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369頁

ドフルトの修行とは言えない鍛練は続き、やがてドフルトは血を流し過ぎた事で地に倒れた。

意識を失っている訳では無いが、顔は青ざめているし騙している訳では無いと思った俺は斬り落としたまま放置していたドフルトの腕を拾い傷口同士をくっ付けると、回復薬を取り出してそれを振り掛ける。

傷口が新鮮な故に、まだくっ付く可能性があったがやはりくっ付いたな。

斬り落としたドフルトの腕がしっかりと固定されているのを確認して、俺は回復薬をドフルトに飲む様に命令をする。

俺の命令を聞いたドフルトは、強制的に回復薬を飲み干すと空になった瓶を俺に向かって投げてきた。

しかし上手く投げる事が出来なかった様で、瓶は俺から結構な距離が離れている場所を通って地面に衝突して割れる。

まだ反抗的な態度をとる事が出来るのか、その根性には驚かされる。

俺はドフルトの根性について驚きつつ、俺は命令でドフルトを強制的に立ち上がらせると、もう一度ドフルトに大剣を握らせて鍛練を開始した。

何度も何度も腕を脚を斬り落とし、自身が大剣に振り回されている事と動きが悪い事を指摘しながら剣を振るう。

そうして夕方になる頃にはドフルトも体力の限界を迎えた様で、折角治した両腕で力を入れても大剣を持ち上げられなくなっていた。

表情は満身創痍と言っていい程疲れが出ており、俺に対しての反抗的な視線など送っていられる程余裕など無さそうだ。

俺はそんなドフルトの様子を見た後、空が紅く染まってきているのを確認すると、


「命令だ、今日はここで野宿をしろ。モンスターに襲われたのなら反撃をしても良い。ただし、移動する事は許可しない。…5歩の距離までの移動とする」


俺はドフルトに命令を出しながらアイテム袋から食料を取り出し、それをドフルトに投げ渡す。

ドフルトは俺が投げた保存食を何とか腹の前まで持ち上げられた両手で掴み取ると、僅かにだが反抗的な視線を送ってくる。

手が少しだけ持ち上がったという事は、少しだけではあるが体力も回復しているのだろう。

俺はそう思うと、袋に入っている水をアイテム袋から取り出してそれを放り、ドフルトがそれを受け取ったのを確認してから帝都の宿屋に戻った。

宿屋に戻った俺は自分が借りた一室に入ると、クラスチェンジを行ってクラスを変更し塔へと帰る。

塔に戻って来ると、まず出迎えてくれたのはセシリアだった。

いつも通りに出迎えの挨拶をしてくれて、今日は塔で何があったのかを説明してくれる。

俺はセシリアの報告を聞き、スラム街から来た人達の精神的なケアは大丈夫だろうと安心するが、娼館で働かせられていた人達はまだ精神的に危うい所がある事を理解し、彼女等には何か安心出来る場所や状況を作らないといけないなと感じる。

そうしてセシリアと共に塔の廊下を歩いていると、塔の窓から見える空が暗くなっているのを確認すると、そろそろレオノーラを帰還させても大丈夫だろうかと考えつつ、


「少し待ってくれセシリア。今、外で別で動いていたレオノーラを戻す」


歩みを止めてセシリアにそう言うと、


「はい」


セシリアは俺よりも2歩先で歩みを止めて待ってくれる。


「帰還、レオノーラ」


俺は本の中の世界(ワールドブック)を開いてそう言うと、俺の目の前に黒い靄が出現する。

少しして、黒い靄からレオノーラが歩いて帰ってきた。


「おかえり、レオノーラ。お疲れ様、情報は得られたのか?」


俺がそう出迎えの挨拶をすると、


「おかえりなさいませ、レオノーラ様」


セシリアも続いてレオノーラにそう挨拶をする。

俺とセシリアの挨拶を聞いたレオノーラは深く被っていたフードを外すと、


「ただいま。………何だか気恥ずかしいな、家に帰ると1人だったからか出迎えられる事に慣れん」


少し照れる様な表情で俺とセシリアから視線を外してそう言う。

………可愛い。

おっと、意識が完全に持っていかれてしまう…。

俺は心の中で焦りながらも、


「まだここへ来て時間も全然経過していない。それもいずれ慣れる事だと思う」


冷静を装いつつそう言うと、レオノーラは頷いて納得してくれた様だ。

そして、


「申し訳ないが、情報に関しては大した成果を上げる事は出来なかった。…すまない」


今回は情報を得られなかった様で、申し訳無さそうに謝罪をしてくるレオノーラ。

彼女の謝罪を聞いて、


「いや、レオノーラがそこまで気負う必要は無い。情報が得られたら運が良かったと思う方が良い、焦ったりすると行動が雑になったりする。それでレオノーラの存在が明るみに出るのは避けたい」


俺がそう言うと、彼女はそれでも申し訳無さそうな表情をしている。

それを見た俺はある事を思い出して、


「それじゃあ、少し情報について話しておきたい事があるのですが構いませんか?夕食を食べながらでも」


レオノーラにこれから食事をしながらゆっくりと話をしようと誘う。

それを聞いたレオノーラは話の内容が気になるのか、少し不思議そうな表情で頷いてくれる。

彼女が頷いたのを見た俺は、


「セシリアもどうだ?話はもしかしたらセシリアからしたらあまり状況が理解出来ずにつまらないかもしれないが、夕食を一緒に」


セシリアにそう声を掛けると、


「ご一緒させていただきます」


セシリアは俺に頭を下げてそう返事をしてくれる。

セシリアの言葉を聞いた俺は、


「では行こうか」


レオノーラとセシリアにそう言って歩き始め、2人は並んで俺の後ろに付いて来る…。

普通に並んでくれても構わないのだが、気を使わせてしまっただろうか?

俺はそう思いながらも食堂へとやってくると、


「大丈夫?」

「元気~っ!?」

「あ、あのこれ、お水です」

「ありがとう…ゴクっ」


久しぶりにルミルフルと子供達が一緒にご飯を食べている所に遭遇した…。

と言っても、食事をしているのはサールとソルだけで、ルミルフルはテーブルに突っ伏してヴィアンが持って来た水を飲んでいるだけに見える。

ヴィアンも食事をしている様には見えないが、すでに食べ終えたのだろうか?

俺がそう思っていると、


「あ、ヴァルダ様さま!」

「こんばんは、ヴァルダ様」


サールとソルが俺に気がついて、大きな声で俺を指差して名前を呼ぶ。

2人の声を聞いたルミルフルは頭を動かして視線を俺に送ってくると、


「…ごめんなさいね、こんな格好で」


力無く俺にそんな謝罪をしてきた。

何があったのだろうか?

俺はそう思いながら、4人の元へ向かった。


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