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ブルクハルトさんが握っている袋を見ていると、俺の視線に気がついたブルクハルトさんが袋を僅かに挙げると、


「これはパプです。ドフルトの摂取量を考えると、おそらくそれほど多い訳では無いと思いますが…」


俺の疑問に答えてくれる。

ブルクハルトさんが説明した瞬間、ドフルトの視線が、おそらく意識全てがブルクハルトさんの持っている袋に注がれる。

それほど、彼はパプを使用しているのだろう。

挑発をした俺など、どうでもいいと感じる程に…。

俺はそう思いつつ、


「これを与えないと、ドフルトは冷静な意識や態度を取る事も出来ずに契約すらまともに出来ませんからね…」


ブルクハルトさんは溜め息交じりにそう呟くと、持っていた書類を脇に挟み空いた手を袋の中へ入れると、中を探る様に動かしている。

そうして袋から手を抜き取ると、


「ビステル様はパプは見た事がありますか?」


俺にそう聞いてくる。

ブルクハルトさんの質問を聞いた俺は、過去に見た事があるパプの事を思い出す。

確か、レベルデン王国でゾ…ゾル…何とか先生が使っていたのを見た記憶がある。

俺は当時の事を思い出しながら、


「はい、普通の白い錠剤の様な物でしたけど」


ブルクハルトさんの問いに対してそう答えると、俺の言葉を聞いて一回だけ頷くと、


「それは、また上質なパプの様ですね。純白でしたか?」


俺に更にそう質問をしてくる。

何故ここまで聞かれるのだろうと思いつつ、


「そうですね。真っ白でした」


そう答える。

それを聞いたブルクハルトさんは、握っている手を開いて俺に見せる様に差し出してくる。

そこには、


「緑…ですか?」


緑色の錠剤が握られていた。

俺が前に見たモノとは形は同じだとしても、色で大きな差がある。

俺がそう思っていると、


「ビステル様、パプとは何かご存知ですか?」


ブルクハルトさんが俺にそう聞いてくる。

その言葉を聞いた俺は、


「違法な薬物…という認識でしか俺は知りませんね。服用すると、一時的な力の強化があり、しかし反対に冷静な判断が出来なくなっていた人を見た事があります。依存度が高いというのも知っていますが」


改めて聞かれると、あまり詳しくは知らないんだなと感じつつ俺はそう答える。

俺の言葉を聞いたブルクハルトさんは、自身が持っているパプに視線を向けると、


「パプは、種類はありますが大まかに説明しますと2種類に分類されます。1つは、この様に様々な薬草とモンスターの骨を材料とした物です。そしてもう1つは、死した精霊が成るという魔石を砕いた物です」


そう説明をしてくれた。

死んだ精霊が成る、魔石…。


「精霊は希少な種族であると同時に、様々な場所に見えず宿っている者達でもあります。そんな精霊達は生涯を終えると、拳ほどの魔石になるのです。そしてその魔石が、次なる精霊の卵でもあるのです」


つまり、パプが存在しているという事は同時に犠牲になっている精霊が存在している…という事か…。

俺はそう思うと、つまりレベルデン王国で見たパプは精霊の亡骸であると同時に命を削ったモノという事だったのか…。

見過ごしてしまった…。

レベルデン王国で見たゾル何とか先生がどうなったかは知らないが、生きているのだとしたら彼もパプの使用を続けているだろう。

それに奴が配っていた者達は、顔もすでに記憶から消えかけているし名前すら知らない…。

パプを使用する者がい続ける限り、精霊達が犠牲になってしまう…。

俺が頭の中で後悔をしていると、


「帝都にも、その上質なパプが貴族の間で出回っている様なのです。先日、私の知人がそれを教えてくれました。…騎士団の者と言う名目で、調査は可能でしょうか?」


ブルクハルトさんが、小さな声で俺にそう言ってきた。

それを聞いた俺は、彼が情報を渡してくれて騎士団に大きな依頼をしてくれたのだと察し、


「…出来る限り調べるつもりで頑張りたいですが、俺はあまり情報収集が得意ではありません。情報収集が得意な者はジーグでの密偵を任せてしまっているので…。正直に言いますと、俺でその依頼を果たせるか自信がありません。ですが、精霊が犠牲になってしまっている事を聞いて諦める事はしたくない。出来る限りの手段で調べてみます」


俺はブルクハルトさんにそう答える。

それを聞いたブルクハルトさんはお願いしますと俺に伝えてきた後、


「では、ドフルトの契約に移りますね」


彼はドフルトの事を見てそう言ってくる。

そして、


「一応言っておきますと、このパプはモンスターの骨を原料にした物ですので、依存性は高い方ですが力を倍増する効果はあまり大きくは無いので安心してください。偽物という訳ではありませんが、よりパプを再現した薬物と考えてください。違法な物であり、依存性と精神異常を起こし力の上限が変化する物を、総じてパプと呼んでいるのです」


ブルクハルトさんは俺に確認する様に説明をしてくる。

それを聞いた俺は、


「なるほど、総じての名称だったんですね…」


理解したという意味も込めて言葉を発すると、ブルクハルトさんは少し息を吸った後、


「口を開けよ」


いつもよりも低い声でそう命令を発する。

しかし、ドフルトはその命令を聞いたにも関わらず口を開こうとしない。

命令が聞こえなかった?

もしくはパプの効果が切れて、まともな思考が出来ていないのか?

俺がそう思っていると、


「…相変わらずの剛毅。私程度の者の命令など聞くつもりは無いという意志の強さは目を見張るモノがありますね」


ブルクハルトさんが呆れた様な、しかし褒めている様な言葉を発して、


「命令だ、口を開けよ」


もう一度今度は命令と言うと、ドフルトはゆっくりと顎を小刻みに上下させながら口を開いた。

口が開いていく毎に、ドフルトの表情が険しくなり顔には血管が浮き上がる。

どうやら、ブルクハルトさんの命令に抗おうと勝手に開く口を閉じようとしていた様だ。

しかし彼の抵抗空しく、ドフルトはしっかりと口を開けると、彼の口腔に緑色のパプを投げ入れた。

少し勢いがあった故に、生物としての反射で勢い良く飛んできた異物を飲み込んだドフルト。

もしくは、パプ故に飲み込んだ可能性もあり得る。

俺がそう思っていると、ドフルトがパプを飲み込んでからすぐに変化が訪れた。

俺とブルクハルトさんを下から見上げるその視線は、明らかな敵意と殺意を宿していた。


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