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399頁

妖精の国の女王の案内で、花が咲き誇っている拓けた場所を進み続けていると、その内少しだけ大きな建物…の様なモノが見えてくる。

建物と言ったは良いが、少しだけ大きな樹木に、蔓が垂れ下がっているだけの様にも見えてしまう。

しかしそれが何故建物の様に見えるのかというと、


「…おっきいね…」

「羽が無いよ」

「怖い」

「女王様、大丈夫かしら?」


垂れ下がっている蔓の間から、可愛らしい妖精達が顔を出して俺の事を見て感想を言い合っているのだ。

そんな妖精達、国の者達の様子に、


「お前達、こちらはお客様だ。ちゃんと挨拶をしなさい」


女王が注意の言葉を顔を覗かせている妖精達にそう言う。

彼女の言葉に妖精達は、


「ご、御機嫌よう」

「よ、ようこそ、私達の国へ」


女王の言葉に従って、蔓の間から顔を出していた人達が半分ほど顔を奥に隠しつつそう挨拶の言葉を言ってくれる。

それを聞いた俺は、


「初めまして、ヴァルダ・ビステルと申します。少しの間、皆様の国へお邪魔させていただきます」


挨拶をしてきた妖精達に対してそう返事をすると、俺の声を聞いて蔓の、建物の奥へと引っ込んでしまった。

そんな彼女達の様子に、


「申し訳ありません、皆人族をお目にかかるのは初めてですので、慣れていないのです」


女王が俺にそう言ってくる。

彼女のその言葉を聞いた俺は、


「いえ、それは当然の反応ですよ。皆さんからしたら、怪しい者である事に変わりは無いですから」


特に気にしていない事を伝えると、女王は一度俺に会釈をしてから木の中へと入って行く…。

俺はどうすれば良いのだろうか?

いくら樹木と言っても、高さは普通の木と同じくらいの高さしかない。

太さは、他の木に比べると太くはあるのだが…。

俺がそう思っていると、


「申し訳ありませんが、少しそこでお待ちください」


先程の妖精達と同じ様に、樹木に垂れ下がっている蔓の間から顔を出してそう言ってくる女王。


「分かりました」


俺は女王の言葉に従い、樹木の前で立ち尽くす。

…それにしても、また面白い生活環境だな。

少しだけ、エルフの人達と同じ様にも見えるのだが、人工的な建物という点ではエルフの人達の方が発展はしている。

妖精の国は見た感じ、人工的に作られた建物が無い様に見える。

それとも、今は俺が信用されていないから見えない様にしているのか?

俺はそう思いつつ、少しだけ視線を動かして辺りを見回してみる。

花畑の様に、辺り一面花が咲き誇っている。

人工的に作られた物は見当たらないし、あまり賑わっている国という訳でも無い様に感じる。

俺がそう思っていると、


「あ、あの…」

「っ!?あ、あぁはい、何ですか?」


後ろから突然声を掛けられて、俺は驚きつつ振り返って返事をする。

視線の先には、1人の妖精がビクビクしながら俺の胸の高さくらいの高度で、少しだけ離れた場所にいた。

そんな女性は一本の花、水色の綺麗な花を俺に差し出してくると、


「ど、どうぞっ!」


そう言ってくる。

差し出している手も腕も、体も僅かに震えている姿を見てすぐにそれを受け取った方が良いだろうと考えると、


「ありがとうございます」


俺はそれを摘み取る。

妖精の彼女が差し出した花を俺が手に取ると、震えていた女性はすぐに樹木の中へと入って行ってしまう。

………歓迎の花…という感じでは無かったよな?

俺はそう思いながら、手渡された花を見る。

少し長細い花の形、爽やかな綺麗な水色でとても綺麗だ。

匂いを嗅ぐと、ミントの様な清涼感があるスッキリとした香りがする。

俺はそう思っていると、


「申し訳ありません、お待たせしました」


少しだけ高い位置から、女王が蔓の間から顔を覗かせてそう言ってきた。

俺はやや上を見上げつつ、


「いえ、大丈夫ですよ」


そう答えると、女王は蔓の間顔を出して更に腕を伸ばしてくる。

何をやっているのかは理解出来ないが、伸ばされた手が何かを握っているのか、握りしめられているのは俺の位置からでもよく見える。

すると、そんな握りしめられた手が開け放たれて、彼女の手から何かが落とされたのが見える。

とても小さな物で、それがどんな物かまでは分からない。

その小さな物が俺の目の前を通り過ぎて地面に落ちると、俺の立っている地面が淡く光り一気に植物が急成長し始める!

そんな様子に俺は一歩二歩と後ろに交代する。

驚いた俺の様子など関係無い様に、植物の成長は止まる事は無くどんどん大きく成長していく。

ある程度の大きさまで成長してくると、今度は形を変え始めて今まで大きくさせていた体をどんどんコンパクトに縮めて折り畳む様に蠢く。

そうして動いていた植物が作り上げた姿が、


「…テーブルと椅子?」


俺用のサイズ、普通の人用の大きさのテーブルと椅子、そして俺に合わせて作られたであろうテーブルの上に、妖精達に合わせて作られたであろうサイズの長方形のテーブルと椅子が出来上がっていた。

テーブルの上に、更に小さなテーブルが乗っている光景も違和感はあるが、とりあえず座って話をするつもりなのだろうか?

俺がそう思っていると、


「ふふ、貴方の様な大きな人の大きさに合わせるのは大変ですね」


少し上から声が掛かり、俺は空を見上げる。

そこには、おそらく先ほどいた木から飛び立って高度を下して来ている女王と、数名の妖精達が彼女と共に上から降りてくる。

その際に、妖精達の皆の服装の所為で俺は瞬時に視線を下に移動させる。

女王の服装は、先程のドレスの様な恰好から少し変わって僅かではあるがラフな格好をしている。

それでも、女王としての気品を保つためなのか丈が長いスカートを見つけているのだが、彼女と共に降りてきた妖精達は短いスカートを身に着けており、危うく彼女達の下着を見てしまうところだった。

流石に、真面目な話し合いをする為に来たのにスカートの中を覗いたという理由で、話し合いが出来なくなるのは色々とマズい。

今まで多少でも築き上げてきた信頼が、一瞬で崩れる程の情けない話になってしまう。

俺がそう思っていると、


「では、先程の話の続きをしましょうか」


大きなテーブルの上に作られた、妖精達用の大きさの椅子に腰掛けた女王がそう言ってきた。


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