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翌朝、少し草木の香りがある部屋、センジンさんの屋敷の借りている一室で目を覚ました。

ベッドでは無く、布団を床に引くという和風の様式はおそらく戦鬼さんが持ち込んだモノだろうと思いつつ、ふとした動きに合わせて体から感じる自分の匂いが違う事に気づき、少しだけ懐かしい気持ちになる。

この景色と布団の匂いが、どこか懐かしさを感じさせるモノなんだな。

俺はそう思いつつ、自身が寝ていた布団を畳んでおくと、部屋を出て外へと向かう。

センジンさんの屋敷を出ると、俺は深く息を吸い込む。

新鮮な空気が体に流れ込み、心も体も気持ちが良い。

俺がそう思っていると、


「………おはようございます」


背後からふとそう挨拶をされる。

俺はその声に振り返り、


「おはようございます。…草木に水やりですか?」


声の主である、ユキさんにそう質問をする。

彼女の手には、桶が握られておりその中にはたっぷりと注がれた水と柄杓が入っている。

俺がそんな彼女の様子を見ていると、


「そうです。ここの草木は私が植えたモノですから」


ユキさんは俺の問いにそう答えて、桶を握ったまま柄杓を反対の手で持つと中の水を草木に撒いていく。

朝日に照らされて、草木が宝石の様にキラキラと輝く光景は美しく感じる。

俺はそう思いつつ、


「センジンさんは、まだ起きては?」


俺の事が少し、邪魔だと思っているのか気にしている様子のユキさんにそう質問をすると、


「はい、まだ寝ておられます」


ユキさんが俺の問いにそう答えてくれる。

あまり話しかけるのも申し訳無い、彼女の仕事の邪魔をする訳にはいかないと思い、


「では、俺は部屋に戻ります。センジンさんが起きたら、呼んで下さい」


俺は水やりをしているユキさんにそう伝えると、屋敷の中へと戻った。

ユキさんと別れて屋敷の借りている部屋に戻って来た俺は、本の中の世界(ワールドブック)を開いて皆の様子を少しだけ調べる。

…エルヴァンはいつも通り、鍛練の為に起きている。

これからも鍛練があるというのに、早朝から体を動かして凄いなと感心する。

自己研鑚を怠らない真面目で、剣の技術に関しては凄いとしか言い様が無い。

レオノーラも騎士団の名残か、朝早くに起きている事が多いのではないだろうか?

彼女が遅くまで寝ているといった様子は無いし、毎日早起きをしているのだろう。

たまには、寝坊と言うか遅く起きても良いと思うのだが…。

彼女自身がそれを許さないだろうな。

俺はそう思いつつ、ルミルフルの様子が書かれているページを捲る。

彼女は結構自由にしており、エルヴァンとの鍛練の時は早起きをしているが、それ以外は意外と遅い。

おそらくだが、サール達と一緒に仲良く眠っているのだろう。

彼女も自身のレベル向上の為に日々努力をしているし、それと同時にサール達の面倒を見てくれている。

疲れているだろうし、無理に起こしたくはないな。

俺はルミルフルのページからバルドゥのページへと移動させると、既にバルドゥは起きているのが分かる。

バルドゥもエルヴァン程では無いが、鍛練をしている事が多い。

それにバルドゥは、女性達との生活もある。

そういえば、彼女達は塔で生活する事を言って来ないな。

遠慮しているのだろうか?

…俺に対して言うのに遠慮している可能性があるから、今度バルドゥに聞いて貰う様に頼んでみるか。

俺はそう思っていると、


「おはようございまぁす」


センジンさんの屋敷に響き渡る、アンリの声。

俺はアンリの声を聞き、部屋を出てアンリのいるであろう玄関へと向かう。

そして玄関に行くと、


「おはようアンリ、今日から忙しくなるぞ」


俺は玄関にいるアンリにそう声を掛けると、


「はい。頑張ります!」


アンリが気合を入れる様な仕草をしてそう言う。

すると、


「おはようございます、朝食の準備が出来ましたので、こちらへどうぞ。アンリさんも、ご一緒にどうですか?」


ユキさんが玄関までやって来て、朝食の準備が出来た事を教えてくれる。


「ありがとうございます」

「ありがとうございます、頂きます」


俺とアンリはお礼の言葉を伝えて彼女の後を追いかけ、センジンさんとユキさんと一緒に朝食を食べた。

そうして朝食を終えた俺とアンリは、センジンさんが仲間の人達を屋敷の前に集合させるのを待ってからフランメさんの洞窟前まで移動した。

センジンさんの仲間の人達は、皆屈強な体躯で力が有り余っている様に見える。

俺はエルヴァンとバルドゥ、ルミルフルを召喚すると、


「では3人共、後の事はセンジンさんと共に任せる。…あまり厳しすぎない程度にな」


俺は3人に彼らの事を、心配しながらも任せる。

エルヴァンとバルドゥはお任せ下さいと言ってくれ、ルミルフルは殺さない程度にやるわと少し不安な事を言ってきた。

そうして3人に彼らの事を任せた俺とアンリは、少し離れた所で狭間の町へと移動する。

狭間の町は相変わらず怪しい雰囲気が漂っており、周りの木々の毒々しい色合いに俺は少しだけ緊張しながら歩みを進める。


「アンリ、一応話は通してくれたんだよな?」


俺が歩きながらアンリにそう質問をすると、


「はい。しっかりとジャブジャブさんに話は通しておいたのですけど…」


アンリは自信を無くしていく様に、徐々に声を小さくしながらそう答える。

…あ、あの人かぁ~…。

どこか少し不安ではあるよな。

俺はアンリが少し不安そうにしている様子に納得していると、


「来た様だな」


突然そんな声が聞こえてきて、俺はそちらに視線を向ける。

視線を向けた瞬間、俺は勢いよくその視線を下に急降下させた!


「服着てないじゃないですかッ!?」


俺は頭を下げている様な姿勢で、地面に向かってそう声を張り上げる。

それを聞いたシェルガさんは、


「服など必要は無い。私は元々服を着てなどいないからな」


当たり前の様に、そんな事を言ってくるシェルガさんの様子に俺は困惑してしまう。

元々ドラゴンである彼女に服を着ていないとは言うが、それでも初めて会った時は露出は激しかったが服を着てはいた。

今の言葉は嘘である事は分かりきっている。

俺がそう思っていると、


「もう~、シェルガ何やってるの~?」


頭の上から、少しゆっくりめな声が聞こえてきた。

しかし俺は視線を上げる事は出来ず、とりあえず来訪者に服を着る様にお願いして欲しいと思った。


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