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35頁

威圧スキルと言っても、今までみたいに全員を気絶させる程では無い。

感覚的には、魔物に狙われた時の様な感覚くらいに抑えているつもりだ。

流石にこんな人が多い所で、男女失禁祭りなど見たくも無い。

俺は学んだのだ、怒りに任せて威圧スキルを発動しても相手には死の恐怖を感じさせるだけだと。

でもそれよりももっと効率が良い方法がある。

それは、程よい威圧でいつでもお前達を狙っているのだぞと、しつこい嫌がらせの恐怖を教える方が良い。

俺も見たくも無い失禁を見なくて済むし、いつ俺が現れるか分からない状態で亜人に対して非道な事をしない様にするために。

それと、()()()()()

俺はそう思いながら、


「今騎士団長を侮辱した者は誰だ?前に出ろ」


周りの野次馬達に聞こえる様に声を出す。

と言っても、俺の威圧スキルで皆黙ったから普通に声を出しただけで聞こえたとは思うが。

俺がそう言っても、周りの者達から前に出ようとする者はいない。

すると、


「…そんな事で今、あれほどの威圧をしてきたのか?」


俺の方に手を向けてくる騎士団長が、俺の様子を窺う様に見ながらそう聞いてくる。


「…そうです。俺は亜人を侮辱する者を許さないッ!あれほど可愛く、美しく、気高い者達はいないと思っています。それに、俺も含めてどいつも同じ様な人族よりも、様々な特徴がある亜人が凄いじゃないですか。ある者は耳が長い、またある者は耳がモコモコの毛で覆われている。ある者は尻尾で感情を表現し、ある者は尻尾で攻撃をする。亜人は俺が知らない魅力的な所がいっぱいある。俺はそんな亜人達を自分の棲み処にお持ち帰りして幸せにしたい!亜人迫害などどうでも良い!俺は俺のやりたい事をする、それは俺の自己満足だ。善意なんて大層なモノじゃない」


俺がそう言うと、今まで固まっていた野次馬達がヒソヒソを何かを耳打ちし始める。

これで、奴らの敵視を少しでも俺に向ける事が出来たと良いが。

俺がそう思っていると、


「…どうやら少し誤解をしていた様だ。非礼を詫びよう」


騎士団長が変質させていた腕を元に戻して剣も腰に差し直す。

あぁ、もう少し見ていたかった…。

俺がそう思っていると、


「名は?」


騎士団長が俺の元まで歩いて来てそう質問しながら、俺に手を差し出してきた。

…握手という事だろうが、出来るならあの腕の方が…。

俺はそう思いながらも、


「ヴァルダです」


自分の名前を教えて騎士団長と握手をする。

すると、


「私はレオノーラ・ヒルデガルト・ヴァルトルーデ・レントリヒだ。帝都の騎士団長をしている」


騎士団長が名乗ってくれるのだが、名前が長すぎないだろうか?

一体どう呼べば良いのだ?

俺がそう思っていると、


「…皆からはレオノーラと呼ばれている。貴殿もそう呼んでくれて構わない」


騎士団長…レオノーラさんがそう言ってくれる。


「分かりました。よろしくレオノーラさん」


俺がそう言うと、


「よろしくと言いたい所だが、私はまだヴァルダさん、貴方の事を信用していない。今日は見逃すが、次この帝都で問題を起こした時は全力で拘束させてもらう」


レオノーラさんが俺にそう言って、握手してくる手を強く握ってくる。


「…それは嫌なので、当分は大人しくしますかね」


俺がそう言うと、


「貴方の様な変人、嫌でも面倒な事に巻き込まれると思うがな」


レオノーラさんがそう言って握手していた手を離して、踵を返して歩いていく。

…亜人迫害の影響が強いこの帝都で、何故彼女の様な人が騎士団長をしているのだろう。

俺はそう思いながら、野次馬だった人達が見学していた騒ぎが収まり見る物が無くなって動き出した人混みに紛れて歩き出す。

…さて、どうしたものかね。





ヴァルダと離れて歩いていたレオノーラに、


「レオノーラ様、あの者に監視を付けなくても良いのですか?」


一緒に近くまで警邏をしていた騎士団の団員、獣人のマルガレーテがそう進言する。

すると、そう言われたレオノーラは厳しい顔で、


「そんな事をしたら、いつあの者が監視に手を出すか分からん。私の剣を躱す事が出来る程の強者、気配を感じ取るのも人を超えている。下手に手を出せば殺されるのはこちらの可能性がある。顔も覚えたし、名前も一応聞いた。当分はそれで様子を見よう」


マルガレーテにそう言う。

レオノーラは自分の剣をあんなに簡単に躱された事が無かった、おそらく彼は人では無いのだろうと一瞬考えてしまう。

自分は龍人、生まれながら肉体は人族を超えており、他の獣人などの亜人よりも強い存在なのだ。

そして何より、騎士でありながら龍の炎を操る事が出来る。

普通ではありえない事だが、生まれた時の血筋がそれを可能にした。

そんな私に、彼は驚きながらも対応した戦いをした。

…そしてあの威圧スキル、殺意が足から昇ってきて体を包み込み、口と鼻から体内に入り込んで心も体も全てを彼の手に捕まれた感覚が、未だに取れ切れていない。

断言できる、今は手を出すべき相手ではない。

装備も魔族との闘いで破損した物などを直してもらっていて、今は普通の騎士と同じ装備を身に着けている。

…私はまだまだ弱いのだな。

これでは()を護る事なんて出来ない…。

もっと鍛錬をしないといけないな。

レオノーラはそう思いながら、ヴァルダが言った言葉を思い出す。


『俺は亜人を侮辱する者を許さないッ!』


「…あんな事を言う者がいるのだな」


レオノーラはそう呟いて、自身の手を見る。

剣を振りすぎた手のひらは、肉刺が出来ては潰れてを繰り返して皮膚が固くなっている。

そして、龍人の力を使う時に変質する手を思い出して、彼はこのような手でも、美しいと言ってくれたのだろうか…。

レオノーラはそう考えて、自分が乙女の様な変な事を考えている事に気づいて頭を振る。

その際に、彼女の紅蓮の髪も振り回されて、やや後ろを歩いていたマルガレーテの顔にビシバシ当たって声に出さないで痛みと戦っていた。

それを知らずにレオノーラは、心もまだ鍛錬が足りないと1人考えていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 問題を起こした?お前から喧嘩売って来ただろ
[一言] 今のところ口だけ野郎か
2019/11/16 00:52 退会済み
管理
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