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353頁

アンジェの指輪を外して姿を突然姿を現した俺の事が分かった男性は、建物に逃げる様に入って扉を勢いよく閉めた。

そんな男性とは違い、


「早く立ちやがれェェッッ!!」


鎖を握っている男性は女性を連れて行きたいが為に、すぐに逃げ出す事はせずに鎖を全力で引っ張って女性を動かそうとする。

女性はそれに耐える様に、身を低く構えて地面に肌を削られる様に擦られても体勢を帰る事はしない。

俺はそんな彼女を助ける為に大剣を抜き放つと、


「スラッシュッ!」


スキルを発動して斬撃を飛ばし、男性が引っ張っている鎖を斬り裂く。

すると、男性は本気で力を入れていた鎖が切れた事により、勢いのあまり尻を思いっきり地面に打ちつけた。

対して女性は、引っ張られる力が無くなった事で体を少しだけ起き上がらせて、尻を打ちつけた痛みで地面でうねうねと動いている男性の事を見ると、少しでも彼から離れる様に体を動かす。

その際に見える肌には、裂傷で出来た傷とそんな肌に滲んでいる血が見える。

俺は少しだけ急いで女性の元まで歩みよると、何も言わずに回復薬を押し付ける様に渡す。

今、亜人族である彼女と過度に会話する事は出来ないのだ。

彼女に申し訳ない気持ちを抱きつつ、


「…正直に話せば、痛い思いだけで済ませてやろう。話す気はあるか?」


ようやく痛みが落ち着いてきたのだろう大人しくなりつつある男性に、俺は低い声でそう質問をする。

すると俺の言葉を聞いた男性は、


「…へっ!ここは奴隷として連れて来れなかった、まともに人族の様に働いている亜人族を買える場所だよ!」


少しだけ体を起こして建物の事を見て鼻で笑う声を出すと、俺の問いに素直に答える。

どうやら、先程の話でこの建物に逃げた男性に嫌がらせをするつもりで、俺の問いに対して素直に答えたのだろうな。

俺はそう思いながら、


「奴隷に出来なかった…。つまり、帝都では無い他の地方に住んでいる人達や、帝都の税金をしっかりと払う事が出来ていた人達を捕まえているという事か?」


男性に更にそう聞くと、


「そうだ!どこの誰かを攫って来て欲しいって頼むんだ!獣の癖に俺達…いや俺達以上にまともに生活している奴なんて全員地獄に落ちて貰うのさ!」


男性は何故か嬉しそうに俺にそう言ってくる。

嫉妬という、単なる感情では無さそうだ。

いやおそらく嫉妬も含まれているのだろうが、それだけの感情ではない様だ。

俺はそう思いつつも、


「白状してくれて感謝する。これは礼だ」


俺はそう言うと背負っているもう一振りの大剣を鞘ごと抜くと軽く彼の頭に大剣をぶつける。

鈍い音が聞こえて、男性が意識を失って地面に体を打ちつけながら横たわる。

それを見た後に、


「ここにいろ。今下手に動くと、今度は奴隷商人や婦館にいる者達に連れ攫われる可能性がある」


俺は回復薬を飲んで傷が消えかけている女性にそう言うと、建物に逃げ込んだ男性を追う為に扉に手を掛ける。

瞬間、僅かに手から雷撃が襲って来たような感覚を感じ、


「麻痺系の罠…か。私には関係無いが」


俺は冷静に何が起きたのか理解するとそのまま扉を開ける。

そこには、


「た、助けて…」

「苦しい…」


鎖で体を拘束された状態で、更に小さく狭い檻の中に入れられている亜人族や人族の女性がいた。

助けたい気持ちはあるが、今は逃げた男を捕まえなければいけないと思い、


「申し訳ありませんが、今すぐに助ける訳にもいきません。男を捕まえたら戻ってきます。それまでもう少し辛抱してください!」


俺はそう言って早足で奥の扉へと行くと、もう一度麻痺系の罠が仕掛けられていた。

しかしやはり俺にはその様な物は通じずに、俺は普通に扉を開けて中を窺うと、そこには1つの小さな部屋があり床には乱雑に取り外され投げたのであろう床板が置かれており、床板が無い部分に人1人が入れるくらいの大きさの穴があった。

…エルヴァンとして活動しているこの装備ではすぐに通って捕まえる事は出来ない…か。

俺はそう考えると、


「クラスチェンジ・召喚士(サモナー)召喚(サモン)、バルドゥ」


クラスチェンジを使い、クラスを召喚士(サモナー)に変更して装備を変更すると、小柄のバルドゥを呼び出す。

黒い靄が出現すると同時に、


「お呼びでしょうか、ヴァルダ様」


バルドゥがすぐに黒い靄から現れる。


「突然呼び出してすまない。実は今ある男を追いかけているのだが、俺では少し動き辛そうでな。バルドゥに頼みたいと思っているのだ」


俺がそうお願いをすると、バルドゥは床にある穴を見て、


「分かりました。捕まえる者は男1人で良いのですか?」


そう質問をしてくる。

バルドゥの問いに対して、


「あぁ、とりあえず男1人で十分だ。この先がどこに繋がっているのか分からない故に、警戒しなくてはいけないしな」


俺がそう答えると、バルドゥは頷き、


「分かりました。では中にいる男を捕まえた後に、帰還します」


そう言って床にある穴の中へと入っていった。

それにしてもあの男の人も、よくこんな狭い穴の中を進んで行ったな。

背丈は俺とあまり変わらなかったし、体が俺よりも細かったくらいであまり違いが無かった。

あまり奥へと行ける気がしないのだが…。

俺がそう思っていると、僅かにだが悲鳴の様な音が穴から微かに聞こえてきた。

バルドゥが見つけたのだろう、結構早く追い付く事が出来た様だ。

悲鳴の様な音が聞こえてから少しして、徐々に何かを引きずる様な音が聞こえてきた。

それはどんどん大きくなっていき、俺の近くまでやって来ると、


「ヴァルダ様、この男で間違いないでしょうか?」


穴からバルドゥが出てきて、俺にそう聞きながら何かを引っ張る。

バルドゥが握っていたのは男性の足首であり、バルドゥが穴から出てくるとそれに続いて男性も穴から引き摺られながら穴から出てきた。

しかし何故か、


「気絶しているのか?」


男性は白目を剥いて気絶をしていた。

俺がそう聞くと、


「私は何もしていないのですが、足首を掴んだ瞬間に大声を出して動かなくなってしまって…」


バルドゥが簡潔にそう説明してくれる。

バルドゥの言葉を聞いた俺は、


「…穴の中は暗かったか?」


少し気になってそう聞くと、


「はい。基本的には」


俺の問いにそう答えた。

その瞬間、男性が気絶した理由が暗く狭い穴の中で突然近づいてくる音と、足首を掴まれた事で気絶したのではないかという考えが思いつき、俺は少し呆れながらも、


「ありがとうバルドゥ。男はここに置いておいて構わない、今なら拘束も簡単だろうしな。わざわざありがとう」


俺はバルドゥにお礼を言った後、彼を塔へと帰還させた。


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