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食料を運び終えた俺は、エルヴァンとバルドゥを塔に戻した後集会場の中へと入る。

中は木造であり、木の匂いを感じると同時に運んできた食料の匂いも感じる…。

集会場の中にいた竜人族の皆は、長旅で空腹なのだろう。

見た事が無い食料を興味深そうに見ては、匂いを嗅いだりしている。

今更ではあるが霊峰にいた時彼らは肉しか食べていないイメージがあるのだが、他の食材を食べる機会はあったのだろうか?

それとも単純に、肉しか食べないのだろうか?

環境的には、肉の方が狩り的な意味では獲り易かっただろうし。

俺がそう思っている間に、センジンさんが竜人族の皆の元まで行くと不思議そうにしている人達に、食材の名前を教えておすすめの食べ方を教えている。

しかし、肉を焼いて食べるだけの竜人族の皆にはいまいちピンと来ていない様子に、センジンさんは少し唖然としながら、普段どの様な食事をしているのか質問をしている。

センジンさんの質問に、特に気にした様子も無く素直に肉しか食べていなかったと告げる竜人族の人達。

彼らの言葉に、センジンさんは凄く驚いた様子をした後、焼く以外の食材の調理法があると伝えて、自身もあまり自信は無いがお手本を見せると言うと、集会場の奥へと進んで行ってしまった。

センジンさんが少しして集会場から戻って来ると、手には包丁などの調理に必要な物を持ってくる。

集会場の奥に、そんな物が置いてあるなんてな。

俺がそう疑問に思っていると、俺の疑問を察したのだろうセンジンさんが笑って、


「集会場に集まる時は、だいたい話が長くなるかそのまま宴会になってたからな。奥には簡単な道具ならあるんだ」


俺にそう説明をしてくる。

なるほど、話し込んでしまうから食事も取れる様にしてあると。

そして話し合いが終わったら、そのまま宴会になっていた事も何回もあったんだろう。

俺はセンジンさんの言葉に納得し、俺は少し不安そうな表情をしている竜人族の人達に、


「肉だけしか食べれないなら、無理にとは言いませんけど。ジーグの料理は美味しいので、一度食べて見てください」


そう伝える。

そうして、センジンさんによる大胆な男の料理が開始され、少々不安ながらも夕食になったのだった。

ユキさんの健康に気を遣った優しい料理とは違い、簡略的により美味しく、健康など度外視した男料理に竜人族の人達は気に入った様子ではあった。

元々、肉を豪快に焼いて食べていた故に、こういった料理の方が性に合っているのかもしれないな。

俺はそう思いながらもセンジンさんの料理を堪能し、それからはセンジンさんによる戦鬼さんやジーグを築いてきた先代達の話しや、それに追いつくためのセンジンさんの意気込みなどを話していた。

竜人族の人達は、その話を興味深そうに聞いており、どの様に感じているのかは謎ではあったが楽しそうに話を聞いていた。

おとぎ話を聞く子供、そう言った表現が似合っている姿ではあった。

そんな感じで夜は更けていき、竜人族の人達と俺、そしてセンジンさんは集会場で寝る事になった。

竜人族は家族で、または友人と並んで眠っている。

その様子を眺めていると、


「…ヴァルダ、少し良いか?」


センジンさんが近づいて来て小さな声でそう声を掛けてくる。

俺は長旅で疲れている竜人族の皆を起こさない様に頷くだけで返事をすると、外に出て行く彼の後を付いて集会場の外へと出る。

外へと出ると、辺りは真っ暗であり目を凝らしても人の姿は目前まで来ないと分からないだろうと考える。

フランメさんの炎が、この辺からは筒がないから送られてこないのか。

俺がそう考えていると、


「…竜人族の皆、良い奴らだな。俺なんかの、ジーグのガキ共じゃつまらないって言う話も、あんなにワクワクした顔で聞いてくれる」


暗闇の中で、センジンさんの穏やかな声が聞こえてくる。

その言葉に俺は、センジンさんからは見えないとは思うが頷きながら、


「そうですね。皆さん霊峰という限られた場所や、狩りを行うだけの遠出程度しか世界を知らないと思います。そんな彼らが、自分達の住まいを離れて様々なモノを見ている。好奇心旺盛になるのも、仕方が無いと思いますよ」


そう答えると、少しの静寂が辺りを支配する。

そして、


「………良いのか、俺達の反乱に彼らを巻き込んじまっても…」


視界が暗闇で覆われているが故に、聞き取る事が出来たくらい小さな声でセンジンさんがそう言った。

普段の彼ならあまり言わない様な弱音とも受け取れる、竜人族の人達を想った言葉が聞こえた。

その言葉に俺は、


「…正直、その答えは俺にも出せません。俺は亜人族を保護したり、助ける事をしています。ですが、それは虐げられてきた亜人族の人達が助けて欲しいとお願いをしてきたからです。俺は、自分の考えを押し付けてまで、亜人族を保護しません。彼らの本意に沿う様に行動しています。でなければ、俺は結局亜人族を虐げてきた人族と同じになると思っているからです。故に俺は、話をするにはしますが意思を尊重する事にしています。そして彼らは、ジーグの反乱に協力すると言ってくれました。…なら俺は、その意思を尊重するだけです」


自分の意見を交えながらそう答える。

俺の言葉を聞いたセンジンさんは、


「………こう改めて考えると、俺も丸くなった様な気がするな。今までだったら、戦力になるような奴らだったら力ずくで話をしていた可能性だって十分にあったのに、今じゃ本当に反乱に協力させて良いのかとか考えちまう」


少しだけ、自分の事を情けなくなったと馬鹿にした様な声色と言葉を放つ。

その言葉に俺は、


「それこそが、ジーグや他の亜人族を纏める上の立場として重要になってくるんじゃないですか?ただ力があれば良いって訳では無いと、俺は思います。………戦鬼さんも、そうだったでしょう?」


彼の困惑に似た感情に、俺もセンジンさんを見習おうと自身の考えを今一度再確認しつつそうアドバイスと確認をすると、俺の言葉を聞いたセンジンさんは、


「目指すべき相手が高過ぎんだよ…。もっと、爺さんも手を抜いてくれれば良かったのによ…」


文句にも聞こえる言葉を放つが、それが悪意あるものでは無いと誰でも理解出来る程、彼は優しい声を出していた。


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