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350頁

塔に戻ってきた俺とセシリアは、静まっている塔の中を歩いて移動して塔の麓までやって来ると、


「おかえりなさいませ、ヴァルダ様。外からやって来た人達とレオノーラさんは、既に部屋へと行き就寝の準備に入っています」


上空からシェーファがゆっくりと降りてくる。

どうやら、魔法を使って降りてきた様だ。

そこまでして急がなくても大丈夫なのだが、おそらく連絡を入れた方が良いとシェーファは考えてくれていたのだろう、彼女のその考えを邪険にするつもりは無い。

俺はそう思うと、


「シェーファのお陰でとてもスムーズに物事を進める事が出来た、とても感謝している。ありがとうシェーファ」


シェーファに向かって感謝の言葉を伝える。

俺は感謝の言葉に続いて、


「先程セシリアにお礼に何か贈らせて欲しいと言ったら、断られてしまってな。シェーファは何か欲しい物とか無いのか?」


そう彼女にセシリアの事を教えて、シェーファは何か欲しい物があるか質問をする。

俺の言葉を聞いたシェーファは、セシリアの事を聞いて彼女に疑う様なジトッとした目を向ける。

そんなシェーファの視線に、セシリアはまるで気にしていない様に顔を明後日の方向に向ける…。

セシリアのそんな様子に何を思ったのか、


「セシリア?少し良いかしら?」


シェーファは頬を引き攣らせながらそう声を掛ける。

威圧感を微かに出したシェーファに対して、


「…私は特に用などはありませんが…」


セシリアが少し挑発をする様な事を言う。

それを聞いたシェーファは、眉間に一瞬だけ皺を寄せると、


「良いから、ちょっと来て欲しいわ~?」


シェーファがそう言って俺とセシリアの元に来て、セシリアの事を連れて行こうとした瞬間、何かに気がついた様なハッとした表情になると俺の事を見てくる。

その何かに気がついた様な表情を俺に向けてきた瞬間に、シェーファの瞳から光が消えたのが見えてしまった…。

これは、マズいかもしれないな。

俺がそう思っている内に、シェーファが少し無理矢理セシリアを移動させて俺の近くから遠ざけると、


「何………のかしら?」

「……抱き………貰った…………」


僅かにだけど2人の会話が聞こえてくる。

こうなってしまっては、もうシェーファの事を止めるのは出来ないだろう。

大人しく彼女の言う事に従うか、少しでも俺の理性的な意味での安全を考慮して貰える様に交渉するしかないな。

俺がそう思っていると、2人は内緒話を終えたのか俺の元まで戻って来る。

セシリアはいつもの様な普通の表情をしているが、先程まで威圧する様なオーラを放っていたシェーファが笑顔で戻って来るその姿に、俺はこれから襲ってくる嵐の前の静けさだと考えて頬を引き攣らせる。

しかし俺が危惧していた予想とは違い、


「それで、ヴァルダ様とセシリアは何故ここに?」


シェーファは普通の態度で俺にそう質問をしてきた。

…怖いが、今は大人しく彼女の問いに答えようと思い、


「セシリアのスキルを利用して、今日連れてきた人達の家などをここに移そうと思ってな。セシリア、準備を」


俺は問いに答えて、俺の元にまで戻って来たセシリアにそう声を掛けてから、俺はクラスチェンジを行って錬金術師(アルケミスト)にクラスを変更すると、俺は浮島の準備を始める。

セシリアは既にスキルを発動出来る様に準備を整え終えた様で、俺の準備が終わるのを待ってくれている。

そうして俺の準備が終わり、俺はスキルを発動して浮島を塔の近くに出現させると、即座にセシリアがスキルを使用して浮島にスラム街の一部をコピーした建物達を形作っていく。

そして俺とセシリアが発動していたスキルが全て終えるとそこには、


「上手くいった様だな」

「はい、完成しました」


セシリアがスキルで範囲をしていたスラム街の建物が、俺が土台として造った浮島の上にしっかりと建っている。

すると、


「…少し古びていますね」


スラム街の事を知らないシェーファが、浮島の上に並んでいるスラム街の建物を見てそう言う。


「それは、そうだな。今日連れて来た者達の半数は、この様ないつ崩れるのか分からない程ボロボロの建物に隠れて住んでいくしか無かった程だ。しかしどんなに住み難くとも、いざ住み続けていたらそこは居心地が良くなる事もあるだろう。塔で過ごしていくのも良いし、前と同じ狭いが住み慣れたこの島の建物に住むのも良いと俺は思っている。今日は塔で明日はこの島で、みたいな気分に合わせる過ごし方も悪くは無いだろう」


俺がこの島を作った理由を説明すると、


「彼らにとっては、住み慣れたここが良いという者も多いでしょう。塔の部屋を案内させてもらった時に、畏怖をしていた様な人達がいましたし」


セシリアが俺にそう教えてくれる。

俺は塔に来た彼らの様子を知らない。

全てシェーファとセシリア、そしてレオノーラにお願いしてしまったから彼らの塔に来た時の様子をほとんど知らないのだ。

俺はそう思い、


「塔に来た者達が、ここへ来て良かったと思ってくれるのならそれだけで良い。セシリア、すまなかったなこんな夜遅くに。シェーファもありがとう。シェーファはまた何か欲しい物があったら、俺に言ってくれ。出来る限り希望に沿った物を贈らせて欲しい」


今日のやる事は終わった事を2人に告げ、俺は感謝の言葉を2人に伝える。

それを聞いたシェーファとセシリアは、


「ヴァルダ様のお役に立てるのであれば、私達はいつでもご命令に従います」

「セシリアの言う通りです、私達はヴァルダ様のお役に立つ事を至上の喜びだと思っています」


俺の言葉にそう返してくれる。

2人の言葉を聞いた俺は、


「それでも、感謝は伝える。俺の為に夜中まで働いてくれた事にお礼を言わせてくれ。本当にありがとう。2人は自室へ戻ってくれて大丈夫だ」


感謝の言葉を再度伝えてから、今日の作業は終わった事を告げると、


「分かりました、おやすみなさいませヴァルダ様。失礼します」


セシリアはそう言って姿を消した。

するとセシリアが消えた後にシェーファが俺の目の前までやって来ると、


「ヴァルダ様、お傍にいさせて貰っても構わないでしょうか?それが今私が欲しているモノです」


俺にそう言ってくる。

それを聞いた俺は、おそらく先程のセシリアとの内緒話で何があったのかを知っているのだろうと思い、


「それだけで良いのか?」


シェーファにそう聞くと、


「はい、ヴァルダ様のお体からセシリアの香りがするのは、少し心が乱されます。せめて、そこに私の匂いも付け足しておかなければ」


シェーファが、まるでセシリアに対抗する様な事を言ってくる。

そんな言葉を聞いた俺は、


「すると、俺は体からシェーファとセシリアの甘い香りを身に纏っている状態になってしまうな」


シェーファにそう答えると、俺の言葉の意味を理解したシェーファが嬉しそうな表情をして俺の左腕を抱きしめてくる。

俺はその状態で、シェーファと共に塔へと戻って行った。


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