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352頁

塔から出発して、俺は外の世界へと戻って来るとすぐに行動を開始した。

既にスラム街の亜人族の保護は完了した、そして亜人族の騎士団も塔への移動が終わっている。

残っているのは俺1人だけだ。

書類は昨日の内に散々ハンコを押しておいたお陰で、やる事は無いだろう。

俺はそう思いながらスラム街から移動してエルヴァンの借りていた部屋がある宿屋に辿り着くと、アンジェの指輪を首に下げてこっそりと宿屋の中へと入り、エルヴァンの借りている部屋へと入る。


「はぁ、意外に気を遣うなこの潜入も…。クラスチェンジ・騎士(ナイト)


俺はそう愚痴の言葉を呟くと、クラスチェンジを行って騎士(ナイト)に変化し、装備もエルヴァンと似ている完全武装の状態になる。

情報はあまり無いが、今日は確信は無いがと言っていた歓楽街の奥に建っている小屋、そこに行ってみるか。

俺はそう思いながら、自分のエルヴァンの変装に変な所が無いかと気にしてから、宿屋の部屋を後にした。

一度騎士団の詰所に行き、婦館で捕まえた者達の確認もしておくか。

俺はそう思い、まずは今歩いている場所から近い騎士団の詰所に足を向けた。

騎士団の詰所に辿り着くと、そこには誰もおらずに静かな建物だけが佇んでいる。

ここも、セシリアにお願いした方が良かっただろうか?

俺はそう思いつつも、この建物自体に愛着があった訳では無さそうだったよなと騎士団の人達の様子を思い出しながら中に入り、檻が置いてある建物の奥へと歩みを進める。

奥の扉を開けるとそこには檻が3つ程並んでおり、内2つに男女に分かれた婦館での捕縛者達が入れられている。

全員瞬きをせずに、ただ何も無い空間を見つめて息をしているだけ。

声を発する事もせずに、身動きもほぼしていない状態だ。

それを確認した俺は、脱走とかの危険性は大丈夫だろうと判断して扉を閉め、ここはまた後で昼前くらいに来ようと考えて先に歓楽街での真偽を確かめに詰所を後にする。

早朝はいつも通り、商いを生業としている人達はすでに働き始めているが、特別に遠くに行く用事が無い限り冒険者などはもう少し後に動き始めるだろうな。

俺は帝都の街並みを見ながらそう思い、歓楽街もまだ人がいないだろうから目立ってしまうのではないかと少し心配になってくる。

俺が歓楽街に向かっている情報が俺よりも速く歓楽街に伝わったとしたら、監禁されている奴隷をどこかへ移送する可能性もある。

俺は様々な考えを巡らせ、一度歩みを止めて思考する。

このまま歓楽街に行けば、もしかしたら逃げられる可能性もあり得る。

監禁されている人達は助けられたとしても、大元となっている建物や亜人族の人達を監禁している者達を捕まえない限り、その場では監禁されていた亜人族の人達を助けられるが、その後に捕まってしまった別の亜人族や、買われてしまった奴隷達を救う事は出来ないだろう。

…この格好では目立ってしまうな。

アンジェの指輪を首に下げて、姿を消した方が良いかもしれないな。

俺はそう思うと、辺りに少し意識を向ける。

数は少ないがそれでも俺…新しい騎士団団長のエルヴァンは立っているだけで目立ってしまう。

この状態で姿を消すのは得策では無い、せめて一度人の視線が無い場所に移動しなければ…。

俺はそう思うと、普通に帝都の街を歩いていく。

早朝という事もあり、特別に探す必要も無くあっという間に人通りが無い道に入ると、俺はアンジェの指輪を装備して姿を消してから歓楽街へと向かった。

歓楽街も仕事をしている人達は見当たらないのだが、意外にも出入りは多い様に見える。

貴族らしき衣装が派手な者が、建物の側に停めてあった馬車にそそくさと乗り込んでいる姿や、冒険者らしき装備を見に着けた男性が、眠そうに欠伸をしながら建物から出てくる姿を見て、俺はそういう事なのだろうと察する。

俺はそう思いつつ、歓楽街の奥と言われた場所を探してひたすら歓楽街の脇道や建物の裏などを注意しながら歩き続ける。

しかし歓楽街の奥みたいな場所は見つける事が出来ても、小屋らしき物が見当たらずに俺は情報が嘘の可能性も考えなくてはいけないと思いつつ、未だに歓楽街を練り歩いていた。

すると、


「う…ぐぅぅ……ッ!」

「早く歩きやがれッ!」


一軒の建物から、鎖を持った男性と鎖に繋がれた亜人族の女性が出てきた。

男性が握っている鎖は、女性の首輪に繋がっている。

男性が鎖を勢いよく引っ張ると、女性が苦しそうな声を漏らして抵抗している様子を見るに、奴隷としての契約をしていない様に見える。

俺がそう思っていると、


「てめぇの体にいくら払ってやったと思ってるッ!?抵抗して傷なんか付けるんじゃねぇッ!」

「がっ……い、嫌だッ!」


男性が怒鳴り声を出して鎖を引っ張り、女性は男性に引っ張られない様に地面に倒れ込んで動かない様に抵抗をしている。

すぐさま女性を助けたいと思い脚に力を込めるが、建物の状況を知りたい俺はそんな男性と女性の様子を観察する。

すると、


「お客さん、申し訳無いですが店先でそんな事をされても困るのですよ~…」


建物から1人の男性が出てきて、面倒くさそうに表情をやや歪めて男性にそう言う。

それを聞いた男性は、


「あんたの躾がなってないんだろうがッ!こっちは安くねえ金払ってんだ!」


建物から出てきた男性に怒鳴りつける。

そんな怒りに支配されている男性の言葉を聞いた、建物から出てきた男性は、


「私の方も、奴隷みたいに言葉で従順にさせるのではなく痛みで従順にさせるといった貴方の様な人達の為に、危険な橋を渡って捕まえてきているのですよ。それに最低限の躾でないと、むしろそれに対して文句を言ってくるでしょう?奴隷を買えない故に、少しでも安く良い物を手に入れたいのなら、それくらいどうにかして下さいよ」


やれやれと、理解出来ないと言いたげな様子でそう言い、鎖を持った男性がそれに対してまた罵倒している。

しかし、俺はそんな会話を気にしていられる程冷静では無かった。

今の彼らの会話が本当であるのなら、明らかな違法な方法での亜人族の売買をしている。

ただでさえ亜人族を虐げている人達だ、見逃す訳にはいかない。

俺がそう思ってアンジェの指輪を外そうとすると、


「良いからさっさと行ってくださいよ。昨日の婦館での騒ぎを知っているのでしょう?新しい騎士団長は手柄を立てる為に不可侵である歓楽街の取り締まりをしているのですよ。こんな所を見られでもしたら、私も貴方も無事ではすまないですよ」


建物から出てきた男性が、そう言って視線を左右に振るう。

どうやら警戒していた様だな。

俺はそう思いながら言葉通り、手柄を立てる為に利用させて貰おう。

そう考えながら、俺はアンジェの指輪を外した。


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