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セシリアの言葉を聞いた俺は、
「すまないがセシリアには1つお願いしたい事があるんだ。レオノーラとルミルフルに、俺個人の都合でジーグの亜人族達の鍛練を少しの間休みにして欲しいんだと伝えて貰えないだろうか?そして、2人から何か意見などが言われたら、それを俺に伝えに来て欲しい」
レオノーラとルミルフルの事をお願いする。
俺のお願いを聞いたセシリアは頷き、
「分かりました、ではレオノーラさんとルミルフルさんにお伝えしに行って参ります」
俺に頭を下げてから、彼女はスゥーッと姿を消した。
セシリアの事を見送った俺は、
「ではシェーファ、行こうか」
隣で身だしなみを更に整えているシェーファにそう言うと、
「はい、ヴァルダ様」
俺の事を真っ直ぐ見てきてそう返事をしてくる。
…さっきまでの様子と違うのは、友人でも家族でもあるセシリアだからこそ見せていた素なのかもしれないな。
普段キッチリとしているシェーファが、気を抜いて話が出来る者がいる事に安堵しつつも、その相手が俺では無い事に少しだけ寂しい気持ちと、もっと頼られる様な存在にならないといけないなと反省をする。
シェーファと共に塔の廊下を歩き、
「最近、シェーファとの時間を取れていない事をセシリアに指摘されたんだ。すまないな、シェーファ」
俺は素直にセシリアに指摘されてしまった事を、シェーファに伝えて謝罪をする。
俺の謝罪を聞いたシェーファは、
「い、いえそんなッ!ヴァルダ様が謝る事などではありませんッ!」
慌てた様子で俺の言葉を否定してくれる。
しかし今の彼女の言葉が、俺を気遣った彼女自身の心を押し込めた言葉だという事を理解している。
そんなシェーファに対して、
「いや、本来なら俺が真っ先に気付くべきだったんだ。しかしそんな事は一切考えず、セシリアに指摘をされて初めてシェーファも含め、皆との時間を過ごしていない事に気がついた。駄目な主で申し訳無い。シェーファの気遣いは嬉しく思う、シェーファが俺の事を気遣いサポートをしてくれるお陰で、俺は何の心配もせずに塔を空ける事が出来る。しかし、そんな大事なシェーファに甘えすぎていた。もっと、シェーファやセシリアに甘えて任せるだけでは無く、俺もシェーファやセシリアの事を任せてもらえる様な主にならなければな」
俺は謝罪と感謝を、素の彼女を見て思った俺の反省と改善しなければいけない事を彼女に伝える。
俺の言葉を聞いたシェーファは、
「私はヴァルダ様の創り上げたこの塔が好きです。最近はより様々な者達が移住をしており、賑やかになり慌ただしくも充実していると感じています。ですので、ヴァルダ様がそこまで気持ちを悔やむ事はありません。私は私で、ヴァルダ様のお手伝いが出来ている事を誇りに思っています。それに、私はヴァルダ様に結構甘えています。これ以上は、流石に私も恥ずかしいと言いますか、ヴァルダ様には自分で思う一番良い私でいたいと思っているのです」
そう伝えてきた。
シェーファの言葉を聞いた俺は、
「そうか。なら、互いに尊重し合いこれからも助け合っていこう。ただ、もう少し俺はシェーファとの時間や、他の者達にもそうだが触れ合う時間は取れる様にしよう。今日は、シェーファとの時間を大切にしたいと思っている」
シェーファにそう伝えると、俺の言葉を聞いたシェーファは微笑みを俺に向け、
「はい、お言葉に甘えさせていただきます」
そう言ってくれた。
そうして俺とシェーファを連れて自室へと戻り、彼女と塔に来たエルフの方達との交流などについて話を聞いたり、俺も外の世界で交流した妖精の国の話や、狭間の町の人達について談笑をした。
狭間の町の人達の話をした時は、少しだけシェーファの機嫌というか雰囲気が冷たくなったのだが、彼女の発した、
「ヴァルダ様、塔の主として軽率な行動や言動は慎んでくださいね?」
その言葉に、俺ははいと素直に返事をするしかなかった。
明らかにシェーファが、怒っている様な様子は分かったのだから。
そうして俺とシェーファが話をしていると、言伝を頼んだセシリアが部屋へとやって来て、レオノーラとルミルフルに俺の伝言を伝えてくれたと報告をしてくれた。
その際に、レオノーラとルミルフルは一緒にいたらしく、
「では、鍛練が出来ない間は彼女と共に剣の素振りや、模擬戦を手伝ってもらおうか。怠けている騎士達の良い練習にもなるだろうし、それでどうだろうか?」
「良いわね。私も大人数を相手にした動きを確かめたいと思っていたのよ。あんたの騎士達の腕も一緒に見てあげるわ」
「望むところだ。私が育て上げた者達の実力、見せつけてやる」
2人は不敵な笑みを互いに向けて、そんな会話をしていたようだ…。
疑似的に、帝都騎士団団長と魔王の娘の戦いが再戦されようとしているのだが、あまり本気というか熱が入って力が入り過ぎない様にして貰わないと…。
俺はそう考えながら苦笑してセシリアにお礼を伝えると、彼女は一礼して部屋から出て行こうとしたのだが、そんな彼女をシェーファが引き留めていつも通りの3人での談笑になった。
そうして夜も深くなり、十分にシェーファとの時間も取れて、途中からセシリアとも話が出来た事に満足して就寝する事になり、シェーファとセシリアは俺の部屋を後にした。
少しだけシェーファが名残惜しそうにしていたが、流石にこれ以上は申し訳無いと思ったのかおやすみなさいと挨拶をして部屋を出て行った。
甘えても良いと言ったのだが、流石に一緒に寝るかとは聞ける訳にはいかない故に、俺も何も言う事が出来ずに見送る事になってしまった。
シェーファとセシリアが部屋を去った後、俺は明日の事を考えながら浴場へと向かい湯船にゆっくりと浸かって、森を何時間も歩き続けた疲れを湯に溶かした後風呂から出て部屋へと戻り、俺はすぐにベッドの中に入る。
ベッドの中に入って少しして、睡魔がやってくるのを感じると俺は睡魔に身を委ねて意識を手放した。
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