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349頁

セシリアを召喚した後に、俺はセシリアと共にスラム街の建物の屋根に上って周囲を確認する。

比較的に建物がしっかりとしていて、その周辺に建物と少しだけでも庭の様な空間があればいいのだが…。

俺はそう思いつつ、視線を彷徨わせると、


「ヴァルダ様、あちらの方はどうでしょうか?」


セシリアが俺が見ている右側の方向を指差しながらそう言ってくる。

セシリアの言葉を聞いてそちらに視線を向けると、


「大きい建物がある訳では無いが、それでも比較的しっかりとしている建物が多いな」


屋根は崩れておらず、周辺の建物も大丈夫そうな感じである。

俺はセシリアが指差した場所が良い場所だと判断すると、


「ありがとうセシリア。セシリアのお陰ですぐに見つける事が出来た」


俺は彼女にお礼を言って歩き出そうとすると、


「…ヴァルダ様、お待ちください」


俺が隣の建物の屋根に飛び移ろうとした瞬間、セシリアが俺に声を掛けてくる。

セシリアに声を掛けられた俺は後ろに振り返り、


「どうした?」


そう彼女に聞くと、セシリアは俺の元にゆっくりと歩いて来て両手を少し広めに広げると、


「私ではこの距離を跳ぶ事が出来ません、抱っこをしてくださいヴァルダ様」


俺にそんなお願いをしてきた。

うん、可愛い。

セシリアの様子に俺はそう思うと、


「…前から抱いても良いのか?横からの方が…」

「いえ、前からお願いします」


世に言うお姫様抱っこの方が良いのではないかと提案をしようとしたのだが、俺の発言を遮ってまでセシリアがお願いをしてくる。

彼女にそこまで言われたのなら、もう俺は従うしかない。

セシリアだけでは無く、家族のお願いは出来る限り叶えていきたいと思っている。

俺はそう思うと、


「…分かった」


そう言って俺は少しだけ膝を折ってセシリアの体を前から抱きしめると、セシリアに密着する事で普段なら感じない彼女の体の柔らかさや、近くにいると香るセシリアだけの甘い果実の様な匂いがダイレクトに伝わってくる…。

さ、流石にこれは…マズい…。

俺はそう思いつつ、


「…苦しくは無いか?」


なるべくいつも通りに、冷静な態度を演技しつつセシリアに声を掛ける。

すると、


「………はい、ヴァルダ様」


耳元で、まるで俺を駄目にするつもりなのではないかと思わせる程の、甘美な囁き声が耳から入って脳に衝撃を与える。

…聴覚、嗅覚、触覚。

その3つを全て彼女に支配されたのではないかと思わせる程、今俺は触れているセシリアに全神経を集中させてしまっている…。

俺の胸板に押し付けられてその柔らかさ故に僅かに形が歪んでいる胸、サラサラと風に靡いて俺の肌を優しく撫でる毛先、体中から香る甘く心を揺さぶる香り、細くしなやかなであり触れると折れてしまいそうな腕が、俺の背中にそっと触れ感触を楽しむ様に撫でられる。

セシリアの全てが、今の俺の冷静に取り繕っている仮面を剥がしそうになる。


「い、移動するぞ?」


何とか声を震わせながらも、声を出した俺がそう言うと、


「…はい」


セシリアは短く俺の言葉に返事をすると、更に少しだけ強く俺の体を抱きしめてくる!

このままではマズいと判断した俺は、すぐに行動した方が良いと判断して屋根から屋根へと飛び移り始める。

屋根を移動する時に僅かに衝撃があるのだが、その際にセシリアが俺の体を強く抱きしめてくる…。

そうして普通に移動するよりも大変に気を遣った俺は、何とかセシリアの無自覚の誘惑に耐えて目的の場所まで辿り着く。

目的の場所に着くと、セシリアが少し名残惜しそうに俺から離れて辺りを見回している。

俺はそんな彼女を見ながら、高鳴る心臓とか色々と落ち着かせる為にセシリアの事を見ながらその場に棒立ちになり、少し時間が経過して心が落ち着いてきてからセシリアの隣に立って彼女と同じ方向を見る。

スラム街の中央から少し距離がある場所だが、生活感がある様子からここで暮らしていたのだろうと考える。

荷物は纏めて塔の生活で使える様にしておいたが、置いてきたのであろう物などが数時間前まで使っていたのだろうとと思わせる。


「この辺が良いかもしれないな。流石セシリア、見る目がある」


俺がそう言うと、


「ありがとうございます、ヴァルダ様」


俺の言葉にお礼を言ってくるセシリア。

セシリアの言葉に俺はむしろこちらがお礼を言う方だと言い、


「ありがとうセシリア。これで、レオノーラやスラム街の人達が少しでも塔での生活が心穏やかになるかもしれない」


俺がお礼の言葉を口にすると、


「…では、私は作業に移ります。ヴァルダ様、ご指示をお願いしてもよろしいですか?」


セシリアはそう言って俺の事を見てくる。

彼女の言葉に、


「任せてくれ」


俺はそう返して、セシリアと共に移動しつつスキルでの範囲の指定をしていく。

その際に屋根の上を移動する事が必要になり、またセシリアを抱きしめながらの移動になってしまった…。

何度抱きしめても慣れる事は無く、俺は何度も何度も落ち着かせる為に深呼吸などをしてセシリアに迷惑を掛けない様にする。

そうしてセシリアがスキルでの範囲の指定を終えて、スキルを発動して建物の情報をコピーしていく。

今回はエルフの不帰の森とは違い、一か所での広くスペースを取っている故に移動する必要は無く、セシリアのスキルが終われば俺もここでのやるべき事は終わる。

俺がそう思っている内にセシリアのスキルが終わった様で、スキルを発動していたセシリアが俺の元にやって来る。


「終わりました、ヴァルダ様」

「お疲れ様。ありがとうセシリア」


俺はそうセシリアを迎えてそう言うと、


「では塔に戻るか、塔でやる事も残っている事だし」

「はい」


続けて、塔に戻ってやるべき事をしておこうと伝える。

それを聞いたセシリアが返事をするのを聞き、


「そうだ、今回の事でセシリアやシェーファには凄く助けて貰ったからな。何かお礼をしたいから、考えておいてくれ」


俺がそう言いながら、手に持っていた本の中の世界(ワールドブック)を再度開いていると、


「いえ、私は既にヴァルダ様からとても物では表せない、とても大切なモノを頂きました。シェーファの事を考えてあげてください」


セシリアが俺にそう言って、優しく微笑んだ。


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