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俺の言葉を聞いた女性が首を傾げているが、聞きたい事はそんなに難しい事では無い。

俺はそう思いつつ、


「貴女達は、自分達がどうやって連れて来られたか知っていますか?」


女性にそう聞くと、女性は俺の問いを聞いて申し訳無さそうな表情をすると、


「すみません、それが私や他の人達もここへ来た方法が分からないのです…」


俺にそう言ってくる。

彼女の言葉を聞いた俺は、少し落ち込みそうな女性に更に、


「それはつまり、何か檻や箱の様な物に押し込められて周りを見る事や様子を探る事が出来なかったからですか?」


質問を続ける。

俺の質問を聞いた女性は首をゆっくりと振るうと、


「いえ、私達は馬車に乗せられて、1つの鎖で繋がれていました。帝都に近づくとどんどん眠気が襲って来て、気がついたらここへ…。檻の中に入れられていたのです」


俺に簡潔に説明をしてくれる。

そんな状態の馬車で帝都に入るには、男の身分を証明する物が必要だ。

商人でも無い彼が、大勢の女性達を馬車に積みここ帝都に簡単に入れる訳では無いだろう。

奴隷商人に売るという名目で、検問所を通る事が出来たのだろうか?

いや、ならば帝都の外で売買を終わらせて、何の不安も無く奴隷商人に彼女達を任せれば良いだけの話だ。

しかし男は奴隷商人に売る事はせず、自分の力で彼女達を売っていた。

利益の違いは大きいとは思うが、それでもやはり引っかかるモノがある。

男はどうやって彼女達を、検問に引っ掛からずに通り抜ける事に成功したんだ?

俺はそこまで考えて、ふと自分の足元にある床の穴に意識が集中する。

男は俺が襲撃した時、この穴に入っていった。

つまりこの穴は、ただの穴では無くどこかに繋がっているのかもしれない。

俺はそう思うと、少し考えた後、


「すみませんが、女性の皆さんの中で小柄でまだ服を着替えていない人はいますか?」


女性に対してそう質問をする。

俺の言葉を聞いた女性は、


「す、少しお待ちください」


少し慌てた様子でそう言うと、振り返って頭を左右に振って視線を彷徨わせる。

すると、


「あ…」


声を漏らして移動をし、檻のある部屋へと戻っていく。

少しして檻のある部屋から、俺のいる床に穴が開いている部屋へと女性が戻って来ると、


「この方くらいの背丈で大丈夫でしょうか?」


1人の少女と言っても過言では無い、幼さを感じさせる姿の女性を連れて来た。

バルドゥよりも背が僅かに低そうに見える。

俺は彼女の連れて来てくれた女性にお礼を言い、連れ来られた少女の様な女性は自分が何故この場に呼ばれたのか理解出来ない様子で少し恐れている様子だ。

俺はそんな少女の様な女性に、


「少しお願いしたい事があって、呼び出してしまいました。怖がらなくて大丈夫ですよ」


膝を折って目線を彼女に合わせると、少女の様な女性は少しオドオドとしながらも、


「な、何をすればよろしいですか?」


俺のお願いに協力的な返答をしてくれる。

彼女の言葉を聞いた俺は、少し体勢を変えて彼女に床にある穴を見せる様に体を動かすと、


「この穴を先がどうなっているのか知りたいのですが、あいにく俺の体では少し動き辛そうで困っているんです。この穴に入っても大丈夫そうな人を連れて来て貰える様に、俺が彼女にお願いをしたんです」


俺がそう説明をする。

それを聞いた少女の様な女性は、


「こ、この穴に入って先がどうなっているのか見てくるだけで良いのですか?」


床にある穴を見ながらそう聞いてくる。

俺は彼女の問いに、


「はい、行き止まりなのか、それとも入り組んでいるのか。もし可能であれば、入り組んでいたらそこを抜け出せるのか探って欲しいのですが…」


そう答えて少女の様な女性の事を見ると、


「そ、それくらいでしたら大丈夫です」


彼女は先が分からない恐怖に怯えつつも、了承の言葉を伝えてくる。

彼女のそんな言葉を聞き、


「もし危険を感じたら、すぐに引き返してくれて構いません。その時はまた違う手段を用いるだけですので、あまり気負わずにしてください」


俺が責任などを感じさせない様にそう伝えると、少女の様な女性は少し気持ちが軽くなったのか返事をした後に穴の中に入っていく。

俺と女性はそれを見送り、彼女が戻って来るのを静かに待つ事にする。

時々聞こえる、慌ててる様な声にハラハラしつつ待っていると、やがて少女の様な女性が帰ってくる。

その表情は驚いた様な表情をしており、穴の先にどのような景色が広がっていたのだろうか、それとも行き止まりだったのだろうかとこちらもドキドキし始める。

そして少女の様な女性が口を開くと、


「外に…繋がっていました」


まるで自分にも説明する様に説明をしてくれた。

俺は彼女の言葉を聞き、


「それは、建物の外という事か?ここは歓楽街なのだが、歓楽街ではない場所に出たという事か?」


俺がそう質問をすると、彼女は首をゆっくりと左右に振り、


「おそらくですが…この街自体から抜けている…と思います」


俺の問いにそう答える。

俺は彼女の言葉を聞き、ある可能性が頭に浮かぶ。

馬車に乗っている最中に眠気が襲ってきて、気がついたらすでにこの建物の檻に入れられていたという説明された。

もしこの穴を直接通り、女性達を運び入れたのだとしたのなら…。

俺はそこまで考えた後に、今はそんな事を考えるよりもこの好機に便乗してしまおうと考える。

少女の様な女性の体で余裕があるくらい狭い方の穴ではあるが、それでもこちらの方が問題無く帝都から出る事が出来る。

俺はそう思うと、しかし一斉にこの穴を移動するのは穴自体に問題があると考え、少し穴を広げてしまおうと考える。

俺はそう思いつくと、


召喚(サモン)、ノアーベルム」


土、大地に関する事においては彼に任せる事が一番だろうと考えて彼を呼び出す。

俺の足元に黒い靄が出現すると、


「お呼びでしょうかな、ヴァルダ様?」


俺の足元に、小さな老人が現れる。

ドワーフの男達よりかは細くはあるがそれ以上に長い髭を蓄え、目印となる赤い帽子がよく見える。

大地の精霊、ノーム。

土の中を泳ぐ様に移動できる彼に、この問題は解決してもらおうと考え、


「ノアーベルム、この穴をもう少し広くしそして頑丈にする事は可能か?」


大地の精霊に、俺はそう質問した。


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