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「え?」

「ピィィ?」


俺とカルラが、困惑した短い声を出す。

今まで流れていた川の水が一瞬で消滅した事に、理解が追い付かずにそんな声を出してしまった。

しかし少しすると川の水は上流から流れてきて、先程に比べれば少ないが川の水が戻る。


「生き返るな~」


ベヒモスはそう言いながら、再度口を川に入れると………。

また、川の水が消滅する…。

吸引力も凄いな、川の水を一瞬で消し飛ばすほどの水量を飲んでいる事にも驚きではある。

俺がそう思っていると、


「それで、ヴァルダ?と名乗っていたよね~?わざわざ話しかけてきたという珍しいヒトだが、何か用でもあったのか~?」


ベヒモスが川から口を離して俺にそう聞いてくる。

彼の質問を聞いた俺は、


「用という用は無かったのだが、世界に一人しかいない貴方を見てつい気分が高まってしまってな…」


後先考えないで話しかけてしまった事を正直に話す。

俺の言葉を聞いたベヒモスは、


「奇特なお人の様だ~」


そう言って更に川の水を飲み続ける…。

水、涸れちゃうんじゃないか?

俺は少し心配しつつも、カルラは既に飽きた様で少し暇そうにしている。

すると、


「珍しい、本当に珍しいグリフォンだね~」


間延びした声でそう言ってくるベヒモスの声に、俺は反応する。


「彼女の名前はカルラと言うのだ」


俺がカルラの事を紹介すると、カルラは挨拶の為に一鳴きする。

それを聞いたベヒモスは、


「基本的にモンスターは、ベヒモスである自分には友好的に接せられるのだけどな~。そんな事は、無かった様だ~」


少し恥ずかしそうな声色で、俺にそう言ってくる。

確かベヒモスは、世界の獣達に慕われていると言われていたっけ?

という事は、カルラだってベヒモスに対して親し気な態度をしていてもおかしくない。

そんなカルラが、ベヒモスは珍しいと言った理由だろう。

俺とカルラ、2人揃って珍しい者認定されてしまった様だ。

俺はそう思いながら苦笑しつつ、ふとある疑問を持ってしまった。

それは、川の水を飲む為に移動をしていたベヒモスに近付いた時に見えた体の傷痕だ。

全ての獣達に慕われているというのが本当であるなら、彼の体に付いている傷痕はどういう事なのだろうか?

俺はそう思い、


「………少し聞きたい事があるのですが、聞いても構いませんか?」


ベヒモスにそう聞くと、彼は良いよ~と答えてくれる。

そんな彼に、


「気分を害してしまうかもしれませんから、先に謝罪をしておきます。…ベヒモスは世界の全ての獣達に慕われていると聞いたのですが、貴方の体には人の斬撃による傷痕の他に、モンスターなどの爪痕も残っているのが見えました。それは、どうしたのですか?」


俺は素直に疑問に思った事を質問する。

俺の問いを聞いたベヒモスは、


「…単純な話だ、私を討伐するのに人の手では傷つけられない~。故に、自分達が安全により効率的に私の討伐が出来る様に、モンスターを調教して仕向けてきたのだ~」


俺の問いにそう答える。

それを聞いた俺は、


「…貴方は、ベヒモスという生物は穏やかだと知識では知っています。抵抗はしたのですか?」


更にそう聞くと、


「していない…と言いたかったが、それではまた自分を倒せるかもと考えた者達がモンスター達を調教すると思った~。これ以上辛い思いをさせないために、私は申し訳無いが抵抗し人族を踏み潰した~。生命を踏み潰すあの感触は、今でも忘れる事が出来ない~。いや、忘れてはいけないのだ~」


ベヒモスは俺にそう言ってくる。

それを聞いた俺は、彼が自身を殺そうとしていた人達に対しても罪悪感を感じ、彼らを殺した事を忘れない様にしている事を知り、俺では到達出来ない人柄なのだろうと理解する。

それと同時に、彼を家族として勧誘する事も止めるべきだろうかと考える。

単純に、食糧難になってしまう…。

契約は出来ても、基本的にはこの外の世界で自由にして貰わないと皆の食料が無くなってしまう。

俺がそう思っていると、


「ふぅ~、飲んだ飲んだ~。そろそろ私は行くよ。ヴァルダ、また会える日を楽しみにしているよ」


ベヒモスは満足気な声で俺にそう言ってくると、ゆっくりと歩き出す。

そんな彼に俺は、


「こちらこそ、楽しみにしています!」


彼にそう返事をすると、ベヒモスの咆哮で返事を返された。

少しだけ彼を見送った後、まだ背中が普通に見えてはいるが、


「さ、そろそろ行くか。最近は忙しくてジーグへは来れていなかったからな。アンリにも久しぶりに会える」


俺はカルラにそう言うと、カルラは少し呆れた様子で返事をして翼をはためかせて空中を疾走し、一気に上空へと移動するとベヒモスを会う前の様にカルラは楽し気に空を飛び続けた。

そうして空の旅を続けて海までやってくると、俺とカルラはそのまま海の上を飛ぶ。

やがて島が見えてくると、


「カルラ、そのまま低空飛行で人が居なさそうな場所に着地するぞ」


俺がカルラにそう指示を出して、気配察知スキルを発動する。

このまま真っ直ぐに飛んで行くと、もしかしたらアンリの支配下に置かれていない精鋭騎士に見られる可能性があるな。

俺はそう思いながら、カルラに方向の指示を出す。

そうして人がいない場所にカルラが着地すると、俺は彼女の背中から降りて俺が乗っていた彼女の背中を優しく労わる様に撫でる。


「ありがとうカルラ、俺が乗っていて重くなかったか?」


俺はそう囁きながら、カルラにそう聞くと、


「ピャァッッ!!」


翼を大きく広げてそう返事をして、大丈夫だと伝えてきてくれる。

そして、まだまだ元気だという事も伝えてくれる。

元気な姿をしてくれるカルラにお礼を言って、俺はカルラを塔に戻すとジーグの村に向かって歩き始める。

相変わらず、綺麗な森だな。

俺はそう思いながら森を進み、ようやくジーグへと辿り着くと…。


「もっと力を入れてください」

「………ヌオォォッ!!?……こうか?」

「エルヴァン様はもっと力強く、より鋭く剣を振るいますよ?」

「…難しい事を言うな…」


アンリが、センジンさんに何やら剣の指導の様な事をしている光景が目に入った…。

結構、堂々としている…。

剣聖側の監視などは大丈夫なのだろうか?

アンリとセンジンさんの様子を見てそう思っていると、


「あっ!ヴァルダ様ッ!」


アンリが俺に気がついて、そう声を出して喜んだ表情を向けてきた。

………アンリのあの表情を見て、まぁ何とかなるだろうと考えた俺は現金な奴だと思ってしまう。


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