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翌朝、昨夜に早めに眠った事で目覚めが良く寝起きだというのに意識がハッキリとしている。
今日は朝早くから騎士団の詰所に行き、新人冒険者達に装備を渡さないといけないな。
昨日の夕食の際に、レオノーラに相談した結果貸す程度の事なら構わないと許可を貰った事だし、装備を渡すという事が騎士としての立ち振る舞いを心掛ける様に伝えれば大丈夫だろうか?
一応今俺が従えている騎士達が問題行動をするのは、エメリッツに対して面倒な状況になってしまうのは目に見えている。
俺はそう思うと、自室で装備を見に着けて食堂へと行くと、
「おはようございます、ヴァルダ様」
すでにエルヴァンが、軽い食事を手に俺に挨拶をしてくる。
相変わらず朝が早いな。
俺はそう思いつつ、
「おはようエルヴァン。…今日は1人なのか?」
エルヴァンにそう質問をすると、エルヴァンは体ごと頷く様に頷き、
「はい、今日はルミルフル達には休んで貰っています。いくら強くなりたいと急いでいるとしても、無理をして体を壊してしまっては意味がありません。ただでさえ、レベルの上がり難さはあの者の精神的に大きな圧を掛けているでしょう」
俺にそう伝えてくる。
彼女の為に、あえて今日は休みにしたという事か。
エルヴァンの言葉を聞き俺はそう考えて、エルヴァンがルミルフルの事を考えている事を嬉しく思い、
「エルヴァンがそこまで彼女の事を考えてくれている事に、俺は嬉しく思うと同時に感謝をしている。俺が色々と立て込んでいる所為でやらなければならない事をエルヴァンに任せてしまっている。すまないな」
俺がそう言うと、エルヴァンは首を左右に振る様に体を揺らすと、
「私も好きでやっている事ですので、ヴァルダ様が気に病むような事はありません。彼女達の戦い方は私の力と技術を磨くモノと同じ様で違う事もあります。私はそれを知りたい、その為に彼女達のレベル上げを手伝っていると言っても過言ではありません。私の方こそ、この様な機会を与えて下さってありがとうございますヴァルダ様」
俺にそう感謝の言葉を告げてくるエルヴァン。
エルヴァンの言葉に、俺も感謝をもう一度伝えてから俺はすぐに塔を出る事を伝えて軽い食事を食べてから、外の世界へと戻った。
外の世界の騎士団の詰所に戻ってきた俺は、急いでクラスチェンジを発動して騎士になると、エルヴァンの装備に似ているかしっかりと確認した後、昨日約束した冒険者達が来るのを待つ事にした。
俺が詰所に戻ってきてから少しして、僅かに人の話し声が聞こえてその話し声が近づいてくるのを確認すると、彼らが来たのだろうと思い適当に座っていた椅子から立ち上がる。
そうして詰所の扉がノックされると、俺は扉を開けてノックしてきた人達が昨日の冒険者達だという事を確認すると、
「入れ」
短くそう伝えて中へと促す。
冒険者達は少し緊張した様子で詰所の中へと入ると、辺りを見回し始める。
何をしているのだろうかと思っていると、
「騎士団の建物って、こんなに紙とかに溢れてるんだな」
1人の冒険者がそう呟く。
その言葉に、
「確かに。もっと鎧とか剣とか置いてあると思ってた」
「だな。依頼書みたいな紙の方が圧倒的に多いな」
他の冒険者が同意の言葉を発する。
俺は彼らのその言葉を聞き、
「言いたい事は理解出来るが、冒険者達と違い騎士達の装備は帝都の国民の税などで支給されている。そう簡単に装備を新しく出来る事も無く、古い物をしっかりと整備をして使い続けている。故に、これからお前達に貸し出す装備も簡単に傷つけて良い物では無い事を心に刻んでおけ」
騎士団のイメージを保てる様に、話をでっち上げながら言葉を発してアイテム袋に手を入れると、そこから本物の騎士団の装備を取り出す。
取り出した装備を1人1人に手渡していくと、俺から手渡された装備を見た冒険者達が緊張した様子で表情が固くなる。
しかし時間も惜しい故に、
「装備を着けろ。…女は彼らと私が外に出るまで待っていろ」
そう指示を出すと、男の冒険者達が自分達が着けている装備を一度外して騎士団の鎧を装備していく。
流石に女性冒険者も男達の着替える姿を見たくはない様で、視線を逸らして男達を視界から外している。
そうして男達が着替え終えた後、俺と男性冒険者達は一度詰所の外に出て女性が着替え終えるのを待つ。
その際に、一応怪しい行動をしていないか気配察知スキルを発動しておいて何かを持ち逃げするのかだけ監視しておく。
着替えを覗いている訳では無く、女性冒険者の動きだけを確認しているからギリギリセーフだと信じたい。
俺が心の中でそう思っている内に、女性冒険者は特に怪しい行動をする訳でも無く装備を交換して詰所の扉を開けた。
そうして改めて詰所の中に、騎士見習いの彼らと共に入ると俺は、
「ではこれから3人、2人、2人という組み合わせで帝都の街の巡回をお前達に任せる。その辺りは同じ冒険者パーティーで組むのも許可する。しかし3人の組は帝都の商店が並んでいる大通りの警備を任せたい。あそこは人の行き交いが盛んであるが故に、争い事が絶えない場所だからな。私は個人の仕事がある、その場の判断で行動し、拘束する許可もしよう。しかしお前達は見習いだとしても騎士である事に変わりは無い。亜人族だろうが人族だろうが、公平な立場で動く事を大切にしろ」
彼らにそう伝えた後に、彼らは僅かな話し合いの時間を設けて巡回するメンバーと場所を決めて彼らはすぐに出発した。
俺は彼らが全員それぞれの巡回する方へ向かった事を確認してから、俺はクラスチェンジを発動して召喚士にもう一度変更すると、レオノーラを呼び出す。
「おはよう。どうかしたか?」
朝早いにも拘らず俺の呼び出しに来てくれる彼女に感謝しつつ俺はそんな彼女に、
「おはようございます、レオノーラ。突然で悪いんだが、書類を書いて欲しいんだ」
俺はお願い事を告げる。
レオノーラは俺の言葉を聞き少しジトッとした目で俺の事を見てくると、
「今度は何をしたんだ?」
最初から俺が何かをやらかしている事を前提にそう言ってきた…。
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