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エメリッツの言葉を聞いた俺は彼とは考えている事が全く違く、相容れない事が改めて実感する事が出来た。

おそらく一生、彼と話し合ったところで互いの意見が一致するとは思えない。

エメリッツがどう思っているかは分からないが、俺はこの会話だけでそう確信する事が出来た。

俺はそう思い、


「エメリッツ殿の考えは理解した。では、私は何をすれば良いだろうか?」


エメリッツに対してそう問うと、


「貴方が捕縛した婦館の客、彼らの解放を私は求めます。エルヴァン殿も全て捕まえた人達を解放しろと言われたら、折角捕まえた者達を助ける様な事をした私達に遺恨を残してしまいますでしょう?落としどころは、婦館でただの客として来ていた者達の解放だけに済ませましょう。彼らはただ欲を解消しに婦館へ行っただけの事。捕まる理由などありません。彼らは被害者なのですから。反対にエルヴァン殿の言う娼婦などに対しての不当な行いは、彼らを雇っていた店側の者達。彼らは正式に処分を下す事が出来ましょう」


まるで、譲歩したかの様な口ぶりで俺にエメリッツ側の位が高い貴族達を逃がそうとする事を提示してくる。

落としどころ、明らかに俺の意見は無視しているにも関わらずこの言い様。

金銭で繋がっている可能性があると考えるのが妥当だな。

しかも詰所に放置し、外の者とは会話すらさせていないのにこの迅速の行動。

エメリッツが婦館での行いを理解し、そこに通っている貴族達の事も知っており、彼らを助ける事を互いに理解している。

詰所の者達は発狂の末に、何も考えている様には見えないが…。

俺はそう思いつつ、


「…了解した、では客としてあの場に()()いただけの客は解放するとしよう。反対に従業員やそれに相応する関係者などは、エメリッツ殿に書類を送らせてもらう。彼らのその後の処分はそちらに任せる」


俺がそう言って踵を返そうとすると、


「エルヴァン殿、少しお待ち頂きたい」


エメリッツが更に俺に声を掛けてくる。

俺は振り返りつつあった体をそのままに、顔だけエメリッツの方に向け、


「まだ何かあるのか?」


そう聞くと、エメリッツは表情を少し顰めたまま、


「エルヴァン殿はまだ騎士になっても日が浅く、騎士団の団結力が備わっていない。すぐに団結をしろとは言いませんが、名前を出すのはアレですがレオノーラ前騎士団長の様になって貰いたいですね」


俺にそう言ってきた。

レオノーラと同じ様な騎士団長。

仲間である騎士団の皆に迷惑を掛けない様に、エメリッツを含めた帝都の上層部の反発が無い様に上手くやれという事だろうか?

俺はその言葉を聞いて、


「私は前騎士団長の事をよく知らないが、私は元々自由気ままの冒険者。彼の者とは元々の性質が違う事を先に言っておこう」


暗に、レオノーラとは違う様に俺はやるとエメリッツに伝えて今度こそ彼の執務室を後にした。

エメリッツの執務室を後にした俺は、そそくさと急いで詰所まで戻って来るとエメリッツの要求に応えるべく、まずは一度狂ってしまった貴族達を回復させなければいけないな。

俺はそう思うと折れている指の痛みなどを感じさせない呆然とした表情で、何を見ているのかも分からない貴族達達を檻から解放して、逃げ出さない様にしっかりと縄で縛りつける。

元々の従業員達はそのままエメリッツに処分を任せるだけなので今からやる事は必要ないのだが、この貴族達には俺の手柄の為にも、そしてエメリッツの思惑通りにさせないためにも今からしっかりと教え込まねばいけない事がある。

俺はそう思うと、


「クラスチェンジ・魔法使い(ウィザード)


最近はなかなか変更する事が無かった、魔法使い(ウィザード)にクラスを変化させると、


「キュア・ヒール」


精神異常、混乱や狂乱、呪いに魅了状態などの精神的な異常を回復する事が出来る回復魔法を使う。

すると、今まで呆然と虚空を見つめていた瞳に光が宿り、


「……ぁ、な…何だ?ここは…どこだ?」


次第に視線を左右上下に動かして、自分のいる場所を確認しながら声を発する。

貴族の男の精神が回復したのを確認すると、


「お前はあの婦館で何をしていた?」


俺は男にそう質問をする。

それを聞いた貴族は、


「き、貴様ッ…!私に何をしているのか理解しているのかッ!さっさとこの縄を解けッ!」


俺に対してそんな事を言ってくる。

…記憶が無くなっているか?

婦館で捕まったのにこの横暴な態度、むしろこの図太さには感心すらしてしまう。

俺はそう思いながらも、


「質問に答えろ」


胡坐で座っている貴族の膝を思いっきり踏みつけて、膝の骨を破壊する。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッッッッ!!!!」


膝の骨が砕けた痛みで絶叫する男の五月蠅さに、俺は耳を塞ぎたくなるがそれが出来ない事に辟易しつつ、


「ヒール」


今し方破壊した貴族の男の膝を回復させると、貴族の男は激しい痛みが急に無くなった影響で息を絶え絶えになりながらも、


「わ、私にこんな事をしてただで済むと…「おらっ!」…あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッ!!」


俺に対して高圧的な態度を崩さない故に、俺はもう一度男の膝を今度は反対の方を破壊する。

一瞬で絶叫をし、痛みで汗に涙、鼻水によだれと顔中から液体を漏らし始める男。

膝からは血が溢れ、股からも液体を漏らしている…。

これ以上檻の前を汚されるのは面倒だと思い、俺は回復魔法を使って貴族の男の膝をもう一度治す。


「あ゛~ッッ!あ゛~ッッ!」


痛みによる錯乱状態。

「UFO」に錯乱状態というモノは無かったが、治せるだろうか?

俺はそう思いながら、


「キュア・ヒール」


試しで再度状態異常を治す回復魔法を使ってみると、


「はぁ…はぁ…」


効果は微妙にあった様で、男は荒い息をしながら俺の事を見てくる。

その視線は恐怖に染まっており、もう俺に高圧的に話しかけてくる事が無い。

流石に、理解はしてしまうか。

俺はそう思いながら、


「私は質問をしているのだが、いつになったら答えてくれるんだ?」


男にそう言い放つと、男が口の開いた瞬間に今度は一歩踏み込んで腹部を蹴り飛ばす。


「ごッ…!ごぶぅ…ッ!」


俺に蹴られた故に内臓を損傷させた様で、男は開いていた口から血を吐き出した。

それを確認してから、俺はもう一度ヒールを男にわざわざ使ってあげて、


「再度問おう、婦館で何をしていた?」


そう質問を繰り返した。


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