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バルドゥの事をセンジンさんと共に探し始めると、意外にもすぐに見つける事が出来た。

どうやら彼は、ジーグの皆が身に付けている服装が気になって、女性の服を探していたそうだ。

理由は、草原島に住んでいる女性達に贈りたいとかそういう感じだろう。


「申し訳ありません。ヴァルダ様がお帰りになる前までには帰って来る予定だったのですが…」

「そんなに反省する事は無い。バルドゥの優しさを、怒ろうなんて思ってなどいない。むしろ、これからもそのままでいてくれ、バルドゥ」


バルドゥの反省の言葉を聞き、俺は気にしていないしむしろその優しさを持ち続けて欲しいと伝える。


「それで、欲しいと思っていた物は買えたのか?」


俺がバルドゥにそう聞くと、バルドゥは少し落ち込んだ様子で、


「それが、なかなか決める事が出来ずに未だに…」


俺の問いにそう答えた。

プレゼントを贈りたいと思った物だ、そう簡単に決められるものでは無いだろう。

俺はそう考え、


「ゆっくりと考えると良いぞ。急いでしまって、あまり良い物が買えなかったら残念だからな。当分バルドゥもここにいて貰う事になるから、暇を貰えたら店に行ってみると良い。センジンさんも、構いませんか?」


俺はバルドゥにゆっくりと吟味した方が良い事を伝え、バルドゥにそれくらいの自由な時間を過ごしても大丈夫か質問をする。

俺の言葉を聞いたセンジンさんは、


「構わないぜ、それくらいの時間は普通に俺やエルヴァン、それにルミルフルとレオノーラっていう奴もいるんだろ?それくらいの時間は作れるぜ」


俺の言葉にそう答えてくれる。

センジンさんの言葉を聞いた俺は、


「という事だ。エルヴァンとルミルフル、レオノーラには俺から話をしておく。時間に余裕が出来始めたら、バルドゥは買い物に行って大丈夫だ」


バルドゥにそう伝える。

俺の言葉を聞いたバルドゥは町中だと言うのに、


「ありがとうございます、ヴァルダ様、センジン様」


膝を地面に付けて、敬意を表する体勢になってそう言ってくる…。

俺はそんなバルドゥに、慌てて町中で人通りがあるからと言い、バルドゥを立ち上がらせて今日の所は塔に戻って貰い、俺はセンジンさんの屋敷へと一旦戻る事になった。

アンリの方はどうなっているのだろうか?

特に情報が来る訳でも無い様子から、やはり剣聖の正体やその他諸々はなかなか見つける事が出来ない様だ。

俺はそう考えていると、


「それで、ヴァルダの方はどうだったんだ?」


センジンさんが俺の方はどうだったのか聞いてくる。

そう言えば、レオノーラには彼とエルヴァンが鍛練をしている時に話をしたが、彼にはまだ妖精の国の事を説明していなかったなと思い出し、センジンさんの屋敷に向かう道中にレオノーラにした説明と同じ様に妖精の国の人達の特性や花の蜜に関する事を説明している内に、俺達はセンジンさんの屋敷に帰って来る事が出来た。

玄関へと入ると、ユキさんが出迎えてくれて服を汚した状態のセンジンさんに服を脱ぐ様に伝えて、センジンさんはユキさんの言葉に従って羽織っている服を彼女に謝罪しながら手渡す。

そうして屋敷の中へと入って、俺はセンジンさんと共に風呂へと通された。

塔の風呂に比べたら狭いのだが、それでも俺とセンジンさんが入るには十分の広さがある浴場で、俺とセンジンさんは汗や汚れを流す。

センジンさんは、ハーフと言うか人族と亜人族の混血だ。

故に、体を覆う体毛も少しだけ短く見える。

と言っても、体を覆っている体毛の感じや毛量、毛の長さは亜人族皆それぞれ違うだろうし、センジンさんが混血だからという訳でも無いのかもしれない。

センジンさんの様子を見つつ俺もセンジンさんと同様に汗を流したのだが、やはり自分の入り慣れている塔の浴場とは違い、どうしても落ち着かないな。

俺がそう思っているとセンジンさんは、


「あぁ~、体に染み渡るぜぇ~」


湯船に入ってそんな事を言っている。

…何だろう、今の言葉というか様子が戦鬼さんの姿に重なる様に感じてしまった。

………そう言えば、戦鬼さんは「UFO」時代にお酒系の飲み物を飲むとそんな事を言っていたな。

その言葉に対して、おっさん臭いですよと俺が言い返したりした事がある。

何気ない日常の会話、おそらくセンジンさんに会わなければなかなか思い出す事が出来なかった記憶だな。

俺がそう思って少しだけ苦笑していると、


「…なぁヴァルダ、俺は正しい事をしていると思うか?」


センジンさんが、湯船の壁に背を預けて天井を見ながらそんな事を聞いてきた。

それを聞いた俺は、おそらく彼は反乱を迷っているのではなく………。


「俺が、俺の意思で戦う事に、皆を巻き込んじまっている気がしてな…。………仲間を傷つけられる姿を、見たくない俺が、皆を巻き込んで傷どころの話では済まされない戦場に連れて行こうとしてるんじゃねぇかって、思っちまうんだ」


仲間を、家族とも言える人達を巻き込んでしまった事を悔いているのだろう。

俺は彼の言葉を聞いてそう思いつつ、


「…それは、貴方の仲間、家族が答えを教えてくれますよ。……俺も家族には散々迷惑を掛けてしまっている。いつか、見限られるのでは無いかと不安に思う事があります。センジンさんも、仲間達を傷つけられない様にする為に、反乱を計画し仲間を統率して率いている。それは、彼らが貴方の信条に賛同し共に自分達の仲間や家族を傷つけられない世界に変えたいと思っているからでしょう。俺も、貴方のその考えにはとても賛同する事が出来ます。帝都での亜人族達の虐げられている姿を見ました、あまりにも酷い光景でしたよ。亜人族の皆さんは、何も悪い事などしていない、ただその場にいるだけで虐げられていた。そんな仲間達を助けようとする貴方は、何も間違ってなどいない。その信念が変わらない限り、貴方の仲間達は巻き込まれたなど思いませんよ。……俺も含めて」


俺は彼の言葉にそう返して、俺は彼から少しだけ距離を置いて湯船に入る。


「亜人族の皆が笑い合い、自由に過ごせる世界を」


俺が小さな声でそう言うと、少し間を置いてあぁとセンジンさんが返事をした。


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