392頁
シェルガさんの裸を一瞬見てしまい、視線を下げて頭ごと下げる様な体勢をしている俺は視線を少しだけ動かして斜め後ろにいたアンリの事を見ると、アンリは目を手で遮っており、何も見ない様にしている。
そうして俺とアンリがシェルガさんの事を見ない様にしていると、
「何をしているとは何だ?わざわざここへ来るという事は、そういう事では無いのか?」
「違うんだってばぁ~!真面目な話をするつもりだって、アンリ君ちゃんが言ってたの~!」
シェルガさんと、声の主ジャブジャブさんが言い合いをしている。
まだジャブジャブさんの方が、俺とアンリのしたい事を理解してくれている様だ。
少し安心しつつ、
「あの、本当に真面目な話をしに来たので服を着てくれるととてもありがたいのですが?」
俺が下を向いた状態のままシェルガさんにそう言うと、
「…ハァ、着れば良いのだろう」
不満そうなため息が頭の上から掛けられ、シェルガさんは服を着てくれる様だ。
俺がそう思っていると、翼を羽ばたかせる音が聞こえた後、一気に風が発生して辺りが静かになる。
わざわざ、服を取りに行ってくれた様だ。
俺はそう思い、頭を上げて視線を元に戻すと、
「ごめんね~、シェルガがお馬鹿で~」
上空からジャブジャブさんが降りてきて俺にそう言ってくる。
そんな彼女の姿も、結構露出が激しいのだがこれはツッコミを入れても良いのだろうか?
俺はそう思いつつ、
「い、いえ…。一応身構えてはいたんですが、いきなりだったもので…」
ジャブジャブさんの言葉にそう返すと、
「だって~、わざわざ会いに来るって言うから、アンリ君ちゃんは覚悟を決めてくれたのかな~って思っちゃったし~」
ジャブジャブさんが笑ってアンリの事を見てそう言う。
その言葉に、
「で、ですから僕の心も体もヴァルダ様のモノですから、そういうのは駄目です!」
アンリがそう言い返す…。
…絶対に狭間の町の人達に誤解されている気がするんだが…。
まぁ、アンリがそう思ってくれている事は感謝するとして、とりあえず今はシェルガさんの帰りを待つとするか。
俺はそう思い、
「狭間の町で、何か変わった事などはありましたか?」
そうジャブジャブさんに質問をする。
俺の問いを聞いたジャブジャブさんは、思い出すかの様に視線を少しだけ辺りの景色に彷徨わせると、
「特に目立った事は無いかな~。皆、いつも通りにしてたと思うよ~。まぁシェルガは、色々と鬱憤が溜まってたっぽいけどね~」
俺の問いにそう答えた。
「鬱憤…ですか」
ジャブジャブさんの口から発せられた言葉を聞き、俺は彼女の言葉を繰り返すと、
「シェルガってば、意外に独占欲が強いからね~。町の皆を率いてる男勝りな奴だと思ってると、火炙りにされちゃうぞ~!」
ジャブジャブさんが笑いながら、翼を大きく広げて威嚇をする様な姿勢をして見せる。
男勝りというか、勢いがある押しが強いタイプだとは思っていたが、独占欲が強いのか。
俺がそう思っていると、
「ど、独占欲、何で強いんですか?」
アンリがそう質問をする。
それを聞いたジャブジャブさんは笑って、
「だってシェルガって、ドラゴンだよ~?ドラゴンは自分の縄張りや縄張りに隠している財宝を奪われない様にしてるんだよ~?」
アンリの質問にそう答える。
なるほど、確かに縄張りは生物としては侵されたくない場所だから説得力が少し欠けはするが、財宝を取られない様にしている話は少しだけ関係しているかもしれないと思う。
俺がそう思うと、では同じドラゴンの関係者であるレオノーラやハイシェーラさんも、独占欲が強いのだろうかと考えていると、
「何の話をしている」
俺達がいる場所から少し離れた場所に衝撃が発生し、舞い上がった土煙からシェルガさんが出てきて俺達にそう質問をしてきた。
彼女の問いに対して、
「シェルガの独占欲が強いって話~!シェルガ、気に入った人は他の人には触れさせたくないんだもんね~」
ジャブジャブさんがそう答えると、シェルガさんは瞳を細めて、
「当たり前だ、私の所有物に触れる事は死を覚悟して貰わなければいけないに決まっている」
そう言い切る。
しかし、彼女がそこまでアンリの事を気に入っているとは思わなかった。
ジャブジャブさんや、町の人達の方がアンリの事を気に入っている様に見えたのだが…。
俺がそう思っていると、
「これで文句は無いだろう?」
俺に見せつける様に、シェルガさんは手を大きく広げて服を着ている事を証明してくる。
………過激な服装ではあるが、まぁ一応隠して欲しい場所は隠れているから良いよな…。
俺はそう思い、
「ありがとうございます。それで今日改めてここへ来た理由なんですが…」
「話し合い…。それは都合が良い、こちらも貴様達に話をしたい事があるのだ」
話し合いをしたい事を伝えようとすると、彼女は俺の言葉を遮ってそう言ってくる。
…シェルガさん達から、俺達に話をしたい事?
…話し合いをするにしては、時間を掛け過ぎていた事への文句だろうか?
身に覚えがある故に、甘んじて受け入れるしかないけど…。
俺はそう思いつつ、
「分かりました。場所はここで話しますか?それとも場所を移動しますか?」
シェルガさんとジャブジャブさんにそう質問すると、2人は顔を見合わせて頷き合い、
「では場所を移そう。付いて来い」
シェルガさんがそう言うと、彼女は背中から生えている翼を広げる。
それと同時に、ジャブジャブさんも翼を大きく広げて羽ばたき始める。
もしかして、飛んで行くのか…。
俺がそう思っていると、アンリも背中から蝙蝠の翼を生やし始める。
そうか、今まで皆は移動するにも翼があったから気にならないかもしれないが、俺は翼を生やす事が出来ないのだが…。
仕方が無い、カルラに協力してもらうか。
俺はそう思って本の中の世界を開くと、
「何をしているんだ、早く行くぞ」
既に空へと羽ばたいているシェルガさんが俺にそう言ってくる。
そんな彼女に、
「俺は皆さんの様に飛べないので、今から家族で飛べる者を………おぅわッッ!?」
俺が自分が飛べない事を説明して、これからカルラを呼ぼうとしていると、
「運んでやる」
シェルガさんは俺の体を乱雑に掴んで空へと舞い上がる。
華奢の体の様に見えるが、それでもやはり彼女も強者なのだろう。
不安定な事も無く、安定して空を飛んでいる。
…くっ付いている場所が、異様に熱く感じるのは何なんだろう…。
俺はそう思いつつ、シェルガさんに連行される様に移動した。
読んでくださった皆様、ありがとうございます!
評価してくださった方、ありがとうございます!
ブックマークしてくださった方、ありがとうございます!
評価や感想、ブックマークをしてくださると嬉しいです。
誤字脱字がありましたら、感想などで報告してくださると嬉しいです。
よろしくお願いします。




