体中に浅く切り傷が入っており、そこから血が滲んでいるのが見える。

そして最後に腹から一刀両断って感じか。

俺はそう思いながら、2つに分かれている胴体を眺める。

実力の差は歴然、拷問という感じでもなさそうだな。

剣聖は異様に戦う事で相手を痛めつける事に執着している様な話を聞いたが、これがそういう事なのだろうか?

俺はそう思いながら、死体を見ても俺には剣聖の正体を明かす事は出来なさそうだなと早々に諦めると、一度竜人族の人達を安心させる為に集会場へと戻る為に民家を後にした。


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