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レオノーラとの会話を一度中断し、俺はアンリにはいつも通り精鋭騎士の情報を偽る事を指示をし、エルヴァンとバルドゥ、レオノーラには同じ様にこれから来る人達の鍛練を行ってくれる様にお願いをする。

そうして指示を出し終えて少しすると、


「悪いな、少し遅くなっちまった」


センジンさんが先程とは違う、ジーグの亜人族の人達を連れて来る。

人数は午前の人達と同じくらいだろう。

俺はそう思いつつ、


「大丈夫ですよ。ではセンジンさんはエルヴァン達と共にお願いします」


センジンさんにそうお願いをしつつも、


「これから俺はジーグ周辺の集落へと行くつもりなのですが、まずはどこへ行った方が良いですか?」


そう続けて質問をする。

俺の問いを聞いたセンジンさんは、


「なら、比較的友好な妖精達の国に行ってみるのはどうだ?」


俺にそう教えてくれる。

妖精の国、とても興味が湧く名前だ。

俺はそう思い、


「方向や、目印になる物とかありますか?」


更にそう質問をすると、センジンさんは少し思い出す様に考え込み、


「妖精の国は、基本的には誰でも入る事は出来るんだよ。入れば絶対に分かると思うぞ、あそこは空気が違うからな」


特に目印とかでは無く、結構大雑把な説明が返ってきてしまった。

俺とセンジンさんのそんな会話を聞いていたジーグの1人の男性が、


「妖精の国は、港から沿岸に沿って歩いていけば見えると思うぞ。あそこは花が常に満開に咲き誇っていて、植物の警備兵とかがいるんだ。背が高くて目立つ、視界にさえ入れば絶対に気がつくぜ」


センジンさんよりも、より詳細に妖精の国への方向を教えてくれる。

それを聞いた俺は、


「ありがとうございます、助かります」


教えてくれた男性に感謝の言葉を伝えると、彼は片手を挙げて返事をしてくれる。

男性にお礼を言った俺は、エルヴァン達の方を向くと、


「では、俺はその妖精の国へと行ってくる、エルヴァン達はセンジンさん達の事をよろしく頼む」


そう言う。

その言葉にエルヴァン達が返事をしたのを聞き、俺はまずは港に向かってセンジンさん達が来た道を戻り始める。

少しして港に戻って来ると、俺は沿岸の道を森の方向に視線を向けつつ歩き始める。

潮風のやや強い風に煽られて森の木々から発せられる音と、一定のリズムでありながら強かったり優しかったりする波の音に、心が穏やかになりながら歩き進める。

そうして少しの間、海の心地よい波の音を聞きながら歩き続けていると、俺は視界に移る生物?に視線が奪われた。

草や蔓などが密集して形作られた大きな人型が、のっそのっそとゆっくりと移動している…。

あれは、亜人族なのだろうか?

俺はそう思いながら、一応センジンさんが言うには友好的な国だと聞いていた故に、俺は隠れるつもりは無く、


「すみません、少し聞きたい事があるんですけど…」


植物の人型の背後から、少しだけ距離を取ってそう声を掛ける。

しかし、


「………」


植物の人型は俺の言葉に反応はしなく、ただゆっくりと歩みを進める。

…聞こえていない訳では無いと思うし、もしかしたらあれは生物では無いのかもしれないな。

俺はそう考えながら、それでも今はあの人型の植物に声を掛けなければ前には進めないだろうと考えて、


「よろしいですか?もしも~し?」


俺は少しだけ早歩きで人型の植物の前に立ち塞がると、もう一度しっかりと声を掛ける。

すると今度は人型の植物の塊が歩みを止めて、目の前で立ち塞がっている俺の事を見てくる。

人型の植物は目玉も無く、本当にただ外見が人の姿を模った様にしか見えない。

俺がそう思っていると、


「………」


人型の植物は俺の体に腕を伸ばしてくる。

何かしらの攻撃かと身構えはするが、あまりにも動きに機敏さが無くて警戒してもあまり意味が無い様に感じる。

俺がそう思っていると、人型の植物が伸ばしてきた手が俺に触れる。

草の柔らかさと、人型を模った植物の枝が触れて少しだけ硬さが目立つ。

人型の植物に触れた感想を考えていると、


「………」


植物は俺に触れるだけで特に何かをしてくる気配は無い。

すると、俺から手を放した人型の植物は俺などいないかの様に、また動き出して俺の横を通り過ぎる。

…え?


「あ、あの…」


俺は振り返って人型の植物に声を掛けるが、人型の植物はもう俺の事など気にしていない様に歩き進んでいく。

…どうしたものか…。

俺はその場に立ち尽くして、この後はどうしたものかと考える。

とりあえず、敵対はしていないという事はこの先に進んでも良いのだろうか?

俺はそう思い、もし不法侵入だと指摘されたら素直に謝罪をしようと考え、俺は森の奥へと歩みを進める。

森の雰囲気は特に変化する訳では無く、男性が言っていた花が咲き誇っている場所も見当たらない。

迷子とまでは言わないが、自分が今どこに向かっているのか分からないのは不安である。

そう思いつつ歩いていると、森の木々の隙間から太陽光だけではありえない光が見えてくる。

そこへ向かって歩き続け森を抜けると、


「なるほど、確かに花が咲き誇っているな」


森の木々が生えておらず、大きく拓けた空間に絨毯を敷いたのではないかと思わせる程の、色とりどりの花が咲いている。

その花自体が淡く光っている様子に、ただの花では無い事を理解してここが妖精の国なのだと確信する。

しかし反対に、国と言うには何も無いその空間に俺は不安にも感じてしまう。

俺がそう思っていると、


「…初めて見る顔ですね」


突然そんな声が聞こえて、俺は驚いて肩を揺らす。

どこから声がしたのだろうと、辺りをキョロキョロと見回すが…。

人の姿を確認する事が出来ない。

どこにいるのだろうかと考えていると、


「…ここです、私達は背が低い所為で気づかれない事が多いですね…」


目の前に生えている花の周辺から草が一気に急成長し、俺の目の高さまで伸びて来ると、


「ようこそ、私達の国へ」


急成長した草の束の中から、1人の女性が出てくる。

深い緑色の髪に、整った顔立ち。

服装なドレスの様な豪華なモノで、身分が高いのではないかと思わせる。

そして、背中の方には咲き誇っている花の様な、綺麗な色合いをした羽が見えた。


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