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女王との握手を終え、俺はまず妖精の国で皆が吸っている花の種類と出来れば物を見せて貰いたいとお願いをすると、それを快く受け入れてくれて樹木の中へと一旦戻っていった。

その間に、女王と今後の事について話をしておこう。

俺はそう思うと、


「では、少し深入りした話をしましょうか。反乱の話をしましたが、それでもこちらの準備は全然と言っても良い程整っていないのです。ジーグにいる人達の戦力を高めるのも必要ですが、それ以上に人が足りません。数では明らかに亜人族は負けています。それでも、少しでも差が縮められる様にしたいのです。誰か、協力をしてくれる人達を知っていますか?」


女王にそう質問をしてみる。

俺の問いを聞いた女王は、思い出す様に少しの間瞳を閉じて考え込む。

そして表情がハッと何かを思い出したかの様な表情に変化すると、


「ここから離れた場所に、巨人族の集落があります。人の数はあまり多くはないと思いますが、それでも貴方よりも大きなお体は、絶対に反乱の力となってくれると思います。一度お会いしてみるのも、手ではないでしょうか?」


俺にそんな情報を教えてくれる。

巨人族、まだ一回も会った事が無い種族だな。

想像するに、逞しい肉体で豪胆な人達の集まりなのだろうか?

俺はそう考えながら、


「ありがとうございます。次はそちらに向かってみる事にしてみます。ここからどの方角の、どれくらいの距離離れているか分かりますか?」


更に巨人族の集落の位置の質問をしてみると、女王は申し訳無さそうに、


「そこまでは私達には…。申し訳ありません、見たのも、彼らが移動しているのを木の上から見ただけですので…」


そう謝罪をしてくる。

それを聞き、


「いえ、謝罪はしないでください。それに、向かっていった方角だけでも教えてくれれば、後は自分で何とかしますから」


俺はわざわざ謝罪をする事は無いと女王に伝える。

俺の言葉を聞いた女王は、


「分かりました、確か私がゴーレムの調整で動いていた時ですから…」


その時の記憶を思い出す為に、独り言を呟きながら方向の確認をしている様だ。

少しの間、彼女の次の言葉を待っていると、先に樹木の方から様々な花を一輪ずつ持って来てくれた妖精達がやって来る。

女王の様子を見て、思い出しかけている今声を掛けるのはマズいと判断したのだろう、妖精達は顔を見合わせ、更に俺とも視線を合わせると静かに女王の次の言葉を待つ。

そして、


「そうでした。おそらく向こうの方角へ進んでいきました」


記憶を思い出したのか、女王は樹木の奥の方へと指を差してそう言ってくる。

そんな彼女は、自身の周りにすでに集まっている妖精達の事を見て、


「皆さん、いつの間に準備が終わっているのですか?」


そんな質問を皆に投げた。

女王の様子を見た妖精の皆さんは笑い、少し前からずっと見ていた事を伝えた後、俺の目の前のテーブルの上に持って来てくれた花を置いていく。

そうして並べられた、色とりどりの花を見て、俺はまず数を数える。

俺の目の前に並べられている花の種類は13種類か、色も結構バラバラで様々な色だな。

テーブルの上に置かれている花を見て俺がそう思っていると、


「では、どうぞ」


女王が俺にそう言ってくる。

彼女の言葉に、


「すみません、失礼しますね」


俺は1人で味見兼バフが他にも掛かるのだろうかという考えで、皆に見守られながら花を手に持ってさっきと同じ様に、花の蜜を吸う。

先程吸った花の蜜とは違い、この花は甘みが強く香りも蜜の様に甘い匂いが花にぶつかって来る感じだな。

そんな風に思いながら蜜を吸い、一本目を吸い終えてから本の中の世界(ワールドブック)を開いてバフを確認する。

攻撃力が微少ではあるが増えている。

そう言った感じで、俺は蜜のバフの効果が終わると次の花の蜜を吸い、ステータスを確認してどの様な効果があるのか確認していく。

そうして次々と花の蜜を吸っていく内に、流石に甘さに舌が少し鈍くなったのか、常に口の中が甘い状態の所為で味の変化が分からなくなっていく。

そんな感想を思いつつ、俺は全ての花の蜜の効果を調べ終える。


「ありがとうございます。皆さんのお陰で、1つ1つの花の蜜がどの様な効果をもたらしてくれるのか調べる事が出来ました」


俺が感謝の言葉を口にすると、妖精の皆が少しだけ笑って樹木の方へと飛んで行ってしまう。

まだ怖いだろうし、仕方は無いのだが…。

寂しいというか、悲しい気持ちが出てしまうな。

俺はそう思いつつ苦笑いを浮かべ、


「女王様も、ご協力ありがとうございます。そう言えば、妖精の皆さんは花の蜜しか口にはしないって言っていましたが、それは甘いモノが好き…という訳では無いのですか?」


少しだけ話を普通の、世間話の様な話題にする。

いつまでも、堅苦しい戦いの話など女王もしたくはないだろう。

俺がそう思っていると、


「花の蜜を食する事は、私達にとっては当たり前の事ですので…。ただ、この国には無い花などの蜜は吸いたいと思った事はありますよ」


女王が俺の問いに、微笑みながらそう答えてくれる。

そんな彼女の言葉を聞いた俺は、今度ここへ来る時は花束でもお土産に持って来ようかと考えながら、


「では、自分はそろそろ行きます。ジーグに一度戻り、ジーグを引っ張っている代表の者に貴女達が反乱に参加する事を伝えなければいけませんからね」


そう言って椅子から立ち上がる。

俺の様子を見た女王も椅子から立ち上がると、


「では、お見送りを」


そう言って優雅に羽ばたいて空中を浮遊する。


「ありがとうございます。………花、ありがとうございました。美味しかったです」


俺は女王にお礼を伝えると、彼女達の家である樹木に向かってそう声を掛ける。

垂れ下がっている蔓の間から、彼女達の顔が見える事から話くらいは聞いていたのだろう。

俺はそんな隠れている人達に、花を運んで来てくれた事を感謝してお礼を言うと、少しだけ間があってから、


「ま、またお越しください」

「今度は、もっと綺麗に盛り付けた花のお食事を準備させて貰います」

「お気をつけて」


樹木から顔を少しだけ出して、手を僅かに揺らして見送りの挨拶をしてくれる妖精の皆さん。

そんな彼女達にもう一度お礼を言ってから、俺は女王と共に出発をした。


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