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こちらに迫って来るドフルトの周りにアースウォールを発動し、ドフルトの動きを止める。
動きを止めたと同時に、ドフルトを囲う様にアースウォールを発動して動きを止めると、ドフルトは危険を察したのか大剣を普通に握り直すと、俺が作った土の壁を破壊しようと大剣を振るって土の壁に攻撃をする。
しかし、
「グォォォッッ!!」
俺は破壊される前に次々にドフルトの周りに土の壁を作り続けていき、やがてドフルトが破壊する壁よりも俺が作り上げる壁の方が多くなり、ドフルトを閉じ込める事に成功した。
さて、時間も結構経っただろうし今の時間なら起きているだろう。
俺はドフルトを押し込めた土の壁を見た後、クラスチェンジを発動して召喚士になると、
「召喚、レオノーラ」
時間的にそろそろ起きているだろと思い、レオノーラを呼び出す。
黒い靄が出現し、少ししてレオノーラが靄から出てくると、
「…ここは、街の外か?」
自分が出てきた場所が帝都の街では無い事に気がついて辺りをキョロキョロしながらそう言い、続いて壁を破壊しているドフルトの野太い声と土の壁が破壊される音が聞こえて、レオノーラはそちらに視線を向ける。
そして、
「あれは何なのだ?」
レオノーラは土の壁を指差しながらそう質問をしてくる。
それを聞いた俺は、
「今、色々と計画していてあの土の壁の中心にいる男をまともに動けるように訓練させているんです。帝都の外ですが、これを首に掛ければ姿を消す事が出来るので隠密行動に適していますよ」
簡潔に今の状況を説明すると、俺はアンジェの指輪をレオノーラに差し出す。
それを受け取ったレオノーラは、
「…これ、結構大事な物なのではないか?」
少し困惑した様子で俺にそう聞いてくる。
彼女の言葉を聞いた俺は、
「確かに、大事な物ですね。その装備は1つしか持っていないので。でも、レオノーラにならそれを預けるに値するし、雑に扱う事も無いと思っているからな」
レオノーラなら大丈夫だろうと思って彼女に預ける事を説明すると、表情を引き締めて、
「ヴァルダの想いに応えられる様に、頑張って来るッ!」
そう言ってきた。
俺は彼女のその言葉に、
「あまり深く考えすぎたりしなくても…。それに、深追いしてレオノーラが危険な目に合うのは避けて欲しい、それだけは守ってくれ。引き際は大事だ」
俺がそう答えると、レオノーラは少しだけ微笑むと、
「あぁ。無理はしない。では行ってくる」
俺にそう言ってアンジェの指輪を首に下げる。
その瞬間、彼女の体が透明になっていき姿が完全に見えなくなった。
気配察知スキルを少し使ってみると、姿が消えた後にすぐに移動を開始したのかレオノーラの気配がもう移動を開始していた。
彼女が移動をしたのを確認した俺は、もう一度クラスチェンジを発動して魔法使いに戻ると、
「さて、ドフルトの方に戻らないとな」
俺はそう呟いて未だに壁を破壊し続けているドフルトの声が聞こえてくる方に視線を向けると、そこへ向かって、
「ファイアアロー」
炎の矢を放つ。
俺が放った炎の矢が土の壁に当たると、その場所の壁に炎が引火して少しだけ大きな炎になる。
これで、壁の中にいるドフルトはより熱く感じるだろう。
体力を消耗させるには丁度良いくらいだろう。
俺はそう思っていると、土の壁が破壊されてドフルトの姿が見えた。
苦悶の表情を浮かべ、どうやら結構体力を消耗している様だ。
俺はそう思うと、
「ライトニング」
ドフルトに直接攻撃を仕掛ける。
さて、どうするか。
俺がそう思っていると、
「ッッ!?ぐあぁぁッ!」
ドフルトは俺の雷魔法に気がつきはしたが、反応が、もしくは体力が消耗している所為で動きが悪くまともに食らってしまう。
威力は弱めた方であるから、大してダメージは無いだろうと思っていると、俺の予想通りドフルトは膝を地に付けた程度で済んでいる。
いつ体を動かす事が出来るだろうか?
本当ならもっと攻撃を仕掛けたい気持ちはあるのだが、間違って殺してしまったらいけないからな。
そこら辺は慎重にしないと折角の買い物が無駄になってしまう。
俺はそう思いつつ未だに動かないドフルトの様子を見ていると、
「ぐ…ぅぅう゛」
何とかライトニングの痛みを押し殺して動いている。
体に痺れがあるのか、あまり動きが良いとは言えない。
そろそろ、回復させてやるか。
俺はそう思うと、大剣を握って立ち上がろうとしているドフルトに杖を向けると、
「ヒール」
回復魔法を放つ。
ドフルトの体が淡い光に包まれると、俺が散々傷つけた体の傷が消えていくのが少しだけだが見える。
体の痛みも消えてきたのか、ヒールを掛けてから少ししてドフルトは普通に大剣を握って立ち上がる事が出来るまで回復した。
俺はそれを確認してから、また魔法をドフルトに向かって放ち始めた。
その後も俺は何度もドフルトに向かって魔法を放ち、ドフルトがダメージを受けすぎると回復を施していく。
そしてドフルトも少しずつではあるが、俺の魔法に対抗策を試していき俺に近づく事が出来る様になっていった。
しかし俺もそう簡単にドフルトの接近を許す事はせずに、ドフルトの隙を見ては俺も奴から距離を取る。
そうして今日の鍛練も終了し、俺はどうするかと地面に伏しているドフルトを見ながらそう考える。
昨日と今日は一睡もさせずに鍛練をしていた、故に今日は動きも悪くなかったし少しずつではあるが技量も上がっている。
ここで倒れられるのも面倒だしな…。
俺はそう思うと、
「命令だドフルト、今日は眠る事を許してやろう」
ドフルトに対してそう命令を出す。
俺のその言葉を聞いたドフルトは疲れ切った表情を変化させずに、ただ黙って俺の事を睨んでいる様な鋭い視線を送ってくる。
その視線を受けた俺は、
「ヒール」
ドフルトにヒールを施すと、
「今日はゆっくりと寝ると良い。ここでな」
俺はそう言って踵を返すと、
「命令だ、モンスターが襲って来た場合のみ、最低限の動きを許可する。剣を握る事は許さない」
とどめの命令を下した後、唸っているドフルトを気にしないで帝都に戻って行った。
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