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シェルガさんが俺の体から手を放してから少しして、アンリも何とかジャブジャブさんから解放された。

アンリは突然のジャブジャブさんの行動を警戒してか、少しだけジャブジャブさんの事を顔を顰めて見ている。

そんなアンリの様子に、ジャブジャブさんは笑顔で謝りつつもアンリに近づこうとじりじりとゆっくりとアンリに向けて歩みを進めている。

そんな光景を眺めていると、


「それで、これから貴様達は何をする予定なのだ?当分の間は、貴様達に精気を吸わせてもらう事になるだろう」


シェルガさんが俺にそう聞いてくる。

彼女の言葉を聞いた俺は、


「当分の間は、ジーグやその周辺の村や集落に挨拶周りをする予定です。こちらの状況を伝えて、俺達に協力してくれるか聞いて回る感じです。ので、当分は狭間の町に来られると思うので安心してください」


シェルガさんの問いにそう答えつつ、しかし緊急に帝都などの大陸に帰る用事が出来た時に、俺達がいない事で彼女達の存在が消えかける事はマズいと思い、彼女達に精気を分けてくれる人達も早急に探さなければいけないなと考え始める。

今は申し訳無いが、緊急の場合はここで町の人達と交わっている男達に任せるしかない様だ。

俺はそう思い、


「それと少し聞きたいのですが、狭間の町へはジーグ周辺の場所からでも行ける事は出来るのですか?」


シェルガさんにそう質問をする。

それを聞いたシェルガさんは、


「問題無い。許可を受けているのなら、どこからでも狭間の町へ来る事が出来る。貴様も私達から精気を吸われている故に、許可はしてある。後は体の感覚で町へ行く方法が分かるだろう」


俺の質問にそう答える。

彼女の言葉を聞いた俺は、


「ありがとうございます。…では俺達はそろそろジーグに戻ります。昼からはジーグでやる事があるので」


そう言うと、シェルガさんは少し不機嫌そうな表情になり、


「相変わらず忙しい奴だ。前回も慌ただしくしていたが、それ程までに忙しいのか?」


俺にそう聞いてくる。

不満に思っている事はありそうだが、それを責めている訳では無いのが声色で分かる。

俺はそう思い、


「意外かもしれませんが、結構忙しいんですよ。でも、それで亜人族の人達が少しでもより良い生活を送れるのなら、俺は文句など言うつもりは無いんですけどね」


彼女の質問にそう答えると、シェルガさんは少し難しい表情になって、


「理解出来んな。それで貴様に得があるのか?」


そう言ってくる。

損得で彼らを救いたいと考えた事は………ほぼ無いと言い切れる。

たまに、自分の欲求に素直になってしまう時もあるが…。

俺はそう思って心の中で苦笑をしていると、


「損得というよりも、困っている亜人族の皆さんを見て助けたいと思ったから、動いているだけですよ。助けたからと言って、見返りを求める事はあまりしていません。ただ、たまに求めてしまう事がありますが、無理のない事をお願いしているだけなので…」


シェルガさんの言葉にそう返す。

すると、


「…ドラゴンである私とは考えがまるで違う。私であれば、助けた者達に所有している全てを差し出して貰わなければ気が済まない」


俺の言葉を理解出来ないと言いつつ、ジャブジャブさんとアンリの攻防に視線を移し、


「それにしても、ジャブジャブがあそこまで人に執着しているのも珍しいな。しっかりと名前は覚えているし」


アンリに抱き付こうとして飛びかかったジャブジャブさん…。

しかしアンリの動きが速かったらしく、受け止めて貰えなかったジャブジャブさんは財宝の山に飛び込んで積まれていた財宝に突っ込んでしまう…。

単純に痛そうな、ゴキィッという音と共に動かなくなると、更に彼女が突っ込んだ事によってバランスを崩した財宝の山が雪崩を起こして、彼女の体を覆ってしまった。


「あの、あれは良いのですか?」


ジャブジャブさんの体的にも、保管をしている財宝の安否的にも心配になってそう質問をすると、


「ジャブジャブに財宝を壊すなと言っても意味など無い。本能で動いている奴だからな、食いたい時に食い、寝たい時に寝て、交わりたい時に交わる。あいつはそういう奴だ」


シェルガさんが俺の質問に、少しだけため息を吐きつつそう答えてくれる。

彼女の発言に、俺はあまり良い返答が思いつかずに笑みだけを浮かべていると、


「いたぁ~いっ!アンリ君ちゃん何で避けるの~っ!?」


ジャブジャブさんは先程の音の発生源であろう痛みに涙目になっており、アンリにそんな質問をする。

彼女のその言葉にアンリは飛びかかって来て怖い事などを説明するが、ジャブジャブさんは飛びかかりたい程アンリの事を気に入っている事を説明して、財宝の山から抜け出してまたアンリに飛び掛かろうと姿勢を変え始める。

そんな様子に、


「はぁ~…、貴様達はもう帰れ。ジャブジャブがあの様子では、満足するまで返してくれる事は無い」


シェルガさんは溜め息を吐いて俺にそう教えてくれる。

それを聞いた俺は、


「では、そうさせて貰います。また後日、お伺いしますね」


シェルガさんに軽く頭を下げて挨拶をすると、シェルガさんは少し面倒そうにシッシッと手で合図を送ってくる。

俺はその様子に、これからシェルガさんはジャブジャブさんに色々と文句を言われるのだろうなと考えつつ、


「アンリ、ジーグへ戻るぞ!」


ジャブジャブさんを警戒しているアンリが、俺の言葉に反応して返事をすると一瞬で俺の元へと戻って来る。

そして、


「失礼します!」


礼儀として、シェルガさんとジャブジャブさんにそう挨拶をした瞬間、景色が一転して普通の森になった。

財宝が敷かれていたチカチカする景色から、優しい色合いをしている森の草木、そして植物や木の自然な匂いに心が落ち着く。

シェルガさんやジャブジャブさんは、女性特有の甘い香り以上に道具などを使っているのか、惑わされる様な甘くも爽やかな匂いがしている。

近くにいれば、それはより強力に感じる。

俺は瞳を閉じて、森の自然の空気をたくさん吸える様に深呼吸をして、心を落ち着かせてから、


「一度、エルヴァン達の元に戻ろう」

「はいっ!」


アンリにそう伝えて、アンリの返事を聞いてから俺達は出発した。


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