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ドフルトにハンコの位置を教えるつもりで、ドフルトが着けている甲冑の籠手部分を指で弾くと、ドフルトは俺の言いたい事を察したのか俺が合図を送った腕を動かす。

机の引き出しに手が触れて、机の反対側にいる騎士からは見えないだろうと思うと、俺はドフルトの代わりに机の引き出しを開ける。

俺が開けた引き出しの中にはハンコが入っており、ドフルトはそれを見つけて手に取ると書類に目を通す。

…俺と違って書類を読める所に少し思う事があるが、まぁそれで俺の代わりは十分だろう。

俺がそう思っていると、ドフルトは書類を全て確認してハンコを押した。

ドフルトが書類にハンコを押すと、書類を渡してきた騎士が全てが終わった書類を受け取りに来て、


「では、私はこれをエメリッツ様の元へ届けに行きます」


そう報告をする。

それを聞いたドフルトは、


「了解した」


短くそう告げると、騎士は姿勢を正して敬礼をした後に詰所から出て行く。

完全に詰所の中に人がいない事を確認すると、


「大丈夫そうだな。これからお前は、騎士団長エルヴァンとして、帝都の治安維持などを行ってもらう。今までの言葉遣いで大丈夫だが、一応エメリッツと呼ばれている者にはあまり大きな態度をしない方が身の為だ。安定してパプを仕入れる為には、騎士団という隠れ蓑は必要だろうし、ドフルトとして買うにしても安定した給金があった方が良いだろう?」


俺がドフルトに対してそう言うと、ドフルトは俺の言葉に素直に頷いた。

さて、これで俺がやるべき事は終わっただろうか?

俺はそう思うと、


「ドフルト、命令だ。今日言った事を順守しろ。それ以外なら自由にしていい。この命令を最後に、俺の命令を聞く必要はない」


俺はドフルトに最後の命令を伝えると、俺は騎士団の詰所から出て行く。

帝都の街を歩きながら、俺はふと考え事をする。

ちなみに誰もいない道中で、アンジェの指輪は外してある。

一応明日、ドフルト率いる騎士団の動きを確認しておくか。

あとはやる事も無いけど、何か忘れている事は無いだろうか?

俺はそう思いながら、考え事をしながら帝都の街を歩いていると、


「ヴァルダ」


後ろから声を掛けられて、俺はそちらに顔を向ける。

そこには、最近帝都の亜人族に関する情報を探ってくれていたレオノーラが深くフードを被っていた。


「…レオノーラ。どうだった、何か新しい情報でもあったか?」


俺は小さな声で彼女にそう質問をすると、彼女は声を発する事はせずに首を振るう。

帝都でやり残した事はあるのだが、それは俺の力ではどうする事が出来ないのが心残りではあるな。

どんなに亜人族を助けたくても、主である者が許可をしなければ解放する事は出来ない。

俺が拷問で痛めつけて無理矢理許可をさせるにしても、それでは時間が掛かってしまう。

より多くの亜人族を助ける為には、今は時間を掛ける訳にはいかない。

…情けないな。

俺がそう思うと、


「………」


レオノーラが少し不安そうな様子で俺の事を見てくる…気がする。

表情があまり見えないから、雰囲気を察するしか出来ないがそんな感じで俺の事を見ている様だ。

そんな彼女に、


「大丈夫だ、こればっかりは仕方が無い事だと諦めるしかない。それに、出来る限りの亜人族を助ける事が出来たと思ってはいる。今はそれで自分達を納得させよう」


俺がそう言うと、レオノーラは頷いてくれる。

俺とレオノーラはそれ以上話す事はせずに、帝都の街を一緒に歩いていく。

そうして2人で宿屋に辿り着き、レオノーラは部屋に入るとフードを外して素顔を見せる。

その表情は、少し後悔と言うか自分の力足らずを情けなく思っている様に表情を歪めている。

レオノーラのそんな表情を見て、俺は少し彼女の気が紛れる方法を考える。

そこで俺はある事を思い出した…というか、忘れていて今まで彼女や彼女を慕っている人達に紹介をするのを忘れていた。

今日はもうやるべき事は終わっている、時間は夕方に近いがまだ明るさは残っている。

明日の朝に、騎士団の詰所に行ってドフルトがどうやって行動するのか一度監視をした後、それで大丈夫と感じたらここを一度発つとしよう。

俺はそう慌てて考えながら、


「レオノーラ、貴女と貴女の大切な仲間や護るべき皆さんに見せたいモノがあったんだ。色々とあって忘れていた、今から一緒に見てくれないか?」


レオノーラにそう言うと、俺の慌て様に驚いているのか少しキョトンとした、しかし目が少し大きく開かれている様な表情で俺の事を見てきた。

そして、


「あ、あぁ。それは構わないぞ?」


少し困惑した様子でレオノーラは俺にそう言ってくれ、俺は彼女の言葉を聞いてすぐに本の中の世界(ワールドブック)を開いて塔に帰還をする。

俺とレオノーラが一緒に塔に帰ってくると、


「お帰りなさいませ、ヴァルダ様、レオノーラ様」


セシリアが俺とレオノーラを出迎えてくれる。

帰って来た俺達の気配を感じ取り一瞬で移動して出迎えてくれたセシリアに、


「ただいまセシリア。今、時間はあるだろうか?」


俺がそう質問をすると、セシリアは俺の言葉を聞いてすぐに頷き、


「はい。例え何があろうとも、ヴァルダ様から何か指示がありましたらそちらを先に完遂するつもりです」


俺にそう言ってくれる。

俺はその言葉に苦笑をし、


「その気持ちは凄くありがたいのだが、それでセシリアが忙しくなってしまっては俺が申し訳なく思う。優先順位はセシリアの判断に任せるが、あまり俺の事を最優先と考えなくても良いのだからな?」


彼女にそう伝えると、俺の言葉を聞いたセシリアは少し悩む様な難しい表情をすると、


「ヴァルダ様のお心遣いに感謝します」


俺にそう感謝の言葉を言って頭を下げた。

…少し納得していない様な気もするが、今はそれは置いておこう。

セシリアの考えを、全部否定したい訳でも無い。

むしろ、そこまで俺の事を第一に考えてくれているのは素直に嬉しいのだから。

俺はそう思いつつ、


「では、塔の外に出るか」


レオノーラとセシリアにそう言うと、


「はい」

「分かった」


2人は俺の言葉に従って、歩き出した俺の斜め後ろに付いて来る…。

隣を歩いてくれても構わないのだがな…。

俺はそんな事を思いながら、塔の麓に向かった。


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