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レオノーラがテーブルの上に置いてある金銭が入った袋を自身の近くに寄せると、
「…それにしても、結構貯め込んでいるのだな」
袋の膨らんだ様子を見て、レオノーラが感心した様な驚いている様な声でそう言ってくる。
彼女の言葉を聞いた俺は、
「同じ場所や、重複しても問題ない依頼を受けてまとめて受けてる状態ですからね。それに、あまり帝都では買い物はしない様にしています。買う物と言ったら、帝都でしか買えないアイテムや塔の者達にプレゼントくらいでしょうか…。食事は塔で食べる様にしていますし、遠出をする時も家族の力を借りてますし」
あまり出費は出さないようにしている事を伝えると、
「…流石はヴァルダだな」
何故かレオノーラに褒められる俺…。
何故今褒められたのだろうか?
俺がそう思っていると、
「当たり前です。ヴァルダ様は素晴らしい御方なのですから」
「はい。全ては素晴らしいのです」
シェーファとセシリアが何故か自慢げにそう言う。
ま、まぁ2人が俺の事を褒めてくれるのはいつもの事だからあまり気にならない。
感謝はしているが。
だがレオノーラに流石と言われる様な事、今の話し合いであっただろうか?
俺がそう思っていると、
「…?何故不思議そうな顔をしているのか分からないが、私が何故褒めたのか分かっているか?」
レオノーラが半目でジトッとした視線を送ってくる。
彼女の言葉に、俺は素直に首を振って、
「正直、何故レオノーラに褒められたのか分からない」
彼女に正直にそう答えると、レオノーラは少し苦笑して、
「その考えすら無かったのかもしれんな」
そう言ってくる。
彼女の言葉に更に頭を悩ませると、レオノーラは少し微笑んで、
「おそらく普通の主と名乗る者なら、配下の働いた金銭のいくらかは徴収するだろう。特にヴァルダの場合は、エルヴァンという大きな稼ぎ頭がいるからな。しかしエルヴァンからの金銭の徴収はしている様子は見えない。だから凄いと言っているのだ」
俺にそう言ってくる。
…そんな考え自体浮かんでこなかった。
確かにエルヴァンは第一級冒険者として難易度の高い、報酬が高い依頼を受けて完了しているからお金を持っているだろう。
しかし、それをエルヴァンから回収しようなんて思わないし、エルヴァンから渡されたとしても受け取る事はしないと思う。
「エルヴァンが自身の力で依頼を完了させて受け取った金銭だ。俺がそれを徴収する権利は無いさ。今は塔にいるから使う機会が無いが、また外に出て貰った時にすぐに必要な物が揃えられる様に、キチンと持っていて貰わないとな」
俺はレオノーラにそう言うと、レオノーラは笑ってソファの背もたれに背中を預ける。
俺とレオノーラの会話を聞いていたシェーファが、
「ヴァルダ様、お疲れではありませんか?」
何故か突然そんな事を聞いてくる。
そんなシェーファの様子に、
「あ、あぁとりあえず大丈夫だぞ?気遣ってくれてありがとうなシェーファ」
俺がお礼を言うと、それに続いてセシリアが、
「ヴァルダ様、食後のティータイムなどいかがでしょうか?」
ソファから立ち上がって俺にそう言ってくる。
シェーファとセシリア、それにレオノーラもまだ部屋にいてくれるのだろうし、お茶を出して貰った方が良いだろう。
俺はそう思うと、
「ではすまないが、お願いしたい」
セシリアにそうお願いをすると、セシリアは一礼をした後に一瞬で姿を消した。
その様子を、少しムッとした表情でシェーファが見ており、レオノーラは少し驚いた様な呆けた表情をしている。
すると、
「相変わらず、彼女の気配は一瞬で消えるのだな。姿を消しているのではなく、一瞬で違う場所へ移動したという事か?」
レオノーラがそう言ってくる。
その言葉に、
「セシリアは、妖精シルキー。ヴァルダ様の塔では、彼女は自由に存在を移動させる事が出来ます」
シェーファが誇る様にそうレオノーラに説明をする。
すると、
ドンドンドンッッ!!
「ヴァルダ~ッ?」
部屋の扉から殴られている様な大きなノック音がして、扉の向こうから靜佳…シュリカの声が聞こえてくる。
突然どうしたのだろうかと思いつつ、
「鍵は開いてるぞ~」
扉の向こうにいるシュリカにそう声を掛けると、扉が開かれてシュリカが部屋に入ってくる。
そして、シュリカの後ろからセシリアも入ってくる。
その様子を見て、セシリアはティータイムの為にシュリカを部屋に呼んだんだろうと察した。
俺がそう思っていると、
「…えっと、これはどういう状況なの?」
部屋に入ってきたシュリカが、部屋に集まっている俺達を見てそんな質問をしてくる。
シュリカの問いに、
「色々と話したい事があるのよシュリカ?シュリカなら、私達の言いたい事が分かるわよね?」
シェーファが微笑みながらそう答えると、シュリカは何かを察した様な表情をして、
「はいッ!すぐにお茶入れますね~」
そう言うと、俺達の前にあるテーブルにカップやポットを取り出し置いていく。
その際に、俺が彼女に贈ったティーカップなどが置かれて、使ってくれているんだなと思い嬉しく感じる。
そうして俺は、シェーファとセシリア、レオノーラとシュリカの5人でのんびりとしながら過ごしていき、やがて夜も深くなってきた事でレオノーラとセシリアが部屋に戻っていった。
そして、シェーファとシュリカが部屋に残っていると、
「ふぁ~、眠いよぉ」
シュリカがそう言って俺の部屋のベッドに飛び乗る。
そんな様子に、
「自分の部屋に戻らないのか?」
シュリカにそう聞くと、シュリカは俺のベッドに入り込みながら、
「眠いんだよヴァルダ~?凄く眠い家族に、我慢して自分の部屋に戻れって言うの?」
冗談ではありそうだが、怒っている様な言葉を使ってそう言ってくる。
シュリカの言葉に、
「いや、そういう訳では無いが…。…俺と一緒に寝る事になってしまうぞ?」
俺がそう言うと、
「どうぞどうぞ♪ここはヴァルダのベッドですから」
シュリカがそう言ってくる。
そんなシュリカの様子に、俺は浅く息を吐くと、
「………わ、私も眠いですヴァルダ様…。すぐに眠りたいです」
背後からシェーファがそう言ってくる。
シェーファの言葉を聞いて、
「…じゃあ、3人で寝るか」
シェーファとシュリカにそう伝えると、シェーファはありがとうございますとお礼を言ってくる。
彼女の言葉を聞いてから、俺は先に入っていたベッドに入り込みシェーファにも来る様に伝え、3人で川の字になる形でベッドに入ると、
「おやすみシェーファ、シュリカ」
俺が目を瞑ってそう言う。
俺のその言葉に、
「おやすみなさいませヴァルダ様」
「おやすみヴァルダ~」
両隣からそう返事が返ってきて、俺はゆっくりと夢の世界に旅立った。
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