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異常に急成長した草から現れた女性の姿を見た俺は、妖精は妖精でも様々な種族で分かれているのだろうと考える。

塔にも妖精という種族は数人いるのだが、彼女達は姿は同じ様な姿をしている訳では無い。

今目の前に立っている女性も、植物の上に立っているから目線を合わせられているが、そうしなかったら目も合わせられない位に身長に差がある。

おそらく、20cmあるかないか位の大きさだろう。

それに彼女の背中に見える羽も、皆とは形状が違っているし花の様な色鮮やかな色合いをしている。

とても美しい蝶々、背中に背負っているのかと思わせるくらいだ。

俺はそう思いながら、


「初めまして、俺はヴァルダ・ビステルという者です。少し離れた所に居た人型の植物との意思疎通が出来ずに、ここへ入り込んでしまいました。もしも、無礼があったのなら謝罪をします」


まずは、俺が敵では無い事を証明する為に自己紹介をしつつ、勝手に敷地内に入った事を謝罪する。

すると、俺の自己紹介と謝罪を聞いた女性は、


「あれは、私がここを悪意ある者から護る為に創ったゴーレムです。あの子に危害を加えられなかったのなら、あなたは私達に対して悪意を持っている訳では無いという証明になっています」


上品な笑みを浮かべて、俺にそう教えてくれる。

彼女の言葉を聞いた俺は、


「ゴーレム、植物でもゴーレムは創れるのですね。岩や金属のモノなら、知識としては知っていたのですが」


女性の言葉に興味を示して、俺は先程通ってきた森の方を見る。

俺が森の方に視線を向けていると、


「私の方も自己紹介をしておきましょう。私の名はカトリナ・サマンタ・ソフィー・ランメルスと言います。この妖精の国を纏めている王でもありますが、あまり気にしないで下さいね。所詮小さな場所の王なのですから」


女性は、自身の名前を名乗ってそんな事を言ってくる。

彼女の自己紹介を聞き、俺は一歩後退して頭を軽く下げると、


「女王とは知らずに、気安く話しかけてしまい申し訳ありません」


もう一度、今度は自分達の立場を気にして謝罪をする。

まさか、国の主自ら来るとは思わなかった。

しかし、あれだけ綺麗なドレスを着ている理由もこれで納得できる。

俺がそう思っていると、


「構いませんよ。出迎えに来た者が、まさか国を治めている者だなんて思いもしませんよね」


女性が俺にそう言ってくれる。

軽く笑っている様子もあり、どうやら彼女は良い人…妖精なんだろうと思う。

俺はそう感じて、


「それで、王自らどうして出迎えなんて…」


彼女にそう質問をすると、俺の質問を聞いた女王は苦笑をして、


「一応、ゴーレムが通したとしても警戒はしていますからね。それにこの国では、私だけが侵入者を追い払う事が出来る力を持っていますから」


俺の質問に対してそう答えた。

それを聞いた俺は、


「つまりそれは、敵対者がいた時は貴女しかこの国を護る事が出来ないという事ですか?」


女王にそう質問をする。

それを聞いた女王は、


「はい。最悪、皆一緒に朽ちるだけの事です」


最悪の状況の話、仮定だとしても笑顔でそう答える女王の様子に俺は少し心が苦しくなる。

俺はそう思いつつ、


「つまり、この国には敵対者が入って来た場合の対抗策があまり無い状態なんですか?」


女王にそう質問をすると、彼女は笑ってはいと返事をした。

そして、


「故に、国の防衛はあのゴーレムとその創造者である私だけなのです」


更に追加でそう言ってきた。

彼女のその言葉を聞いた俺は、少しだけ彼女達妖精達の力を借りる事は出来ないと感じた。

対抗する力が無い人達に、反乱の加担をさせるのは無理だ。

戦力としてでは無く、彼女達を巻き込みたくないという俺の考えでしかない。

しかし、


「それで、私達の国に何の用なのでしょうか?」


俺の考えとは反対に、女王は話を進めようと俺に話を振ってくる。

俺はそう分析しながら、彼女に何と説明しようかと考える。

そして出した結論は、


「ここ、妖精の国の近くのジーグの人達が、人族に対して反乱を考えている事を教えに来ました。反乱に加入するかの意思を聞こうと思っていたのですが、妖精の国の現状を知った今、俺は貴女や妖精の国の皆様にそれを聞くつもりはありません」


全てを教える事だった。

おそらく、適当に誤魔化そうとしても目の前の女王を騙す事は出来ないと思う。

俺にはそこまで機転が利くタイプでも無いし、ならば全てを話して事情などだけでも知っておいて貰おう。

そして、もしもの時はすぐにでも逃げられる、もしくは隠れられる様にして貰いたいと思っている。

俺はそう思い続けて女王に対して説明をしようとすると、


「良いでしょう」


俺が口を開けるのと同時に、目の前の女王が俺にそう言ってきた。

彼女のその言葉を聞いた俺は、


「…待って下さい。こちらから話を持って来たので強くは言えませんが、それでも妖精の国の皆様は戦う術が無いと言っていたでは無いですか。それで反乱に参加するのは、どう考えても妖精の皆様の命を軽んじる事になってしまう。俺は、亜人族を保護している者として、貴女達妖精の国の皆様が反乱に加入するのは反対です」


頭で考えるよりも早く、口が勝手に動いて女王の言葉に反対をする。

俺の言葉を聞いた女王は少し笑って、


「元々話を持って来た貴方に反対されるとは、流石の私も思いもしませんでした。………分かりました、では私達の、武力としてでは無い戦う術をお見せしましょう」


俺にそう言ってくると、彼女は蝶の様な美しい羽を僅かに動かすとそのまま一瞬で空中へ舞い上がる。

そして、


「こちらへどうぞ」


俺の目線の高さくらいを飛び、俺にそう言って案内をしてくれる様に俺の方に体を向けながらも、向かいたい先へと手を差し向けながら飛んでいる。

女王の案内を断る訳にもいかない俺は、


「分かりました。失礼します」


そう言って歩き出そうとすると、先程まで彼女の足元を支えていた植物が縮んでいくのが目に映る。

…わざわざ俺の目線まで合わせる為に、力を使ってくれていた事に俺は感謝の気持ちを持ちつつ、先へ促してくる女王の後を追いかける。


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