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翌朝、俺は少しだけ体に掛かる重みを感じて意識を覚醒させる。
視線を少しだけずらして、重みの正体を確かめようとすると…。
そこにいたのは、
「シェーファ、セシリアもいつの間に…」
俺に寄り添う形で、少しだけ体を俺に預ける様な形で寝ているシェーファとセシリアが視界に入り、俺はいつの間に、しかもいくら寝ている俺でもに気づかない程静かに入って来たのだろうかと考えつつ、俺は2人を起こさない様に静かにゆっくりとベッドから脱出する。
その際に、スゥも一緒にベッドから出てきた姿を見て、この子もいつの間にベッドに入って来たんだと疑問に思いながら、俺はスゥにおはようと朝の挨拶をする。
俺の挨拶を聞いたスゥも、俺に挨拶をする様にプルプルと小刻みに揺れた後に大きめに体を揺さぶって反応を俺に見せてくる。
俺とスゥが起きてベッドから出ても起きない様子のシェーファとセシリアを見て、相当疲れていたのだろうと考えて起こさない様に支度を始める。
装備を着ける際に、スゥが俺の着替えを見ている姿が面白く、俺はスゥを見て笑いながら、スゥと遊ぶように悪戯などをしながら着替えを終える。
そして、
「行ってくるな。シェーファとセシリアによろしく伝えておいてくれ」
「♪」
俺は全ての準備を終えて、スゥにそうお願いをしてから外の世界へと戻った。
センジンさんの屋敷に戻って来ると、やはりと言うか朝からエルヴァンとバルドゥ、そして屋敷の主のセンジンさんの声が聞こえてくる。
それと同時に、何かを振るう様な風を斬る音が聞こえる。
エルヴァンとバルドゥがいるから予想は出来てはいたが、いくらセンジンさんの屋敷が広い方だとしても近所迷惑になったりしないだろうかと心配しつつ、朝から頑張っている3人の元に顔を出す事にした。
3人との挨拶を終え、俺は今日から少しだけ大陸の方に戻る事を伝えると、
「分かりました、お気をつけて」
「エルヴァン様と共に、ヴァルダ様から授けて頂いた任を遂行したいと思います」
「エルヴァンとバルドゥがいれば、こっちも何とかなるからな。そっちの方は、ヴァルダに任せるぜ」
3人共それぞれ違う返答をしてきて、それが3人の性格を表している様に感じる。
特にバルドゥの真面目な感じが、特に感じさせる言葉だった。
そうして3人に朝の挨拶を終えた後、俺は今日は先に出る事を伝えてからセンジンさんの屋敷を後にしてアンリを探す事にする。
一度大陸の方に戻るのに、一回も伝えないのはアンリを混乱させかねない。
俺はそう考えつつ、アンリが隠密活動をしている宿屋へ辿り着き、アンジェの指輪を装備してからコソコソと見つからない様に侵入して、アンリの借りているはずの部屋の扉をノックする。
少しして警戒した様子で扉が僅かに開けられると、扉の隙間からアンリが扉の外の様子を伺う様に覗き込んでくる姿が見える。
その瞬間、俺はアンジェの指輪を外して姿を現すと、
「っ!お、お入り下さいヴァルダ様」
突然現れた俺に驚きつつも、即座に反応して部屋へと促してくれるアンリ。
その対応の速さに俺は感心しつつ、
「失礼する」
そう伝えてからアンリの部屋の中へと急いで入る。
俺が部屋へと入ると、アンリも俺の動きに合わせてすぐに扉を閉めてくれた。
そんなアンリに、
「おはようアンリ、すまないな突然朝早くから押しかけてしまって」
俺はそう挨拶と謝罪をする。
「い、いえ!おはようございますヴァルダ様、どうしたのですか?」
俺の挨拶と謝罪を聞いたアンリは、俺が突然やって来た事に疑問を感じたのだろう質問をしてくる。
アンリの問いを聞いた俺は、
「少しの間、帝都のある大陸の方に戻る事となる可能性があってな。あまり長居をするつもりは無いが、アンリにも話はしておかないとと思ってな。アンリを通して、狭間の町の人達にも伝えておいて貰えると助かる」
アンリの問いに対して、俺がこれから行く場所の説明とそれに関する情報の共有をしたかった事を伝えると、
「分かりました。狭間の町の人達には、僕の方からお伝えしておきます」
アンリは頷いて俺にそう言ってくれる。
「よろしく頼む。向こうでの事が終わり次第、すぐに帰って来るつもりでいる」
「はい、ヴァルダ様、お気をつけて」
俺の言葉を聞いたアンリが、エルヴァンと同じように俺の事を気遣った言葉を伝えてくれる。
「ありがとう、アンリもあまり無理はしなくて良いぞ。休める時は十分に休んでくれ」
俺の言葉を聞いたアンリは、俺に感謝の言葉を言ってくる。
それを聞いた俺はアンリの部屋を、またアンジェの指輪を付けて姿を消してから出発した。
アンリの部屋からまたコソコソと外へと出て、そのまま人がいないであろう森まで歩み進めて、辺りに人がいない事を確認してからアンジェの指輪を外し、本の中の世界を開いてカルラを召喚する。
朝早くに申し訳無いとカルラに謝罪をすると、カルラは俺の謝罪の言葉に対して気にしていないと言いたい様に力強い羽ばたきを見せつけてくれる。
そんなカルラに、俺はお礼の言った後彼女の背中に乗って空へと飛び立った。
カルラの背中に乗り、ジーグを後にして海を上を颯爽と飛んで行くと、水平線よりも少し手前の方に何かが視界に入り、俺は視線をそちらに向けて集中する。
そこには、セイレーンなどのモンスターが水面に出ている岩場で休んでいるのか、岩場の周囲を飛んでいる者や岩場に座ったり横たわっている輪郭がやや見える。
しかし向こうは俺とカルラに気づいている様子は無く、特に争う必要も無い事でもあると判断してそのまま俺はそんな光景を眺めていた。
やがて、岩場にいたセイレーン達が見えなくなり、海の水面だけが辺りの景色へと変わると、俺はカルラの背中に乗っているだけであるが故に手持ち無沙汰を感じ、今俺を背中に乗せて頑張ってくれているカルラに少しでも感謝の気持ちを伝えようと、彼女の背中や翼の付け根、頭などを出来る限り優しく撫でまわし始める。
その瞬間、今まで颯爽と飛んでいたカルラの様子が乱れて少しだけスピードがゆっくりとなり、安定感も少しだけ悪くなった様な気がする。
俺はそんなカルラを心配して、むしろ飛んでいる邪魔をしてしまったのではないかと手を引っ込めると、
「ピィィィィッッ!!」
むしろ反対に、怒っている様な甲高い鳴き声を出されてしまい、俺は今度は触る場所や撫でても構わない場所を聞きながら撫でる事にした。
そうしてカルラとの僅かな時間を過ごした後、水平線に大陸が見えてきたのだった。
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