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準備と言っても、楽しそうにしているアレンカ・ジェネフ・ダフネに声を掛けて魔法を解く事をお願いしつつ、彼らに伝えたい事を言って貰うだけなのだ。

俺はさっきと同じ様に、アレンカ・ジェネフ・ダフネの後ろ辺りに隠れて様子を窺うとしよう。

…それにしても、いくら自分達の敵わない相手だとしても責任などを押し付け合って対処もしようとしないなんて、騎士の人達は随分と連携とか色々と問題がありそうだな。

騎士団と言っても、彼らは城などを護っている騎士達なのだろう。

レオノーラが育てた騎士の人達だったら、責任などを押し付け合う事はせずに冷静に状況を把握して、力を合わせて撤退の時間稼ぎなどをすると思う。

エメリッツの配下の者だと考えると、貴族出身故に横暴な態度というか、冒険者関係無く協力者を馬鹿にしている様な態度は後々痛い目を見るだろうし、現に今も土の壁の中でまだギャアギャア騒いでいる。

ジーグの反乱は、帝都を守護する騎士達よりも周辺諸国からの騎士や冒険者、魔法使いの存在を警戒した方が良いかもしれないな。

正直、エルヴァンとして帝都の城に入った時も感じたが、城を護っている騎士達は大した戦力では無い。

俺がそう思っていると、アレンカ・ジェネフ・ダフネが魔法を解除して土の壁を破壊する。

先程まで繰り広げられていた偵察隊の仲間割れの罵詈雑言が掻き消え、大きな土の壁が壊れて崩れる音が辺りを支配する。

やがて、全ての土の壁が辺りに散乱すると、捕まっていた偵察隊の者達が姿を現す。

剣を抜刀してはいるが、おそらくアレンカ・ジェネフ・ダフネに挑むつもりでは無く、誰が毒液に腕を入れるかの末に実力行使に出たのだろう。

しかし、自分達を囲んでいた土の壁が無くなった事に呆然としている様子に、もしかしたらもう少しで決着が着いていたのかもしれないな。

俺がそう思っていると、


「何だかつまらないわ。散々苦痛に歪む表情を見たかったのに、途中からただの喧嘩になって…。もっと憎悪とか執着とか、ヒトの醜い姿が見たかったですのに…。つまらなくて、今すぐに貴方達の記憶を覗いて、ここへ来た理由を知って、その原因を根絶させてもよろしいのですよ?」

「どうして欲しいですか?私的には、ここにヒト如きの血の匂いを滲み込ませたくないのです。ここは新しく見つけた安眠の地。貴方達がどういうつもりでここへ来たのかは分かりませんが、ここへもう二度と来ないのなら、今日は見逃してあげてもよろしいですよ?私はとても苦悩しています。血が出ない様に消滅させるか、少しだけ、本当に少しだけ楽しませてくれたお礼に命を助けようか…」

「死にたい?1人で死ぬか、ここにいる皆と死ぬか。…それとも、全てと共に死ぬ?」


アレンカ・ジェネフ・ダフネが、俺の伝えた通りの質問を偵察隊の者達にし始める。

すると、今までの絶望的な状況から一転して、命が助かるかもしれない提案に偵察隊の者達は、


「し、死にたくないッ!すぐにここから出て行くッ!だから助けてくれッ!」

「今すぐに帰りますッ!だからどうか、どうか命だけはッ!」

「こ、ここはあんたの住処にしてくれて構わないッ!俺達からも上にはそう報告しておくッ!もう二度とここに立ち入る奴らが出ない様に、しっかりとあんたの存在と力を証明してみせるッ!」

「助けてくださいッ!助けてくださいッ!」


一応聞き取れる範囲で命乞いをしている。

しかしあまりにも全員で一斉に話している所為で、聞き取りにくい言葉の方が多いな。

俺がそう思っていると、


「…わーわー五月蠅いわね。やっぱり苦痛の果てに殺してしまおうかしら?」

「一斉に話さないで下さい。ワイバーン如きが縄張りを主張している様でイライラしてきます。苦悩していた私が馬鹿みたいに感じます。今すぐにでも、その五月蠅い声を止めてあげてもよろしいのですよ?」

「死ねば、静かになる?」


やはり偵察隊の命乞いは耳障りだった様で、アレンカ・ジェネフ・ダフネは少し機嫌が斜めになりつつそう言う。

…一応、俺の意見通り対等に話をする事も出来ない、自分達の生殺の権利を持っているのはアレンカ・ジェネフ・ダフネの方だと思わせる事を言っている。

…本気で不機嫌な感じ、少し心配ではあるが…。

俺がそう心配していると、アレンカ・ジェネフ・ダフネの言葉を聞いた偵察隊の者達がピタリと声を発するのを止める。

今彼らは、おそらく目の前に立っているアレンカ・ジェネフ・ダフネの次の言葉に恐怖を感じているだろう。

おそらく次の言葉で、自分達の生死が決まるのだから。

俺がそう推測していると、


「…ハァ、もう良いですわ。今日は私の機嫌が良い方ですので、苦痛をこれ以上は与えません。感謝しなさい、声は出さないで」

「苦悩したけど、もう飽きてしまいました。面倒ですので、早々に帰ってくれれば許してあげましょう」

「…言う事聞いたから、死なせないであげる。………でも、次は死んでね?」


アレンカ・ジェネフ・ダフネは、まるでもう興味が無いと言った様子で彼らにそう伝えると、静かなこの場所で走り去る様な足音だけが聞こえ、それもどんどん離れていくのが分かる。

どうやら、アレンカ・ジェネフ・ダフネに帰って良いと言われた瞬間に無言で走り始めたのだろう。

下手にお礼などを言って、機嫌を損ねないように。

俺はそう思いつつ、


「アレンカ・ジェネフ・ダフネ、もう1つお願いがあるんだが」


アレンカ・ジェネフ・ダフネにそう声を掛けると、今まで偵察隊がいた方を向いていた三つの頭が俺の事を見てくる。

そんな彼女に、


「翼、広げて一鳴きしてみて」


俺がそうお願いをすると、少し不思議そうな顔をしつつ翼を大きく広げる。

アジ・ダハーカの特徴を生かしつつ、


「ガア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛!!」


更に追い打ちをする様な威圧をする。

先程まで青かった空はアレンカ・ジェネフ・ダフネの翼の漆黒に遮られ、彼女の咆哮が辺り一帯に轟いた。

アジ・ダハーカの特徴、それは翼を広げれば空を覆う程の巨大である事。

翼によって辺りは一気に暗く染まり、更にアレンカ・ジェネフ・ダフネの咆哮が背後から聞こえてくる。

その圧倒的な存在の差に、偵察隊を更に恐怖に陥らせる事が出来ただろう。

僅かに聞こえてきた男共の絶叫に、俺は満足してアレンカ・ジェネフ・ダフネにお礼を言った。


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