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お風呂でしっかりと今日の汚れと疲れを洗い流した俺とセンジンさんは、浴場を後にして部屋に戻る。
そこにはユキさんが食事の支度をしてくれており、俺とセンジンさん、そしてユキさんは一緒に食事をする事になった。
3人での食事を終えると、俺は先に借りている部屋へと戻る。
センジンさんとユキさんは、何やら話し合いらしきものをするらしく互いに真剣な表情をしているのが気になりはしたが、それでも俺が口を挟む事では無いだろうと考えて先に戻ったのだった。
部屋に戻ってきた俺は、とりあえずセンジンさん達には今日はこれ以上呼ばれる事は無いだろうと考えて、塔に戻るこ事にして本の中の世界を開いて塔へと戻って眠る事にした。
塔へと戻った俺は、すぐに自室の大きなベッドに入ると、そのまますぐに睡魔が襲って来て意識を手放した。
翌朝早朝、昨夜の就寝時間が速かった故に起きるのも早い時間になってしまった所為か、目を覚ました瞬間から意識がハッキリとしていて、冴えている様な感覚になっている。
さて、準備を始めないとな。
俺はそう思うと、装備を着け始める。
すると、
コンコンコン
「ヴァルダ様、おはようございます」
自室の扉がノックされ、扉の向こうからセシリアの声が聞こえてきた。
「おはようセシリア、すまないが今着替えているんだ。ちょっとだけ待っていてくれ」
「分かりました」
俺の言葉を聞いたセシリアがそう返事をしたのを聞いて、俺はすぐに装備を着けてノックをされた扉を開けると、
「おはようございます。昨夜は挨拶に行ったのですが、ヴァルダ様は既に就寝しているご様子だったので、今日は早めに挨拶に参りました」
セシリアが扉の前で胸に手を当ててお辞儀をしてそう言ってくる。
彼女のその言葉に、
「そうだったのか。すまなかった、昨夜はすぐに帰って来て寝てしまってな。セシリアが部屋に来たのも分からない程熟睡していたらしい」
俺はわざわざ挨拶に来てくれたセシリアに対して、応対出来なかった事を謝罪する。
俺の言葉を聞いたセシリアは、
「ヴァルダ様が謝罪をする事など…。それよりも、昨夜はお疲れだったのでしょうか?」
俺の謝罪の言葉を聞いて、少し心配そうに俺にそう質問をしてくる。
彼女の問いを聞いた俺は、
「あまり自分では分からなかったが、もしかしたら疲れていたのかもしれないな。だが、昨夜の睡眠で十分に休めた。問題ない。心配してくれてありがとうセシリア」
もう十分に休めた事を説明し、感謝の言葉を伝える。
俺はセシリアに感謝を伝えた後、
「俺はこれからまたすぐに外の世界に行く。何か塔での問題などはあったか?」
そう質問をすると、セシリアは何も言わずに首を振るう。
そんな様子が気になってセシリアの事を見ていると、
「…その、シェーファがヴァルダ様にお会いしたいと拗ねている状態ですので、出来れば近い内にお時間を空けて貰えると助かります」
俺の視線に耐えられなかったのか、セシリアが白状したのだが…。
まさかの、シェーファが拗ねている状態。
そう言えば、あまりシェーファとの時間を過ごしていなかったな。
セシリアとは、何かと挨拶をしに来てくれるから短くも話をしたりしているが、シェーファとはそれもあまり出来ていなかった。
俺はシェーファに申し訳なく感じつつ、
「シェーファに、今度時間を作るようにする事を伝えておいてくれ。近い内に、必ず話をするくらいの時間を作ると」
俺はセシリアにそうお願いをする。
俺の言葉を聞いたセシリアは、かしこまりましたと返事をした後、
「いってらっしゃいませヴァルダ様」
見送りの挨拶をしてくれるセシリア。
彼女の言葉に、
「あぁ。行ってくる」
俺はそう返した後、外の世界へと戻った。
センジンさんの屋敷、貸してもらっている部屋に戻って来た俺はまだ早朝という事を考えて静かに部屋を抜け出す。
すると、
「…お、良い所に」
まだ早朝だと言うのに、センジンさんと廊下で出会った。
「おはようございます」
「おはようさん、なぁヴァルダ。今から少し時間はあるか?」
突然のセンジンさんの登場に驚きつつも俺は朝の挨拶を彼にすると、センジンさんが何やら少し笑って俺にそう聞いてきた。
彼の言葉を聞いた俺は、
「え、えぇまぁ。少ししたら巨人族がいると言われている方に向かって出発するつもりでしたけど」
彼の問いに、俺は今日の予定を伝えながらそう答える。
すると、俺の言葉を聞いたセンジンさんは、
「じゃあ少し、付き合ってくれ」
壁の向こう、外の方を指差して俺にそう言ってくる。
彼の言葉を聞き、
「良いですよ」
俺は普通にそう答える。
何をするのかは知らないが、俺にとって都合が悪い事では無いだろう。
俺はそう判断して返答すると、センジンさんは笑みを浮かべて、
「外で待っていてくれ、準備して行くからよ」
俺にそう言うと、廊下を少し小走りで歩いて去って行ってしまう。
センジンさんの後ろ姿を見送った俺は、とりあえず外に出ておこうかと考えて屋敷の外に静かに出る。
まだ活気が訪れていない、静かなジーグの町並みと僅かに見える周囲の森の木々。
少しだけ潮の香りがする風、揺らぐ木々。
どこか懐かしさを感じられるそんな光景に、俺は瞳を閉じて少しだけ深呼吸をする。
すると、
「待たせたな」
後ろから声を掛けられて、俺はゆっくりと瞳を開けて背後を見ると…。
そこには、もう懐かしさなど関係無いという様子のセンジンさんが立っていた。
既に抜刀されている大剣を見て、
「えっと、これから何をするつもりなんですか?」
俺がそう質問をすると、彼は笑って、
「少しだけ、ヴァルダにも鍛練に付き合って貰おうと思ってな」
そんな事を言ってきた。
彼の発言に、今までの感じていた懐かしい空気とか穏やかな時間が終了した事を告げられた様に感じ、俺は苦笑しつつ、
「エルヴァンの様にはいきませんが、お相手させて頂きます」
センジンさんにそう伝えて、俺の言葉を聞いたセンジンさんはズカズカと歩いて先へ進み、俺はそんなセンジンさんに付いて行く事にして足を動かした。
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