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ドフルトの動きを監視し、彼が一応騎士団長としての責務を果たした事を確認した俺は、帝都の冒険者ギルドへ行き、受付嬢におそらく長期の個人的な依頼を受けてギルドに来れなくなる事を一応伝えてから、俺は帝都の外へと出てきた。

そして、


召喚(サモン)、カルラ」


ここ最近はあまり長距離での移動が無かった故に、呼び出す事が少なかったカルラを召喚する。


「ピャァァァッッ!!」


召喚に応じてくれたカルラが、翼を大きく広げて俺に挨拶をしてくる。


「すまなかったなカルラ。最近は移動する必要が無かった所為で、カルラと空中散歩をする事が無かったものな。今日は、海の向こうにあるジーグへ行きたいのだが、その道中に軽く散歩も兼て飛んでくれ」


俺がそう言って手を伸ばすと、カルラは気にしていない様子で俺の伸ばした手に自身の頭を擦り付けてくれる。

柔らかくも、やや硬さが手に残るカルラの羽毛に俺は心を奪われそうになりつつ、


「では行くか」


そうカルラに声を掛ける。

するとカルラは、一鳴きして脚を曲げて姿勢を低くしてくれる。


「ありがとう」


俺はカルラの気遣いに感謝して彼女の体の上に跨り、体を彼女に預ける。

俺が彼女の体にしっかりと乗った事を確認すると、カルラはゆっくりと体を上げて立ち、


「ピィィィッッッ!!」


まるで、行くわよとこちらに声を掛けてくる様に一鳴きすると、翼を広げて一度折り畳む。

ヒトの体と同じ様に、しっかりと動ける様に体を伸ばしたのだろう。

俺がそう思っているとカルラは大地を蹴って走り出し、徐々に大地を駆けるスピードを上げていく。

そして翼を広げて羽ばたき、一気に空へと上昇する。

速さの中にある力強さ、そして俺の事を気遣う優しさ。

良い女であるカルラに、俺は何を返せるだろうか?

俺はそう思いつつ、少しだけカルラの体に預けていた体を起き上がらせて空の様子を見る。

天気は良好であり下には大地や湖、モンスターなどが見える。

少しだけ視線を上げれば、地平線と空の境界が見えて山などが見える。

ただ歩いているだけでは見えない風景や景色に、俺は少しだけワクワクしている。

カルラの背に乗り、上空からの景色を見た事など何度もあるのだが、何故か今は気分がとても高揚しているのが分かる。

そうしてカルラとの空の旅を楽しみ少しずつ海の方へと向かっていると、明らかに大地に異様なモノが見える。

鎧の様な重厚な皮が体を覆っているのが見え、大木の様な太さがある様に見える尻尾が揺さぶられているのが見える。

頭の方には複数の逞しくも鋭い角が見え、ドシンッドシンッとこちらまで地響きが伝わってくる様な重い足取りをしている。


「………カルラ、あの者の近くに行ってくれ」


俺がそうお願いをすると、カルラは短く鳴いて滑空をして高度を下げる。

そうして異様なモンスターの近くまで来ると、近づいて分かる重圧を感じる姿に俺はある考えが頭を過ぎる。

…話が通じる相手なら良いのだが。

俺はそう思いつつ、


「すまないッ!俺の言葉が通じるだろうかッ!?」


近くを飛んでいる俺達には目もくれずに歩き続けているモンスターに声を掛ける。

近づいてみると、歩き続けているモンスターの体には無数の傷痕が見える。

完治はしている様子だが、その体には何体ものモンスターの爪痕や人の剣などの斬撃の痕が窺える。

俺がそう思っていると、


「ヴァアアアァァァアアアァァ!」


俺の言葉に咆哮で返事をしてくれたのか、それともただ鳴いただけなのか、そのモンスターは強弱を付けながら声を挙げる。

それにしても、近くで見るとやはり大きな体をしている。

山とまでは言わないが、その重厚な皮膚も相まって岩石が歩いている様に感じる。

俺がそう思っていると、


「普通に声を掛けられるなど、今まで一度も無かった事だ~」


のんびりとした、とても今俺の目の前を歩いている生物の姿とはギャップがある優しい声がした。


「俺の名は、ヴァルダと言う。間違っていたのなら申し訳無いのだが、もしや貴方はベヒモスではないだろうか?」


俺は目の前を堂々と闊歩するモンスターにそう質問をすると、


「俺の事を、知っているのか~?」


今まで動かしていた歩みを止めて、ようやく俺の事を見てくるモンスター。

今の反応から、彼が陸の怪物、神の傑作とまで呼ばれたベヒモスだという事が分かった。

ベヒモスは怪物と呼ばれている割に、性格は温厚だったはずだ。

前の世界での話ではあるが…。

俺はそう思い、おそらく怪物と呼ばれた所以はその食欲にあると考える。

驚異的な食欲で草や木を食べるとされている。

俺の事を見てくるベヒモスの眼差しは、俺に興味がある様な視線を送ってくる。

敵意が無いのに加えて、そのベヒモスの視線はとても穏やかなものだ。


「知っている…と言いたい所ではあるが、すまないがそこまで詳しい訳では無いんだ。申し訳無い」


俺がそう謝罪をすると、


「いや~、普通に話をしようとしてくれるだけで、とてもありがたいぞ~」


喜んでいる様な声で、ベヒモスは俺にそう言ってくる。

その言葉を聞いて、


「貴方は今、何に向かって歩いてるのですか?」


俺が質問をすると、


「この先にある、川に水を飲みに行くところだ~」


ベヒモスは普通に俺の問いに対して答えてくれる。

それを聞いた俺は、


「付いて行っても良いだろうか?」


ベヒモスが川で水を飲む姿が見たく、そのくらいの寄り道なら大丈夫だろうと考えてそう聞くと、


「構わないが、見ても特別な事なんて無いぞ~?」


ベヒモスは少し困惑した様子で許可をくれる。

ベヒモス自体が、世界に一体しかいない貴重なモンスターだ。

しかもベヒモスは食欲が凄いのだ、おそらく水を飲む光景すらもしかしたら凄いのかもしれない。

俺はそう思いつつ、歩みを再開したベヒモスの後を付いて行く様にカルラにお願いした後、ゆっくりと歩くベヒモスの周りをカルラはクルクルと回りながら警戒する様に飛び続けた。

やがて、徐々に少しだけ大きな川に辿り着くと、


「疲れた~、この渇きは辛い~」


ベヒモスはようやく辿り着いた川の中に顔を突っ込む様に口を添えると、川の水が、今まで心地よい水音が聞こえてきて、美しい水面が見えていた川が一瞬で途絶えた…。


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