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アイテム袋から普通の大剣を取り出すと、それを地面に突き刺して俺も一度クラスチェンジを発動して騎士に変更する。
人前で、しかも信用していない者の前でのクラスチェンジは初めてかもしれないなと思いつつ、俺は装備を変更していつも通りの軽装と片手剣を装備する。
そうしてもう一度ドフルトに近づくと、アイテム袋に入れておいたパプの入った袋を取り出して、
「いくつあれば、お前が本気で戦う事が出来る?」
そう質問をする。
俺の問いを聞いたドフルトは僅かに目を見張ると、
「3つよこせ」
そう呟いた。
その声には我慢が出来ないのか、焦っている様な懇願している様な言い表す事が難しい声色をしている。
俺はドフルトの言葉を聞き錠剤を5つ取り出すと、ドフルトにも見える様に掌に乗せて確認させる。
パプの数を見たドフルトは、僅かに息を荒げ始めて瞳も血眼になり掛けている様子だ。
俺はそんなドフルトに手を出す様に命令すると、ドフルトはおそらく命令に従う訳でも無く純粋に俺に手を差し出したのだろうと推測する。
俺はそう思いつつ差し出された手の上にパプを乗せると、俺は少しだけ距離を取って剣を鞘から抜く。
そして、
「命令だ、体を動かし俺に攻撃をするのを許可する」
そう命令の言葉を発した瞬間、手に乗っていた5つのパプを全て一気に口に入れると、ドフルトは一瞬だけ動きが停止する。
しかし、
「オ゛オ゛オ゛オオォォォォォガァ゛ァ゛ァァァッッッ!!!」
一拍置いて、ドフルトは雄叫びよりも荒々しい力強さを感じさせる咆哮と呼んでも良い声を発した。
と同時に、彼の眼の前に地面に突き刺した大剣の柄を掴むと、それを引き抜いて肩に担ぎつつ構えた。
構えると同時に一気に俺に仕掛けてくるドフルト。
本来がどの程度の力をしているのかは知らないが、地面が僅かにヒビが入った事を見るとそこそこは力がある様に見える。
俺はそう思いつつも冷静に剣を構えると、
「アァァァァッッ!!」
ドフルトの大声と共に振り下ろされる大剣を受け止める。
あまり衝撃は無く、この力で本当に第一級冒険者並みに実力があるのだろうかと疑問に少し思ってしまう。
俺がそう考えている内に、ドフルトは連撃を俺に繰り出してくる。
基本的には力任せの振り下ろしが多く、俺はただ剣を片手で握ってドフルトの振り下ろしを受け止めているだけだ。
頭の上で金属同士の激しく衝突する音に、少しだけ辛くなってくるが我慢をする。
するとパプの影響で冷静な判断が出来ない状態になっているとしても、流石におかしいと感じたのだろうドフルトは一度距離を取ろうとする。
しかしその隙を見逃す事はせずに、俺は後退しようとしているドフルトの懐に一瞬で近寄ると、
「その程度なのか?」
俺はドフルトに煽りの言葉を言ってから、浅く剣で彼の体を斬り払った。
腹部を浅く切った故に、服と皮程度しか切れておらずに少しだけ血がぷつぷつと出ているのが見える。
ドフルトは斬られた事を腹部を見て確認すると、怒りの表情で構えを今度は剣先を俺に向ける様にして構える。
どうやら今度は突きを繰り出してくる様だ。
しかしドフルトの攻撃の速さは特別速い訳では無い、突きで仕掛けてくるという事は次に繋げる為の体の姿勢などを考えているのだろうか?
俺がそう思っていると、ドフルトがまた俺に突撃を仕掛けてくる。
突きからの連撃に備えて、俺はドフルトの突きを片手剣で僅かに軌道を逸らす。
すると、俺の考えとは違ってドフルトは怒りに満ちた様な表情を俺に向けてくるだけだ…。
まさか本当にただの突き攻撃で戦えると思っていたのか…。
俺はドフルトの考えに少し残念な気持ちを抱きつつ、彼の体に拳を叩き込んで吹き飛ばす。
ドフルトの体を殴った際に、彼の口から痛々しい声が漏れたのが聞こえたが無視して俺は吹き飛んだドフルトに追撃を開始する。
それに反応してドフルトは大剣を構えて防御をしようとするが、俺の斬撃を受け止める度に体勢が崩れて隙がどんどん出来てくる。
しかしあえて隙を見逃し、俺は構えられている大剣に刃を振り下ろしていく。
俺の攻撃を苦痛と怒りが混ざった表情で受け止めているドフルト、彼は力はある方ではあるがそれ以外が駄目だと感じる。
ただ力任せに剣を振るい、それが防がれたらもう一度振り下ろす単純な考え。
それでも駄目だったら突きでの攻撃だが、それなど大したモノでも無い…。
パプの影響は力の向上以外利点が無い、むしろ戦いにおける判断を失わせている可能性すらある。
これは、なかなか大変そうではあるな。
俺はそう思いつつ、
「お前の実力はその程度のモノなのか?」
ドフルトが反応出来そうな速度で攻撃をしながらそう質問をする。
俺の言葉を聞いて、俺の攻撃の隙を突いてドフルトは何とか反撃をしてくる。
しかし手数は少なく、未だに俺の方が優勢だ。
大剣故の片手剣の速さとの相性が悪い。
俺が片手剣を5回振るう毎に、ドフルトが大剣を1回振るえれば良い方だ。
これでは、ドフルトに任せることなど出来ない。
俺はそう思い、
「どうだ?実力の差を思い知ったのならこれで終わらせて、次のステップに行きたいのだが?」
ドフルトにそう質問をする。
それを聞いたドフルトは、荒くしていた呼吸のまま俺の事を睨み付け、
「オ゛オ゛オ゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ッッッ!!!」
大剣を大きく振り上げて俺に向かって来る。
冷静な判断が出来ないとは思っていたが、これではまるで狂人だな…。
俺はそう思うと、俺に向かって来るドフルトの横を通り過ぎる様に一瞬で移動する。
その際に、
「ぐッ…ガア゛ア゛ァァァッッ!!」
今度は浅くでは無く、しっかりと剣を振るってドフルトの左腕を斬り落としておく。
いくら薬の影響で冷静な判断が出来なくても、痛みを消す事は出来ない。
俺はそう思いながら、
「片手で、その剣を自由自在に振るえる様になって貰う」
ドフルトにそう言うと、ドフルトは残った右腕に力を込めて大剣を何とか持ち上げる。
力を入れた所為で、斬り落とした左腕があった肘上辺りの傷から血が溢れる様に流れ出す。
そして、ドフルトは雄叫びを上げて俺に再度突撃を仕掛ける為に地面を蹴った。
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