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帝都のスラム街をペーストした浮島に来た俺は、少し苦笑する。

俺よりも先に島へと入ったスラム街や騎士団の人達は、たった数日前まで暮らしていた自分達の家や警護で見回りに来て知っている家を見つけると、


「ボロい家だなぁ~っ」

「ここなんか、穴が空いてるぞ?」

「修理が必要だよなぁ」


皆苦笑しながらそんな言葉を放っている。

馬鹿にする様な発言かもしれないが、彼らの表情を見るとその言葉は住んでいた家を貶している訳では無い事が分かる。

皆、同じ様に家が古いとか壊れているとか言うが、その表情は苦笑しながらも懐かしさを感じている、優しい表情をしているのだ。

彼らにとって、スラム街での記憶は良いモノだけでは無かった。

それでも、自分達の力やレオノーラさんや騎士団の人達の力を借りて、合わせて、築き上げてきた歴史がこのスラム街には刻まれている。

愛着があるのは、当然と言っても良いだろう。

俺はそう思いつつ、暗くなってきている空を見て、


「レオノーラ、後は任せても良いか?今は彼らの好きにさせてあげたい」


俺が隣にいるレオノーラにそう聞くと、


「大丈夫だ。…ありがとう、ヴァルダ。君のお陰で皆も嬉しそうにしている」


レオノーラは俺の事を見てそうお礼の言葉を伝えてくると、一度視線を落ち着きつつも嬉しさや様々な感情を表している皆に視線を送ってそう言う。

その言葉を聞いた俺は、


「彼らには塔でもここでも、好きに生活をしていって欲しいと思っている。普段は塔で生活をし、息抜きの為にここへ来るといった感じで過ごすのも良いのではないかと思う。勿論、反対でも良いし塔だけで生活するのも、この浮島だけで生活するのも良いと思っている」


レオノーラに俺が考え、彼らの自由を願ってそう言う。

俺の言葉を聞いたレオノーラは、


「あぁ。皆には私から伝えておくとしよう。勿論、君からの言葉だという事も伝える」


笑いながらそう言う。

そんな彼女に、


「レオノーラ、君も自由で良いんだ。塔で生活するよりも、護ってきた彼らと過ごすのが良いと俺は思っている」


俺が心情を伝えると、レオノーラは微笑んでいた笑顔を更に明るくして、


「その言葉に甘えるが、時々で私は構わないさ。騎士団の者達は、私がいると体に力が入ってしまうだろうしな」


そう言ってきた。

むしろ、レオノーラと一緒に生活したい人も多そうだろうけど…。

俺はそう思いながらも、


「レオノーラの好きにして良いさ。………では、俺はもう行く。後の事は任せるぞ、皆に島の端は危ないと伝えておいてくれ」


レオノーラにそう言って歩き出すと、


「了解した。感謝するヴァルダ、何か困った時は遠慮なく私を呼び出してくれ」


後ろからそう感謝の言葉を聞き、俺は頭を動かして視界の端にレオノーラを映すと、頷いて片手を僅かに挙げて返事をした。

そうしてスラム街の浮島を後にした俺は、少しだけ時間に余裕があるのを確認すると、


「セシリア、時間に余裕があるから少しゆっくりとしよう。明日は早くから外に行く用事があるが、それまでは自由な時間だ。…夕食でも一緒に食べないか?」


俺はセシリアにそう聞く。

俺の言葉を聞いたセシリアは、はいと返事をして俺の後に付いて来てくれる。

そうして俺とセシリアは一緒に食堂へ行き、食事をし始める。

そこで、帰って来てからまだシェーファに会っていない事に気がつき、


「セシリア、今日はシェーファはそんなに忙しいのか?」


そう質問をする。

俺の質問を聞いたセシリアは、口に入っている料理をもぐもぐと小さな口で噛み締めて飲み込んだ後、


「シェーファでしたら、今日はエルフの皆様の森へと出向いています。何やら、エルフの儀式か何かで呼ばれているのだと思います」


俺の質問にそう答えた。

セシリアの言葉を聞き、俺はエルフが行っている事が何かと気になりはするが、おそらくエルフの人達しかその場にいてはいけないのだろうと考えると、


「そうだったのか。シェーファも、エルフの仲間が出来て喜んでいると良いのだがな…。エルフだけにしか分からない悩みなどがあるかもしれないし」


俺はセシリアに向かってそう言う。

それに続いて、


「その点だと、セシリアにシルキーの仲間を作れないのは申し訳ないと思っている」


セシリアには、同じ種族の友を紹介する事が出来ないのを申し訳なく感じて謝罪をする。

1つの家に、1人のシルキーは宿る。

つまり、1つの家に2人のシルキーは存在出来ないのだ。

俺がそう考えていると、


「いえ、私は同じ種族の仲間は必要ありません。私がヴァルダ様のお傍にいられるのは、この塔に宿っているからなのです。私以外のシルキーが現れたら、私はヴァルダ様のお傍にいられなくなってしまいます」


セシリアがそう言って悲し気な表情をする。

セシリアのそんな表情を見た俺は、


「すまない。セシリアにそんな顔をさせたくて言った訳では無いのだ」


即座に自分の発言が不適切だったと思い、謝罪をする。

俺の言葉を聞いたセシリアは、


「大丈夫です。ヴァルダ様が私を気遣って言ってくれているのは分かっています。それと、私はシルキーの仲間はいませんが、同じ妖精という種族では友が居りますし、種族に限らずに仲間がいます。だから、私は大丈夫なのです」


柔らかい微笑みを浮かべながら、セシリアは俺に向けてそう言ってくれる。

彼女の様子と言葉に、


「そうだよな、塔にいる皆が家族で仲間なのだ。そこに種族は関係無い」


俺がもう一度反省の言葉を呟くと、


「はい」


セシリアが短く返事をしてくれた。

そうして夕食を終えた俺とセシリアは、食堂を後にして俺の部屋へと移動をした。

自室に戻ると、俺はセシリアにソファに座ってくれと言い装備を外していく。

装備を外してラフな格好になると、俺はソファに座っているセシリアの対面に座り塔の事についての話をし始めた。

何か困っている事や、他にも楽しかった事や初めて知った事など、様々な質問をしてセシリアと話をする。

俺も外の世界での話を、亜人族が虐げられている話を抜いて話をする。

セシリアとの静かではあるが楽しい時間を過ごした後、セシリアは自室へと帰っていき俺も風呂に入ってから就寝をした。

明日の朝は、ドフルトを含めた新しい騎士団の動きを確認する。

アンジェの指輪を装備するのを忘れない様にしないとな、それから………。

そんな風に明日の準備の事を考えながら、いつの間にか俺は眠ってしまった。


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