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センジンさんが謝罪をすると、その謝罪を聞いたバルドゥが、
「ま、まぁまぁ皆様!そこまで言わなくても…」
流石に3人に責められたセンジンさんが可哀想に見えたのか、何とかフォローをしようと声を出す。
それを聞いたエルヴァンは、
「しかしバルドゥ。お前も私たちが言っている事は理解出来るだろう?」
バルドゥにそう言うと、バルドゥはエルヴァンや皆の言葉が間違っているとは思っていない故に、言葉が詰まった様子になってしまう。
それを見た俺は、
「まぁ、エルヴァン達の言っている事は正しい。センジンさんの言葉が少し軽く聞こえてしまったのも事実ではある。しかしエルヴァン、レオノーラとルミルフルも考えてみてくれ。センジンさんは戦闘の技術は備わっている。エルヴァン達の指導を真っ先に覚えて、自身が他の仲間達に教える事が出来れば問題は無いだろう」
少しだけ口を出すと、センジンさんが頬を引き攣らせて俺の事を見てくる。
眼だけで、マジか?と聞いてきている様だ。
そして、俺の言葉を聞いたレオノーラは少し笑って、
「なるほど、自身が仲間達に教えられる様に努力をするのなら文句は無いな」
そう言葉を発すると、ルミルフルもレオノーラの言葉に乗っかる。
そして、
「…そうだな。センジンは短くはあるが私の指導を受けていた事もある。他の者たちに比べれば覚えが早いだろう」
エルヴァンも話に乗っかる。
彼らの言葉を聞いたセンジンさんは、
「ぉ…おうよ!すぐに皆に教えられる程の実力になってみせてやる!」
自棄になった様に声を大きく出してそう言った。
よし、これで話は一応終わりだろう。
今から鍛練を行うのは時間が足りない、センジンさんや皆には明日から鍛練を開始する事を伝えておこう。
俺はそう思うと、
「今日はもう鍛練を十分に出来る時間は無い。明日から鍛練を行う事を考えて、皆には体を休めて貰ったりして欲しい。センジンさんは、鍛練が明日からある事を皆に伝えて欲しい」
皆に指示を出す。
それを聞いたエルヴァン達は分かりましたと返事をしてくれ、センジンさんは任せてくれと返事をした。
そうしてエルヴァン達を塔に戻し、俺はアンリとセンジンさんと共にジーグのセンジンさんの屋敷に戻って来ると、
「ヴァルダは、宿とか取ってるのか?」
俺にそう質問をしてきた。
その言葉に、
「いや、まだ何もしていないな。帝都で時間を随分と消費してしまったから、急いでジーグまで来たんだ」
俺は道中で出会ったベヒモスとの事は伏せて、センジンさんの言葉にそう返すと、
「なら、泊まっていってくれ。この家は俺とユキでは少し広い、部屋はあるから大丈夫だぞ?」
センジンさんがそう言ってくれる。
それを聞いた俺は、
「アンリは今どこで寝泊まりをしているのだ?」
そう質問をする。
俺の質問を聞いたアンリは、
「僕は、エルヴァン様と一緒に来た時に借りた宿屋で寝ています。あそこだと、もしもの時に港が見える位置なので怪しい一団とかがジーグに侵入しても対応出来るので便利なんですよ!」
俺の問いに対して答えてくれる。
その答えがしっかりとした理由であるが故に、俺もアンリの様に何かあった時に対処が出来る場所にいた方が良いのだろうかと考える。
俺がそう考えていると、
「僕は、ヴァルダ様はセンジンさんの屋敷にいた方が良いと思います」
アンリが、俺が悩んでいる様子が分かったのかそう言ってくる。
その言葉に、
「理由は?」
そう聞くと、アンリはセンジンさんの事を見て、
「センジンさんはジーグのまとめ役です。僕の支配下に置いていない剣聖がジーグでの強硬手段を行う場合、まずは指示などを出したりするセンジンさんを殺してから、町の人達を殺していくのが確実だと思います。剣聖側に僕達の様子を窺える手段があるのなら、こちら側の準備が整いつつある状態が筒抜けの可能性があります」
俺にそう説明をしてくれる。
アンリの言葉に俺は、確かに剣聖側に今の俺達の状態が筒抜けだった場合、強硬手段に出てきても可笑しい訳では無い事が分かる。
剣聖からしたらレオノーラは信頼している訳では無いかもしれないが、それでも彼女が俺達側にいる事で帝都の戦力が減少しているのは分かるだろう。
そうなった場合、剣聖はこちら側の戦力を潰そうとする可能性は十分にあり得る。
戦闘狂だ、まず先に実力行使にと考えるのが向こうからしたら当たり前だろうな。
俺はそう思うと、
「そうだな、アンリの考えている可能性は十分に向こうが考えそうではある」
アンリの意見に賛同しセンジンさんにお言葉に甘えさせてもらう事にした。
俺はまだやる事がある事をセンジンさんに伝えると、彼は自分も仲間達に明日からの鍛練についての連絡をするという事で、俺とアンリはセンジンさんの屋敷を後にして移動を開始する。
「アンリ、狭間の町の人達に会う事は可能か?」
港まで移動している道中に、アンリにそう質問をすると、
「…可能ですけど、聞き入れてくれるかどうか…」
アンリは不安そうな様子で俺の言葉にそう返してくる。
俺はそんなアンリに、
「言伝を頼みたいんだ。申し訳ないが、頼めないか?」
少し無理を言ってお願いをすると、アンリは分かりましたと覚悟を決めた様子でそう答えてくれる。
アンリの返事を聞いて、
「明日の昼前辺りに俺とアンリが町へと行く事を伝えて欲しい。誰でも構わないというか、1人に話したらすぐに狭間の町の人達に広がりそうだしな」
俺が少し苦笑しながらそう言うと、アンリは俺と同じ様に少しだけ笑うと、
「確かにそうですね…。では、少し行ってきます」
アンリはそう言って俺から離れて歩き去っていく。
1人になった俺は、とりあえず一応警戒をするつもりで気配察知スキルを発動しつつ港まで歩き、俺は港から更に離れて近くの海岸まで移動する。
前にレヴィアタンに運んでもらった場所なのだが、流石に今日はいない様だ。
そんなに頻繁に、彼女達もジーグには来ていないのだろう。
俺はそう思うと、踵を返して引き返そうとした瞬間、
「…見張られている…のか?」
少し遠い森の位置から、俺の様子を窺っている様な気配を感知して俺は一度足を止める。
…どうするか、下手に港まで戻って騒ぎにするくらいならここで対処をした方が…。
だが、もし敵意では無く警戒心で俺の事を監視しているのだとしたら、あまり武力的な行動は控えたい。
俺はそう思い、
「誰だ」
誰もいないが、気配察知スキルには反応している場所に向かってそう質問をした。
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