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356頁

男の負傷を回復魔法で治してあげると、男はどんどん自分の存在を小さくしていく。

呼吸は小さく浅く、俺と顔を合わせない様に視線を下げており、体も小さく折り畳んでいる。

俺はそんな男に、


「俺は何度同じ質問をすればいいんだ?」


そう呟くと、男は下げていた視線を勢いよく上げて俺の事を見て来ると、


「ふ、婦館ではただの客として行っていただけだ!それ以外の何者でもない!」


俺の問いにようやく答えてくれる。

俺はその言葉に、


「金銭を支援していたという事は無いのか?お前とその周りの者達を解放する様にと、帝都の上層部が動いているが?」


再度質問を投げると、男は首を何度も何度も左右に振って、


「そ、そんな事は知らない!私はただの1人の客なのだ!」


俺にそう真剣に言ってくる。

俺はその言葉を聞いて、


「なるほど、では貴様の言う事は信じてやろう」


男に対してそう言うと、男は僅かな助かるかもしれないという希望に、恐怖に染まりつつあった表情に笑みが宿る。

そんな男の様子に、


「だが、それは俺の聞きたい言葉では無い。お前は婦館の関係者として、俺に捕まり処刑されなくてはいけない。でなければ、あの婦館で甚振られ、生きる事に絶望してしまった彼らの、そして殺された者達の無念を少しでも晴らしてあげなければいけないのだからな。安心しろ、正直に言った貴様に嘘を吐かせるつもりは無い。今から婦館で行われていた様に、貴様も、貴様の後に続く周りの者達も全て同じにしてやる。嘘を真実と心に、体に刻みつけてやる。…俺の勝手にやっている事だ、彼らに頼まれた訳でも無い。故に、俺も貴様の家族に同じ事をされたら文句を言うつもりは無い。出来れば…だがな」


俺は男を見下ろしながらそう言い、男の体を殺さない程度に痛めつけ始めた。

全身を砕きその度に回復させ、回復をさせると婦館を支援していた関係者かどうかを質問する。

淡々と、ひたすらに同じ事を繰り返す。

男は最初は否定していたが、痛みによる恐怖で心が折れて関係者だと嘘を吐き散らす。

その嘘を聞く度に、俺はそれは嘘だと伝えて男の体を壊す。

次第に、男は精神がおかしくなっていき悲鳴を上げる事が少なくなる。

俺もそんな男に合わせて、質問もせずに踏みつけ回復させ、蹴り上げて回復させ、臓物を、骨を、肉を壊して回復をさせ続ける。

本当なら、婦館で彼らに嬲られていた人達にやらせた方が良いのだろうとは思う。

しかし反対に、彼らにこいつらともう一度会わせるという事自体が俺自身許せる事も出来ない。

彼らには、事後報告になってしまうな。

俺はそう思いつつ、男の体を壊し回復させる事を止めない。

黙々と、永遠とも感じられる程貴族の男を拷問し続ける。

そしてようやく、


「貴様が捕まった理由は何だ?」

「は…い。…わた…し…が、違法…の婦…館…に…支援を…し…てい…た…から…で…す…」

「ただの客として婦館にいた訳では無いという事か?」

「は…い…。支援…して…い…たの…で…つい…で…に…遊ん…でい…ま‥した」


俺の問いに対して、丁寧に反省している様に答える様になった。

しかし、少し言葉を区切り過ぎているな。

俺はそう思うと、今度はしっかりとした言葉を話せるくらいまで拷問を再度開始した。

そして遂に、


「お前は婦館の関係者…」

「はい、私は婦館に支援金を払い、より良い嬲り甲斐のある娼婦を手配したりして貰っていました。支援金は金貨250枚です」

「婦館の、普通の客としてあの場にいた訳では無い…」

「はい、あの日も支援金を渡しに行ったついでにいつも通り、娼婦を嬲っていました。そうしたら、騎士団長エルヴァン様がやって来て、私は抵抗空しく捕まってしまいました」


俺の問いを最後まで聞かずとも、ある程度の状況を話せるくらいまで追い詰める事が出来た。

視線は一点を見つめ、最低限の瞬きすらしておらず、真実を言っている様にしか見えない。

彼の中では、もうそれが真実になったのだろう。

彼は今の嘘か真実かも分からない言葉を、完全な真実だと思い込んでいる。

どんなに、本当はただの客なんだろ?

そう聞いても、自分は婦館を違法だと知りながらも支援をしていたと、言葉を曲げる事は無い。

ここまで自白しているのだ、エメリッツがこの男をどうするかは知らないが、簡単に開放する事も出来なくなるだろう。

俺はそう思うと、捕まえた貴族達の事を見る。

今ようやく完成した真実しか言葉を発さない貴族の男の他にも、貴族の連中はまだいる。

彼らにも同じになって貰わないといけない。

俺はそう思うと、次の貴族の女性にキュア・ヒールを施した。






少しして、捕縛した貴族達全員を真実しか話せない状態にすると、


「さて、これらをエメリッツに引き渡さないといけないな」


俺は檻がある部屋から出てそう呟くと、クラスを変更して召喚士(サモナー)になり本の中の世界(ワールドブック)を開き、


召喚(サモン)、レオノーラ」


レオノーラを呼び出す。

黒い靄が出現してから少しして、


「すまない、少し遅れてしまった」


レオノーラが黒い靄から出てくると同時に謝罪をしてくる。

俺は彼女のその言葉に、


「気にしないでくれ。むしろ突然呼び出してしまってこちらこそ悪い。少しお願いしたい事があってな。婦館での客と従業員をエメリッツに引き渡す事が決まったのだが、書類の事は俺にはさっぱりなのだ。すまないが手伝って欲しい」


俺がそうお願いをすると、彼女は少し驚いた様子で、


「…よくエメリッツ殿が貴族である客を引き渡す様に言ってきたな」


そう言ってくる。

彼女の言葉に、


「正確には、貴族でありただの客である者達は普通に解放しろと命令されたのだが、彼の言葉を上手く利用して貴族達を引き渡す事にしたんだ。引き渡した後に、エメリッツがどう動くかは分からないが、別に構わないだろう」


俺がそう答えると、レオノーラは檻が置かれている部屋が気になったのかそちらに視線を向ける。

そんな彼女に、


「別に特別何かをした訳では無い。ただ、自分達が行ってきた事を身を持って知った事くらいだろう」


俺がそう答えると、レオノーラは確認する様に檻の置かれている部屋の扉を開いて中の様子を覗き見た。


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